著者
藤井 太一 川本 宏和 白子 智康 上野 薫 南 基泰
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.320-329, 2016 (Released:2017-03-16)
参考文献数
28

愛知県知多半島臨海工業地帯の JXエネルギー (株) 知多製造所,中部電力 (株) 知多火力発電所,出光興産 (株) 愛知製油所及び東邦ガス (株) 知多緑浜工場の企業緑地内に合計 32台の自動撮影カメラを設置し,2011年~2014年の期間カメラトラップ法を用いて哺乳類相を調査した。累計カメラ稼働日数 23,495日,動物,人及び車両を撮影した有効撮影枚数は 26,892枚となり,中型哺乳類 9種および 1属の生息が確認できた。在来種 (タヌキ,ニホンノウサギ,キツネ,アナグマ) が 94.5%,外来種 (イエネコ,イヌ,ハクビシン,イタチ属,ヌートリア,アライグマ) が 5.5%を占めた。最も多く撮影されたのはタヌキ (撮影頻度 17.5枚/100日,以降同様) で,次にニホンノウサギ ( 5.3枚/100日) となり,これら 2種は林縁部や草地植生で多く撮影された。 4企業緑地共に中型哺乳類が活動していた地点の多くは日中 (6時~18時) に企業活動が行われている地点であったが,中型哺乳類の活動は夜間 (18時~翌 6時) に集中していて企業活動と中型哺乳類の時間的すみわけが起きていた。撮影頻度の高かった在来の中型哺乳類は知多半島での生息が確認されていることから,在来種の生息地としてのポテンシャルの高い企業緑地であることが明らかとなった。
著者
藤井 太一 村上 真善 南 基泰
出版者
「野生生物と社会」学会
雑誌
野生生物と社会 (ISSN:24240877)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.11-22, 2023 (Released:2023-04-03)
参考文献数
35

A survey of mammal fauna using a total 26 automatic digital camera traps on an abandoned railway and a series of tunnels belonging to the former Japanese National Railway was conducted from March 2, 2015 to December 19, 2019 in Kasugai, Aichi Prefecture in Central Japan. A total of 74,807 informative photographs were obtained over 41,052 camera days. Of the 15 mammals that were photo-captured, the most frequently photographed was Sus scrofa (relative abundance index: 15.1 photographs/100 camera-days), followed by Paguma larvata (6.2), Felis catus (5.6), Vulpes vulpes (1.4), Nyctereutes procyonoides (1.2), Lepus brachyurus (0.7), Martes melampus (0.2), Procyon lotor (0.2), Capricornis crispus (0.2), Cervus nippon (0.1), Mustela sp. (0.1), Sciurus lis (< 0.1), Macaca fuscata (< 0.1), Meles anakuma (< 0.1), Myocastor coypus (< 0.1), in order. The study area, which is located in the eastern foothills of Aichi Prefecture, supports populations of local wildlife species that are representative of medium- and large–sized mammals (S. scrofa, V. vulpes, N. procyonoides and L. brachyurus, M. melampus, C. crispus, and C. nippon) and is considered to contribute positively towards the conservation of regional biodiversity. Since the activity of S. scrofa and the administrators of the abandoned railway and tunnels overlap during the twilight hours (i.e., one hour before and after sunrise and sunset), caution is necessary to prevent encounters between S. scrofa and humans.
著者
飯田 貴天 村上 哲生 南 基泰 藤井 太一
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
pp.2115, (Released:2022-04-28)
参考文献数
56

ハッチョウトンボ Nannophya pygmaeaが生息している岐阜県可児市大森の湧水湿地群は、太陽光発電施設建設予定地となった段階で開発業者と地域住民らの事前協議によって湧水湿地群を保存することになった。本研究では、 8つの湧水湿地に生息するハッチョウトンボ個体群の遺伝的多様性まで考慮した保全のために、ミトコンドリア cytochrome c oxidase subunit I遺伝子部分領域( 658 bp)を用いて、各湧水湿地に生息する個体群の遺伝的多様性及び遺伝的分化について解析した。 294頭から 8つのハプロタイプが確認され、各湧水湿地に生息する個体群のハプロタイプ多様度は、生息している湧水湿地の面積および傾斜角度、湧水湿地表層水の pHおよび電気電導度、湧水湿地周辺部の植生高と有意な相関関係は認められなかった(ピアソンの積率相関分析, p > 0.01)。また、 8個体群間の遺伝的分化係数( pairwise Fst)を算出した結果、有意な遺伝的分化は全ての個体群間で認められなかった( 10,000回の Permutation test,p > 0.01)。これらの結果から、本湧水湿地群のハッチョウトンボ個体群は、各湧水湿地間を遺伝的交流の制限なく移動している同一個体群であると考えられた。本湧水湿地群のハッチョウトンボ個体群の遺伝的多様性維持のためには、各湧水湿地間の遺伝的交流の制限となる生息地適性の低下や湧水湿地の消失を防ぐ必要がある。現在、市民によって実施されている湧水湿地の水質のモニタリング、湧水湿地内への土砂流入・堆積のモニタリング・除去、周辺から湧水湿地内に侵入した植物の除去を今後も継続し、定期的にハッチョウトンボ個体群の遺伝的多様性についても評価していく予定である。