著者
小林 直樹
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.332-351, 2020 (Released:2020-11-10)
参考文献数
25
被引用文献数
3 4

本稿では,昆虫食習慣のある地域として長野県伊那市を取り上げ,地域の食文化とされる昆虫食について,食用昆虫の採集および流通,消費実態を明らかにし,昆虫食の成立,継続する要件を考察した.アンケート調査の結果,当地域では現在でも多くの住民が昆虫を食べており,昆虫を地域の食材,食文化として認識していた.一方,喫食頻度は低下傾向にあり,食用昆虫の流通構造などにも変化がみられる.伊那市の昆虫食は食用とされる昆虫の種類ごとに異なる特徴をもっており,流通構造などの変化の仕方や変化度合いも昆虫ごとに違いがみられた.今後当地域の昆虫食文化の存続を考えるためには,昆虫を食べない者の多い若い世代の増加による昆虫製品の需要の減少や,域外の原料に頼るかたちとなっている食用昆虫の流通の面に内在するリスクについて,さらに詳しい調査が必要である.
著者
小林 直也
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.58, no.12, pp.1159, 2022 (Released:2022-12-01)
参考文献数
5

望みの標的タンパク質と特異的に結合するタンパク質を設計し,タンパク質相互作用を自由自在に制御することができれば,新しい医薬品の開発への応用が期待できる.これまで結合タンパク質を設計するには,標的タンパク質が他のタンパク質と結合した複合体構造が必要であり,標的タンパク質の立体構造情報のみを用いて結合タンパク質を設計する一般的な方法はなかった.本稿では,標的タンパク質の立体構造情報のみを用いて,任意の標的タンパク質の特定の部位に結合するタンパク質を設計する手法を開発したCaoらによる研究を紹介する.なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.1) Cao L. et al., Nature, 605, 551–560(2022).2) Dou J. et al., Nature, 561, 485–491(2018).3) Rocklin G. J. et al., Science, 357, 168–175(2017).4) Chevalier A. et al., Nature, 550, 74–79(2017).5) Jumper J. et al., Nature, 596, 583–589(2021).
著者
小林 直弥
出版者
日本大学
雑誌
日本大学芸術学部紀要 (ISSN:03855910)
巻号頁・発行日
no.42, pp.15-27, 2005

日本の芸能、とりわけ歌舞伎における舞踊作品の中に、「ちょぼくれ」なる節を駆使した芸態がある。この「ちょぼくれ」とは、江戸時代における乞食坊主「願人坊主」と、それから派生した大道の雑芸より出たもので、大坂では「ちょんがれ」と呼ばれ、その後「浪花節」や「浪曲」の根源をなすものでもある。歌舞伎舞踊においては、特に門付芸として存在した「阿保蛇羅経読み」や「まかしょ」など、大道の雑芸人を描いたものや、「ちょぼくれ」の軽快な節回しを駆使した『偲儡師』や『喜撰』、『吉原雀』といった曲が現存し、現代にまでも当時の風情を伝えている。また、各地の民俗芸能として伝承されたものもある。本研究は、江戸期において大流行し、その後多くの芸能に影響を与えた「ちょぼくれ」を題材に、流行性と芸能における関係作用の研究の一つとして、まとめたものである。
著者
松井 康 今井 智子 永井 智 小林 直行 渡邊 昌宏 近藤 宏 宮川 俊平
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.389-393, 2016 (Released:2016-07-06)
参考文献数
28
被引用文献数
1

〔目的〕運動前のタウリン摂取が,運動によって生じる筋疲労に与える影響を明らかにすることとした.〔対象〕大学男子サッカー選手10名とした.〔方法〕無作為化二重盲検クロスオーバー試験にて,タウリン水,プラセボ水の2種類を摂取し,75%VO2maxでのエルゴメータによる運動と,最大努力での等速性膝伸展運動を100回行った.測定項目は,血液成分,膝伸展運動中のピークトルク,および大腿直筋の平均周波数(MPF)とした.〔結果〕タウリン水摂取群は血中MB濃度の上昇と,MPFの低下が抑制される傾向を示した.〔結語〕タウリン水摂取が運動によって生じる筋損傷を抑制する可能性があることが示唆される.
著者
千葉 雅尋 重松 明男 山川 知宏 高橋 正二郎 高畑 むつみ 小林 直樹 太田 秀一
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.108, no.10, pp.2154-2160, 2019-10-10 (Released:2020-10-10)
参考文献数
7

65歳,男性.倦怠感で当院を受診した.血液検査にて汎血球減少,LD高値ならびにハプトグロビン低値であり,末梢血に破砕赤血球が認められた.血栓性血小板減少性紫斑病に特有の症状である腎機能障害,動揺する神経症状等はなかったが,血栓性血小板減少性紫斑病を想定して,血漿交換を開始した.後日vitamin B12低値が判明し,vitamin B12の補充を行い,溶血所見及び汎血球減少の改善が認められた.破砕赤血球を伴う巨赤芽球性貧血では血栓性血小板減少性紫斑病と類似した検査所見が認められることが報告されており,pseudo-TTPと呼ばれる.
著者
塚田 武志 小林 直樹
雑誌
情報処理学会論文誌プログラミング(PRO) (ISSN:18827802)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.31-47, 2011-03-25

言語の包含判定問題とは,与えられた言語 L1 と L2 について L1 ⊆ L2 が成立するか否かを判定する問題であり,理論的な興味の対象であるだけでなく,プログラム検証などへの広い応用を持つ重要な問題である.この問題に関する既知の最も強い結果の 1 つが文脈自由言語と超決定性言語の包含判定の決定可能性である.このオリジナルの証明は,Greibach と Friedman によって与えられている.我々はこの問題に対して,小林らによって提案されている型に基づく言語の包含判定の手法を適用し,決定可能性に対する別証明を与えた.この手法は以下のような利点を持つ.(1) 部分型関係やポンプの補題などのよく知られた概念で理論が展開できる.(2) 型推論を効率的に行う方法は多数提案されており,それらを利用することができる.また,提案する証明は小林らのアイデアを正規言語よりも広いクラスに適用したはじめての例であり,その他の非正規言語クラスへの応用も期待される.
著者
吉田 成仁 高嶋 希 皆川 陽一 脇 英彰 山本 純 小林 直行
出版者
一般社団法人 日本アスレティックトレーニング学会
雑誌
日本アスレティックトレーニング学会誌 (ISSN:24326623)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.147-153, 2019-04-30 (Released:2019-11-13)
参考文献数
21

トレーニングを安全に効果的に実施するには,目的に合わせたトレーニング負荷で実施することが求められる.本研究は,サイドブリッジの足の高さや不安定性を変化させた時の筋活動を明らかにすることを目的とした.健常な大学生を対象とし,安定した床(安定面),台上安定面,バランスディスク(不安定面),台上のバランスディスク(台上不安定面)に足を置いて実施する4種類のサイドブリッジを行い,実施時の筋活動を比較検討した.台上に足を挙げると中殿筋の活動が低下し,不安定面に乗せると体幹筋の活動が増加することが示唆された.高さは中殿筋の活動量,不安定性は体幹筋の活動量に影響を与える可能性がある.
著者
中 正樹 日吉 昭彦 小林 直美
出版者
武蔵社会学会
雑誌
ソシオロジスト : 武蔵社会学論集 (ISSN:13446827)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.147-182, 2015

本研究の目的は,2012年に開催されたロンドンオリンピックの開催期間における日本のテレビニュースの報道傾向を明らかにすることである。そのために,ロンドンオリンピック開催期間に日本のキー局の代表的なニュース番組が提供したすべてのニュースを対象として量的分析を実施した。そして,(1)各ニュース番組の報道傾向,(2)各ニュース番組の英国に対する報道傾向,(3)ニュース番組全体からみた英国報道の傾向,以上の3点に焦点を絞って考察した。考察の結果,以下のような知見を得た。(1)フジテレビ「NEWS Japan+ すぽると!」およびテレビ朝日「報道ステーション」が特徴のある報道をしていた。(2)各ニュース番組の報道傾向は,TBS「NEWS23X」を除いて北京オリンピック開催期間における報道傾向と類似していた。(3)オリンピック開催期間中,ニュース番組が提供する英国ニュースはそのほとんどがロンドンオリンピック関係のニュースで占められていた。(4)ロンドンオリンピック開催期間における英国報道のフレームは,主に競技結果に関するスポーツニュースを選択・強調しており,社会や政治のニュースを選択する方向では機能しなかった。本研究は,先行研究として実施された北京オリンピック開催期間における研究と比較検討を重ねることによって,より大きな成果が期待できる。今後の課題である。
著者
中澤 潤 小林 直実
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要. I, 教育科学編 (ISSN:13427407)
巻号頁・発行日
vol.45, pp.119-126, 1997-02-28

事象や行為の時系列的な知識はスクリプト(Schank & Abelson,1977)や一般的事象表象(Generalized event renresentation:GER; Nelson,1986)とよばれる。スクリプトは,「特定の時空間的な文脈に適切な,順序だてられ目標に組織化された行為の流れ」と定義される(Schank & Abelson,1977)。スクリプトは目標(例えばレストランスクリプトであれば,食事をする)の達成に関わる登場人物(ウエイターやウエイトレス,食べる人),行為(入る,座る,注文する,食べる,支払う),小道具(メニュー,食器,請求書,お金やクレジットカード)といった要素からなる。そしてスクリプトにはスロットが想定されており,登場人物や小道具,行為が明示されていないとき,これらを推論できるようなデフォルトがそのスロットに入っている。そのため,レストランの話を聞いた人は,明示されていなくてもそこにメニューがあることをデフォルトから推論できる。またスクリプトには状況に応じて多様なパスがある。外食スクリプトにおいて,支払は重要な要素だが,高級なフランス料理のレストランとマクドナルドのようなファーストフードでの支払い方は異なる。このようなスクリプトの差異を子どもは経験を通して形成していくものと考えられる。スクリプトは人が持つスキーマの一つである。それは他のスキーマと同様に,階層をなしている一般的な構造である。階層構造については,例えば幼稚園生活のスクリプトの中にはお弁当のスクリプトやお帰りの会のスクリプトが下位構造として埋め込まれている。またスクリプトは一般的であるが故に,多様な状況に適用可能である。一方,スクリプトが他のスキーマと異なる点は,その基本要素が行為であるということと,行為の間に時間的因果的結合があるという点である。さて,人はスクリプトを持つことにより,上述のように,情報の欠けたメッセージからもその背景を推測できる。スクリプトに従うことでごっこ遊びにおいてルーチン的なやり取りのパターンを構成することもできる。また,幼稚園や保育園などでは園生活のスクリプトの獲得が園での適応に繋がる(藤崎,1995;無藤,1982)。例えば,中澤・鍛治・石井(1995)は幼稚園のお弁当活動における教師の発語を分析し,教師は入園当初お弁当活動におけるスクリプト形成を促す発語が多いことを見出した。生活上のスクリプトを初期に形成させることで幼稚園生活への適応援助を行っているといえる。このようにさまざまな観点から,こどものスクリプトや一般的事象表象の形成やその利用に大きな関心が持たれている(Fivush & Hudson,1990;Hudson,1993;Nelson,1986)。幼児は抽象的な知識の伝達から学ぶ存在ではなく,具体的な日常体験から学ぶ存在である。中澤・小林・亀田・鍛治(1993)は遠足体験が重なることにより,幼児の遠足知識が次第に一般的事象表象化していくことを示した。このような,日常体験を基にした事象知識の獲得やスクリプトの形成過程は,その意味で幼児期の認知機能の解明にとって重要な課題である。幼稚園で初めて経験することに,集団で行う活動がある。入園以前,個々の家庭で過ごしていた生活は,入園と共にその園・クラスにおける集団生活に変る。例えば,「食事をする」ことは家庭でも幼稚園でも行われていることで,食べる行為そのものは共通している。しかし幼稚園の食事は自分たちで食べる準備をして,みんなでそろっていただきますのあいさつをし,食べ終わってからはお片付けをしなければならない。その内容は家庭での食事とは大きく異なるであろう。このように,子どもはそれまでもっていた家庭での生活パターンから幼稚園における生活パターンを作るために,新たな知識を獲得していかなくてはならない。Nelson(1978)は場面に不慣れな子どもがどのようにして経験を組み立てていくのかをスクリプトの観点から検討した。対象は保育園の新入園児(3歳児)7人と2年目の在園児(4歳児)7人であった。場面として保育園での昼食を取り上げた。実験者はインタビューによって「あなたが保育園でお昼を食べるときにどんなことがありますか。」「それから何がありますか。」と尋ね,さらに細かな点や,他者の役割についても尋ねた。このインタビューを新年度が始まってから1週間以内と3ヶ月後の2回行い、子どもが挙げた昼食時の事象数と系列的な長さが比較された。新入園児より在園児が,1回目よりは2回目の方が,事象数は多く,系列も長かった。また数値の比較に加えて個人の発話プロトコルを事象構造的に図示した。それによると,在園児は事象間の順序を接続詞を使って正確に述べ,昼食活動の基礎的な事象(手洗い,食べる,片付けなど)にも多く言及していた。それに対し,新入園児は系列化が少なく,食事よりも食事後の昼寝に言及する事が多かった。このように,在園児はより適切な昼食スクリプトを構成していた。しかし,この研究では在園体験と年齢とが交絡しておりスクリプトの形成における経験と一般的な認知的発達の効果を分解できていない。そこで本研究では,4歳新入園児,4歳在園児,5歳在園児を対象とし,年齢と経験の双方から子どもの事象知識の獲得をみていく。特に,初めての経験から5ヶ月後まで3回にわたり調査するごとにより,知識の広がりやスクリプトの形成過程を検討する。場面は,1.園生活の中で流れが明確である,2.毎日繰り返される,3.家庭に基盤がある,4.新入園児にとって初めての体験であるの4点を考え,幼稚園のお弁当場面とした。
著者
岩間 太 小林 直樹
出版者
一般社団法人日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.58-64, 2002-03-15

プログラミング言語Javaの仮想機械では,実行前にコードの検証を行い,不正なコードを排除している.しかし,現在の検証器では,並行スレッドによるロックの獲得・解放の整合性に関する検証は行っていない.この問題を解決するため,本研究では,AbadiとStataによるバイトコード検証のため型システムを改良する.新しい型システムでは,各オブジェクトのロックが獲得・解放される順序の情報をオブジェクトの型に付加することにより,ロックの正しい使用を保証する.
著者
小林 直樹
出版者
東京大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1995

本年度はまず、すでに我々が提案していた線形論理に基づく並列計算の枠組であるACLを高階に拡張したHACLを提案し、その意味論・型システム等を与え、静的に型づけされた(HACLで書かれた)並列プログラムが実行時に型エラーを起こさない等の基本的な性質を証明した。また、それに基づいたインタプリタの処理系を作成して、HACLの特徴の一つである(多相型をもった)高階プロセスが非常に有効であることをプログラミングを通して確認した。さらに、HACLの上に、インヘリタンスをはじめとする種々の機能を備えた並列オブジェクト指向言語を実現でき、かつそのようにして実現された並列オブジェクト指向言語で書かれたプログラムがHACLの型システムをとおして型推論・型チェックが行なえることを示した。その副産物として、型推論をとおして並列オブジェクトのメソッドのディスパッチが定数コストで行なえるようにコンパイルできることも示した。これらの結果に基づいて実際に、並列オブジェクト指向言語のプログラムからHACLへのトランスレータのプロトタイプも作成した。また、HACLを含めた非同期通信に基づく並列言語の効率のよい実現のために、エフェクト解析の手法を応用した並列プログラムの通信に関する解析を行なう方法を提案し、HACLを通した定式化・基本的な性質の証明・解析システムのプロトタイプの実装を行なった。将来的にはこの静的解析システムをコンパイラに組み込み、並列プログラムの最適化コンパイルに役立てる予定である。上記理論的側面の研究と並行してHACLに基づいた処理系の実装を進めており、現在シングルCPUのワークステーション用のコンパイラのプロトタイプがほぼ完成した状況である。
著者
矢野 健二 小林 直彦 堀田 順平 清水 明生 松崎 泰裕 谷沢 智史 山下 静雨 吉田 幸二 鈴木 雅人 市村 洋
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. ET, 教育工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.104, no.703, pp.1-5, 2005-02-26

インターネットの普及と相俟って遠隔教育は, 企業社員教育や学校教育の場において, 試用から実用の段階に入ろうとしている. これらの教育の対象は論理・科学技術分野である. 学問・教育には, 論理や科学分野以外に芸術・体育・技能等の分野がある. この分野の遠隔教育は現在実用期に入ろうとしている論理・科学分野の次にくる次世代遠隔教育と言えよう. これらでは感覚的な事柄が重要視されるため, その遠隔教育においては, 質問事項のメモ及びその意思伝達が困難である. そこで筆者は, 質問事項のメモ及びその意思伝達を容易にするために, 疑問や質問を思いついたときの前後の環境を保存し, 学習者のコンピュータにアイコン画像を表示, 後にその環境を復元・共有し, 質問・疑問の連想を支援するシステムの設計と実装方法を報告する.