著者
斎藤 健 薄井 紀子 土橋 史明 牧 信子 浅井 治 矢野 真吾 加藤 明徳 渡辺 浩 香取 美津冶 長峰 守 荻原 朝彦 山崎 博之 小林 直 田嶋 尚子 倉石 安庸
出版者
一般社団法人 日本血液学会
雑誌
臨床血液 (ISSN:04851439)
巻号頁・発行日
vol.39, no.7, pp.481-486, 1998-07-30
参考文献数
17
被引用文献数
2

成人急性骨髄性白血病(AML)においてCD7が予後因子となり得るかを評価する目的で,CD7陽性(+) AMLとCD7陰性(-) AMLの治療成績の比較検討を行いその意義について検討した。対象症例は1989年9月より1996年1月までの6年4カ月の間に,当科に入院した15&sim;65歳の<i>de novo</i> AML症例63例である。63例中表面マーカー検索材料中の芽球が70%以下の9例,早期死亡例(1カ月以内)2例を除外した52例が評価可能症例であった。FAB分類ではM1: 10例,M2: 16例,M3: 11例,M4: 8例,M5: 5例,M6: 2例であった。評価可能症例中CD7+AML症例は10例で,FAB分類ではM1: 3例,M2: 6例,M3: 1例であった。CD7-症例42例中CRは33例(CR率:78.6%),無再発生存率は22.1%, 4年生存率は35.4%であったのに対し,CD7+例10例のCR率は60%(6例),無再発生存率は53.3%, 4年生存率は44.4%であった。CD7+AMLとCD7-AMLの間で性別,血液学的所見,肝脾腫,リンパ節腫大,中枢神経系浸潤の有無,CR率,4年無再発生存率に有意差を認めなかった。CD7陽性は単独では予後因子となり得ないと考えられた。
著者
小林 達之助 海渡 健 大坪 寛子 薄井 紀子 相羽 恵介
出版者
一般社団法人 日本血栓止血学会
雑誌
日本血栓止血学会誌 = The Journal of Japanese Society on Thrombosis and Hemostasis (ISSN:09157441)
巻号頁・発行日
vol.20, no.4, pp.443-449, 2009-08-01
参考文献数
20

39歳,女性.2007年5月帝王切開直後からAPTT延長を伴う出血傾向を認め当院入院.APTT71.6秒,FVIII activity 3%,FVIII inhibitor 6BU/mlであり後天性血友病Aと診断.頻回かつ大量の遺伝子組換え活性化第VII因子(rFVIIa)製剤を使用し出血症状は軽減.FVIII inhibitorには副腎皮質合成ステロイド薬による免疫抑制療法を開始したが軽快せず,cyclosporine A(CyA)を併用したところ,inhibitorは約6ヶ月後に消失した.分娩後発症の後天性血友病ではFVIII inhibitorは自然経過にて消失するとの報告もあるが,本例では早期からのステロイド薬とCyAの併用が著効を呈した.分娩後発症の後天性血友病Aはしばしば重篤な出血症状を呈するため,止血療法としてのバイパス療法の施行基準及びCyAを含めた適切な免疫抑制療法の解析が必要である.