著者
長谷 龍太郎 落合 幸子 野々村 典子 石川 演美 岩井 浩一 大橋 ゆかり 才津 芳昭 N.D.パリー 海山 宏之 山元 由美子 宮尾 正彦 藤井 恭子 澤田 雄二
出版者
茨城県立医療大学
雑誌
茨城県立医療大学紀要 (ISSN:13420038)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.47-56, 2001-03
被引用文献数
2

専門職種を特徴づける知識と技術に対する不安が生じると, 専門職アイデンティティが不安定になる。医療専門職種(Allied Health Profession)である作業療法は, 治療手段が日常的な作業であるために, 作業療法の効果判定や治療的作業の選定理由に曖昧さを伴っていた。米国では, 作業療法が科学的厳密性を伴った医療専門職種として認知される為に, 治療の理論的基礎, 治療効果の検証が重要とされ, 原因や結果の因果関係に比重をおく還元主義を基盤とした実践が行われた。結果として慢性疾患や障害に対する技術面が強調される機械論的モデルが隆盛し, 日本はこのモデルを導入した。還元主義的作業療法では人間の作業を扱う包括的な視点が欠如し, 専門職アイデンティティの危機が生じた。米国の作業療法理論家達は機械論的還元主義からの脱却の為に, システム論を用いた作業療法理論の構築と包括モデルの提示を行なった。日本では作業療法士に対する専門職アイデンティティの調査は行われておらず, アイデンティティ研究は日本独自の作業療法理論やモデルの構築に重要であると言える。
著者
高木 有子 落合 幸子 池田 幸恭
出版者
茨城県立医療大学
雑誌
茨城県立医療大学紀要 (ISSN:13420038)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.25-38, 2008-03

本研究では,性教育の分野で有効とされるピアエデュケーションを,「子どものいじめ自殺」を主題に,大学1年生160名に実施した。「子どものいじめ自殺」に関する大学生の意識と授業の感想を分析した結果,次の3点が示された。(1)いじめの被害経験,加害経験がある者は,どちらも全体の約3分の1程であった。さらに,被害経験がある者は被害経験がない者よりも,加害経験のある割合が高い。(2)ピアエデュケーション形式の授業によって,学生はテーマをより身近に感じて考えを深められると共に,ピアエデュケーターの学習も深まり,授業を行うことで自信をもつことができる。ピアエデュケーション形式の授業は,双方にとって成長を促進するするきっかけとなる。(3)「いじめ」に関する体験を語ることには意義があり,特に「いじめ自殺」は友人関係の中で生じる問題であるがゆえに,ピアエデュケーションを通して友人間でその問題を共有することには意義がある。
著者
落合 幸子
出版者
茨城県立医療大学
雑誌
茨城県立医療大学紀要 (ISSN:13420038)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.37-46, 2001-03

大学生のコラージュ作品の中に見られるコラージュ身体像のうち, 顔の切断事例を分析して, 切断の背景に見られる心理を探った。顔の切断の出現率は12%で男性に多く見られた。(1)両性を備えた人間を作る, (2)顔を縦・横・不規則に切断する, (2)目に細工をする, (4)身体を三つ以上の部分から合成する, の4つの種類がある。(1)には, 顔の半分に異性の顔を貼る事例, 身体と異なる性の顔を付け替える事例があり, 仮面を被る, 自己主張, 受け狙いを表現していた。(2)には, 顔を縦に切断する事例, 横に切断する事例, 不規則に切断する事例があり, 否定, 崩壊, 混沌を表現していた。(3)には眼鏡をかける事例, 目を際だたせる事例, 多くの目を貼る事例, 顔の輪郭を無くす事例, 目が覗いている事例があり, 自分を隠す, 対人恐怖など, 他者の目を気にする心理が表現されていた。(4)の三つ以上の身体を合成する事例では, 受け狙い, 変身願望の心理が表現されていた。大学生で得られた結果は, 中学生の特徴を明らかにする手ががりとなると考えられる。
著者
本多 陽子 落合 幸子
出版者
茨城県立医療大学
雑誌
茨城県立医療大学紀要 (ISSN:13420038)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.45-54, 2006-03
被引用文献数
3

医療系大学生の大学進学時の進路決定プロセスの要因を探るため,18項目を作成し,因子分析を行ったところ,決定の主体性,職業イメージの明瞭性,本命進路の諦め,決定のスムーズさという4因子が抽出された。この4因子と進路決定プロセス5類型(早期決定型,途中変更型,直前決定型,回避型,出会い型)との関連を検討したところ,各類型の特徴が明らかになり,進路決定プロセス尺度の並存的妥当性が確認された。進路決定プロセスの4要因と医療系学生の職業的アイデンティティとの関連を検討したところ,明確な職業イメージを持ち主体的な決定を行うことが,全ての職業的アイデンティティを高めていることがわかった。また,本命進路を諦めた経験は,医療職選択への自信を低めていた。途中変更型は本命進路を諦めた経験を持つという傾向があり,医療職選択への自信の形成に問題がある可能性が示唆された。
著者
岩井 浩一 澤田 雄二 野々村 典子 石川 演美 山元 由美子 長谷 龍太郎 大橋 ゆかり 才津 芳昭 N.D.パリー 海山 宏之 宮尾 正彦 藤井 恭子 紙屋 克子 落合 幸子
出版者
茨城県立医療大学
雑誌
茨城県立医療大学紀要 (ISSN:13420038)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.57-67, 2001-03

看護職の職業的アイデンティティを確立することは, 看護実践の基盤として極めて重要であると考えられるが, 看護職の職業的アイデンティティの概念や構造は必ずしも明確になっていない。そこで, 現在様々な立場にある看護職を対象に調査を行い, 看護職の職業的アイデンティティの構造を探るとともに, 職業的アイデンティティ尺度を作成した。因子分析の結果をもとに, 1)看護職の職業選択と誇り, 2)看護技術への自負, 3)患者に貢献する職業としての連帯感, 4)学問に貢献する職業としての認知, 5)患者に必要とされる存在の認知, という5つの下位尺度が抽出された。これらの下位尺度に高い因子負荷量を示した項目について信頼性係数を算出したところ, α係数は0.78〜0.89といずれも高い値を示しており, また尺度全体としては0.94と信頼性が高いことが確認された。さらに, 因子得点を算出し, 看護職としての臨床経験年数や看護教員としての教育経験年数などの変数との関連を探ったところ, 看護職の職業選択と誇り, 看護技術への自負, 患者に貢献する職業としての連帯感, および学問に貢献する職業としての認知という4つの因子は, 年齢, 臨床経験年数, および教育経験年数と有意な相関が認められたが, 患者に必要とされる存在の認知因子は年齢および臨床経験年数とのみ関連が見られた。各因子とも, 看護学生群でスコアが低く, どのようにして職業的アイデンティティが高まっていくかを探ることが今後の課題といえる。