著者
林 恒太朗 古明地 秀治 三橋 匠 飯村 康司 鈴木 皓晴 菅野 秀宣 篠田 浩一 田中 聡久
雑誌
研究報告音声言語情報処理(SLP) (ISSN:21888663)
巻号頁・発行日
vol.2021-SLP-136, no.37, pp.1-6, 2021-02-24

近年の信号処理・機械学習技術の進展によって,発声時や傾聴時の音声を頭蓋内脳波から推定したり再構成することが可能になりつつある.一方で,想像している発話の推定は,脳波と正解ラベルの同期を取るのが困難であることもあり,めぼしい成果が出ていないのが現状である.本稿では,想像音声と脳波が適切に同期していれば,発声や傾聴時脳波の場合と同様に,脳波から音声をデコーディングできるという仮説を立てた.そこで,短い文が映し出された画面を実験参加者に呈示し,文字の色を1文字ずつハイライトすることで,想像時のタイミングや想像速度を制御できる実験を設計した.その上で,音声想像,音声傾聴,発声の3種類タスクを課し,そのときの頭蓋内脳波を記録した.さらに,傾聴タスクでは呈示した音声,発声タスクでは実験参加者の発話を記録した.計測した頭蓋内脳波に対して,発声または傾聴時の音声のメルケプストラム係数をもちいたエンコーダ・デコーダモデルによって,想像音声を学習・推論した.想像時の頭蓋内脳波からデコーディングした文の文字誤り率は,最良で約17%を達成した.
著者
島田 知世 常深 泰司 飯村 康司 菅野 秀宣 服部 信孝
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.62, no.9, pp.697-706, 2022 (Released:2022-09-28)
参考文献数
105
被引用文献数
2

長期間無症状のまま宿主細胞内にとどまるウイルスが,免疫状態の変化により再活性化することがある.活性化したウイルス自体の障害に加え,再活性化によって引き起こされる自己免疫的な炎症も細胞障害を生じる機序となる.なかでもヒトヘルペスウイルスは頭蓋内手術を契機として潜伏感染していたウイルスが再活性化し脳炎を発症することがある.てんかん外科の普及に伴い注目を集めている疾患概念であるが,欧米に比べ本邦での報告は極めてまれである.本総説では,神経領域で再活性化するウイルスについて概説し,術後の単純ヘルペスウイルス再活性化脳炎について詳細に考察する.
著者
菅野 秀宣 中島 円 荻野 郁子 新井 一
出版者
日本てんかん学会
雑誌
てんかん研究 (ISSN:09120890)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.16-25, 2008-06-30

目的:海馬歯状回において神経細胞新生が継続していることは動物実験のみならずヒトでの研究でも報告されている。今回、われわれはヒト側頭葉てんかん患者における神経細胞新生と成熟について免疫染色による検討を行った。方法:海馬での神経細胞新生はNeuro D、PSA-NCAM、NeuNの免疫染色により確認した。手術時年齢、海馬硬化の有無、発症から手術までの罹患期間、発作頻度が、新生神経細胞数におよぼす影響を統計学的に解析した。神経細胞の成熟度の指標としてNKCC1、KCC2の免疫染色を追加した。結果:新生神経細胞は、海馬硬化群で有意に少なかった(p=0.0003)。非海馬硬化群での新生細胞の74.0%はNKCC1が陽性であり、36.0%がKCC2に陽性であった。一方、海馬硬化群では各々67.6%と6.3%の陽性率であり、海馬硬化群において有意にKCC2の発現が少なかった(p=0.003)。結論:ヒトてんかん海馬においても神経細胞の新生が継続していることが確かめられた。硬化海馬では非硬化例に比べその数は有意に少なく、かつ未成熟であるといえる。