著者
菅 聡子
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

明治期から戦時下にわたり、女性作家の国民化の様相を抽出し、国家との共闘/対抗のさまを明らかにした。具体的には、樋口一葉の和歌・日記、柳原白蓮の昭和における表現活動、吉屋信子のベストセラー小説をとりあげ、女性表現と国民国家の関係について論じた。
著者
三浦 徹 安田 次郎 神田 由築 新井 由紀夫 菅 聡子
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2003

本研究は、アジア(日本を含む東アジアと中東・イスラーム世界)の社会文化の特性を、比較研究を通して明らかにし、人類文化におけるアジアの可能性を見いだすことを目的とする。同性愛というテーマを主題にとりあげたのは、当該社会のなかで、両義的なイメージを賦与されていた現象を、比較文化の視点から研究することにより、新たな分析観点を探るためである。16年度は、以下の研究を実施した。1.韓国での調査・研究会(2004年9月23-25日) 男寺党(ナムサダン)とよばれる芸能集団の調査を、国立文化財研究所朴原模研究員の協力をえて実施し、同研究所と淑明女子大学で研究会を開催した。一般に儒教文化の影響で性についてのタブーが強いとされる韓国においても、日本と同様の性の役割に関わる問題群があることが確認された。2.基本資料の収集と文献データベース作成 15年度までに収集した文献データベース4000件に500件の追加を行い、全体の校正・整理を行った。なお、当初大学のホームページに公開を予定していたが、インターネットのセキュリティ管理が強化され、その技術的な問題が解決するまで公開を延期することとした。3.2年間の研究成果を問うために『越境する性:同性愛の比較文化史』(山川出版社)を刊行する。5名の研究分担者が執筆し、ヨーロッパ、イスラーム世界、日本中世、日本近世、日本近代の同性愛の文化を、比較の観点からとりあげ、アジア社会の柔軟な性文化とその変容が明らかにされる。
著者
菅 聡子
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

本研究は、明治二十年代の女性作家の文章表現の分析・考察ならびに、女性作家の<国民化>の様相を、主に表現構造の中に探り、従来考察対象とされることの少なかった当該年代の女性作家における<国民化>の問題を前景化することをめざしたものである。その前提として、国民国家の根幹が形成された明治二十年代前後における女性の表象を分析した。具体的対象としては岸田俊子(中島湘烟)をとりあげ、<女丈夫>として表象された彼女が、どのような文脈によって制度の言説へと回収されるのか、それを彼女をとりまく言説の分析によって明らかにした。加えて、女性の政治からの排除の問題についても、明治23年の集会及政社法を一つの軸とできることを、湘烟の事例から具体的に検証した。次に、明治期の女性表現をめぐるジェンダー機制について、女子用文(女性用手紙の文例集)に見られる文章論を調査・分析した。また個別対象として、女性作家樋口一葉の日記の文章をとりあげ、一人の女性において、<国民>としての教化と表現の交錯が、<和歌>において見られることを前景化し、<和歌>の持つ共同の機制を指摘し得た。さらに女性にとってふさわしい文章が「和文」とされることの意味を考察し、女性性と<国家>がどのように関与するのか、その一端を明らかにし得た。