- 著者
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菅野 翔平
片寄 晴弘
- 出版者
- 情報処理学会
- 雑誌
- 情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
- 巻号頁・発行日
- vol.64, no.11, pp.1463-1473, 2023-11-15
近年,男性ボーカルのポップス楽曲が歌いにくいと指摘する声をよく耳にするようになった.主要因の1つとして単純なメロディ音高の上昇が考えられるが,これまでに精緻な調査は実施されていない.また,ミックスボイスと呼ばれる発声法が多用されるようになったとの指摘もあるが,こちらも精緻な調査に基づく主張ではない.この状況に際し,我々は50年規模の調査を実施することとした.発声法の分類については,メインボーカル(非コーラス),コーラスの分類,さらに,メインボーカルについてはチェスト,ファルセット,ミックスボイス,プルの4種類のタイプ分類を目指すが,大量データに対してのラベリングはきわめて煩雑な処理となる.そこで,深層学習による発声法の自動分類処理を実装したうえ,メロディの基本周波数推定をあわせて,過去52年間合計1,560曲に対して分析を実施した.この結果,約一音半分の平均ピッチの上昇と,地声から高音域に用いられる発声法へと徐々に変化している状況を確認した.また,メロディピッチの上昇とミックスボイス,プルによる歌唱の推移に強い正の相関を確認した.