著者
筒井 幸 神林 崇 田中 恵子 朴 秀賢 伊東 若子 徳永 純 森 朱音 菱川 泰夫 清水 徹男 西野 精治
出版者
一般社団法人 日本総合病院精神医学会
雑誌
総合病院精神医学 (ISSN:09155872)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.40-50, 2012-01-15 (Released:2015-08-26)
参考文献数
42

近年,統合失調症の初発を想定させる精神症状やジスキネジア,けいれん発作,自律神経症状や中枢性の呼吸抑制,意識障害などの多彩な症状を呈する抗NMDA(N-メチルD-アスパラギン酸)受容体抗体に関連した脳炎(以下,抗NMDA受容体脳炎と略する)の存在が広く認められるようになってきている。若年女性に多く,卵巣奇形腫を伴う頻度が比較的高いとされている。われわれは合計10例の抗NMDA受容体抗体陽性例を経験し,これを3群に分類した。3例は比較的典型的な抗NMDA受容体脳炎の経過をたどり,免疫治療が奏効した。他の7例のうち3例は,オレキシン欠損型のナルコレプシーに難治性の精神症状を合併しており,抗精神病薬を使用されていた。また,残り4例に関しては,身体症状はほとんど目立たず,ほぼ精神症状のみを呈しており,病像が非定型であったり薬剤抵抗性と判断されm-ECTが施行され,これが奏効した。
著者
三宅 弘子 飯島 寿佐美 菱川 泰夫
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.33, no.6, pp.544-550, 1979-06-20 (Released:2011-10-19)
参考文献数
10

アルコール症患者の断酒後の回復期における徐波睡眠と大脳皮質萎縮度を検討した. 飲酒歴10年以上の男性入院患者(年令は31~47才)の断酒後4期(2週目~3ヵ月目)の終夜睡眠ポリグラフを分析した. また, 断酒後3ヵ月目の徐波睡眠率(% S3+4)とCT-スキヤンによる大脳皮質萎縮度とを比較検討した. CT-スキヤンより大脳皮質萎縮度のスコアリングを行つた. 断酒後3ヵ月目の% S3+4とCT-スコアの間に有意の逆相関を認めた. 徐波睡眠の回復度の低いものほど大脳皮質萎縮度が高度であるといえる. CTと年令とは有意の相関を認めなかつた. なお飲酒歴との関係についても検討した. この成績は, 長年月の飲酒がもたらす大脳皮質の恒久的損傷への可能を示唆しており, それが徐波睡眠の回復の低下に関係しているといえる.