- 著者
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木村 守
- 出版者
- ファンクショナルフード学会
- 雑誌
- Functional Food Research (ISSN:24323357)
- 巻号頁・発行日
- vol.14, pp.30-35, 2018 (Released:2019-03-15)
- 参考文献数
- 11
近年,肌の保湿や関節痛改善を目的としたサプリメントとしてのヒアルロン酸の活用が増加してきている.経口摂取による有効性やメカニズムを考える際には,注射や皮膚への塗布などの直接的な効果と異なり,腸管での消化吸収などの過程も加味する必要がある.本総説では,ヒアルロン酸を経口摂取した際の腸管での分解,吸収および分布に関して報告する.
これまでの研究で,14Cでラベルしたヒアルロン酸をラットに経口摂取させることにより,少なくとも88%以上のヒアルロン酸が体内に吸収されること,および吸収されたヒアルロン酸は関節や眼,皮膚を含めた全身に分布することが確認されている.
その一方で,分子量の大きいヒアルロン酸がどのように分解,吸収され,体内に分布するのか明確になっていなかった.
まず,どのように分解されるのかを調べるために,人工胃液,人工腸液およびラットの盲腸内容物に分子量約30万のヒアルロン酸を添加してその変化を分析した.その結果,ヒアルロン酸は人工胃液,人工腸液では分解されないが,盲腸内容物に含まれる腸内細菌によってオリゴ糖まで分解されることが確認された.
次にオリゴ糖まで分解されたヒアルロン酸が大腸で吸収されるかどうかを,CaCo-2細胞を用いた試験とラットの大腸を用いた試験で評価したところ,両試験ともにオリゴ糖レベルのヒアルロン酸は透過する結果となった.
さらに,分子量約30万のヒアルロン酸をラットに経口摂取させた後,血中および皮膚中の2糖および4糖ヒアルロン酸を経時的にLC-MS/MSで分析したところ,2糖ヒアルロン酸は経口摂取後4時間目以降の血中および6時間目以降の皮膚中に確認され,4糖ヒアルロン酸は6時間目以降の皮膚中にのみ確認された.
これらのことから,経口摂取したヒアルロン酸は盲腸の腸内細菌でオリゴ糖まで分解された後,大腸で吸収され血中あるいはリンパなどを介して皮膚を含めた全身に分布し,作用を発揮することが示唆された.