著者
藤井 禧雄
出版者
THE JAPANESE FORESTRY SOCIETY
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.1-5, 1969

二脚の台の上に置かれた角材を,さまざまの条件下で (Table 1参照)鋸手に支えられたチェンソーで玉切った。そしてその際チェンソーのハンドル部位に生ずる振動加速度 (<i>G</i>表承)を,非接着型加速度変換器を通して,おのおのが直角な三方向別に記録し,それらを分散分析法を用いて解析した。実験は二段階に分かれている。第1段階は,チェンソー自体の特性(その馬力数,原動力の種類)がチェンソーの振動におよぼす影響を考察するために,スティール (6馬力型),ホームライト (5馬力型),電動型 (1.35馬力)を用いて予備実験を行なった。そして次の点を明らかにした (Table 2参照)。<br> 1. チニンソーに生ずる振動は,チェンソーの馬力数や原動力の種類によって大きく支配されている。<br> 2. 切削時に比べれば低いけれども,しかし空転時ですでにかなり高い振動加速度が生じている。<br> 3. 左右切歯の各角度およびデップス量の不揃いは,振動加速度を増加させる。<br> 第2段階は主実験で,供試機としてホームライトZIPを用い, Table 1の因子を直交配列表L<sub>64</sub>に割付けて64のさまざまな切削条件下で玉切実験を行なった。その結果は次のとおりである。<br> 1. あらゆる切削条件を通じての平均振動加速度は8.4<i>G</i>であり,最大値は12.9<i>G</i>, 最小値は5.1<i>G</i>であった。この平均値を方向別に示すと, <i>C<sub>〓</sub></i>:<i>P</i>.:<i>C<sub>〓</sub></i>=2.9<i>G</i>:4.0<i>G</i>:6.7<i>G</i>であった。<br> 2. 角材の木口幅,デップス量,樹種,エンジンの回転数,交互作用角度<i>i</i>×回転数は1%の危険率で有意であったが,最も興味のあった角度β, <i>i</i>およびその交互作用は有意でなく,他の因子 に比べればチェンソーの振動にさしたる影響を与えるものではないことが明らかになった。<br> 3. しかし,尚角度の16の組み合わせごとの振動加速度を見ると, β=55°, <i>i</i>=5°の場合の7.5<i>G</i>から, β=85°, <i>i</i>=50°の9.8<i>G</i>まで2.3<i>G</i>の差が現われた (Fig. 2参照)。<br> したがって結論としていえば,チェンソーに生ずる振動の大部分は両角度以外の要因に影響されるものであるが,チェンソーの稼動時の振動をより少なくするためには,均一な,しかも適正な角度とデップス量を保持することも必要であるといえる。
著者
藤井 禧雄 瀧本 義彦
出版者
京都大学農学部附属演習林
雑誌
京都大学農学部演習林報告 = BULLETIN OF THE KYOTO UNIVERSITY FORESTS (ISSN:0368511X)
巻号頁・発行日
vol.56, pp.190-197, 1984-11-30

チェーンソーの振動・騒音による神経的負荷及び鉄アレイ把持による静的重量負荷を与えた場合の作業者の生理的応答 (心電図, 表面筋電図) をFMテレメー夕方式にて計測した。そして, 各因子聞の回帰式及び自己-, 相互相関関数やスペクトルを計算し, 上述の負荷と生理的応答との関係を定量的に検討した。その結果, 心拍数, 筋電図積分値と静的重量負荷とはほぼ直線的関係があること, また, 心拍数は振動, 騒音の変動に良く応答するものであることが明らかになり, これ等を静的筋負担や神経的負担の指標として利用できることを示した。
著者
山本 俊明 瀧本 義彦 寺川 仁 山田 容三 藤井 禧雄 佐々木 功
出版者
京都大学農学部附属演習林
雑誌
京都大学農学部演習林報告 (ISSN:0368511X)
巻号頁・発行日
no.57, pp.p247-257, 1986-01
被引用文献数
1

本研究は林業機械作業における作業者の生理負担に関する研究の一環として最近特に機械化が進んでいる枝打ち作業について作業者の作業中の生理負担について調査したものである。調査を行なった場所は京都大学農学部付属和歌山演習林内, 11林班ヒノキ人工林, 7林班スギ人工林である。作業者は演習林職員1名, 作業員2名の計3名で, 枝打ち機械による作業とナタとハシゴによる手作業について作業中の心拍数を心拍メモリ装置を使って測定し生理負担を推定した。この他, 1時間当りの枝打ち本数についても調査した。作業者の作業中の生理負担の推定は, 各作業者の作業中の心拍数を踏み台昇降運動 (ステップテスト) の物理仕事量に換算し, しかる後次式によりエネルギ一代謝量 (Kcal/分) を推定した。エネルギ一代謝量 (Kcal/分)=0. 0163×体重 (Kg)×台高 (m)×昇降回数 (回/分)+安静時エネルギ一代謝量 (Kcal/分) 結果, 作業中平均心拍数と1時間当りの枝打ち本数は, 手作業の場合ヒノキで77. 2 - 115. 3拍/分, 15. 6 - 27. 9本/時, スギで92. 0 - 111. 0拍/分, 11. 3 - 18. 1本/時, 機械作業の場合, ヒノキで81. 2 - 122. 5拍/分, 13. 6 - 15. 4本/時, スギの場合, 77. 6 - 112. 8拍/分, 9. 6 - 12. 8本/時, の範囲であった。作業中の生理負担については, はっきりした傾向はみられないが, 6. 0Kcal/分 - 7. 0Kcal/分の間であると推定出来る。
著者
藤井 禧雄
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.1-5, 1969-01-25

二脚の台の上に置かれた角材を, さまざまの条件下で(Table 1参照)鋸手に支えられたチェンソーで玉切った。そしてその際チェンソーのハンドル部位に生ずる振動加速度(G表示)を, 非接着型加速度変換器を通して, おのおのが直角な三方向別に記録し, それらを分散分析法を用いて解析した。実験は二段階に分かれている。第1段階は, チェンソー自体の特性(その馬力数, 原動力の種類)がチェンソーの振動におよぼす影響を考察するために, スティール(6馬力型), ホームライト(5馬力型), 電動型(1.35馬力)を用いて予備実験を行なった。そして次の点を明らかにした(Table 2参照)。1.チェンソーに生ずる振動は, チェンソーの馬力数や原動力の種類によって大きく支配されている。2.切削時に比べれば低いけれども, しかし空転時ですでにかなり高い振動加速度が生じている。3.左右切歯の各角度およびデップス量の不揃いは, 振動加速度を増加させる。第2段階は主実験で, 供試機としてホームライトZIPを用い, Table 1の因子を直交配列表L_<64>, に割付けて64のさまざまな切削条件下で玉切実験を行なった。その結果は次のとおりである。1.あらゆる切削条件を通じての平均振動加速度は8.4Gであり, 最大値は12.9G, 最小値は5.1Gであった。この平均値を方向別に示すと, Cμ : P. : C_⊥=2.9G : 4.0G : 6.7Gであった。2.角材の木口幅, デップス量, 樹種, エンジンの回転数, 交互作用角度i×回転数は1%の危険率で有意であったが, 最も興味のあった角度β, iおよびその交互作用は有意でなく, 他の因子に比べればチェンソーの振動にさしたる影響を与えるものではないことが明らかになった。3.しかし, 両角度の16の組み合わせごとの振動加速度を見ると, β=55°, i=5°の場合の7.5Gから, β=85°, i=50°の9.8Gまで2.3Gの差が現われた(Fig.2参照)。したがって結論としていえば, チェンソーに生ずる振動の大部分は両角度以外の要因に影響されるものであるが, チェンソーの稼動時の振動をより少なくするためには, 均一な, しかも適正な角度とデップス量を保持することも必要であるといえる。
著者
杉原 彦一 野口 昌巳 藤井 禧雄 安堂 誠
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.47, no.8, pp.275-281, 1965-08-25

振子式木材切削試験器を用いて、単一のチェンソー歯の木材切削性能試験を行なった。そこで、チェンソー歯の諸角度(上刃にげ角、側刃すくい角)を数段階に変化させ、さらにそれが切削所要エネルギーに与える影響をより詳細に知るために、切削用木材試片の樹種(オオナラ、ブナ、スギ、ヒノキ、アカマツ、ラワン)、含水状態(気乾状態、飽水状態)を、又その切酎方向(a、b、c;Fig.3参照)、切込量(0.2、0.4、0.6mm)をも数段階に変化させ、上述の諸角度の変化と組み合わせその交互作用をも検討した。実験データの分析にあたっ.ては、分散分析を行ない、その結果について検討した。実験の結果、チェンソー歯にあっては、切削所要エネルギーを最小にするという観点からすれば、上刃刃先角(角度の名称はFig.2を参照)が一般的な55°の場合、上刃にげ角は4〜5°(よって、上刃すくい角は31〜30°)、側刃すくい角は30°〜40°の角度を取ることが最も好ましいことがわかった。