著者
藤井 美穂子 相澤 恵子
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.378-385, 2020 (Released:2021-02-05)
参考文献数
13

目的:生殖補助医療(Assisted reproductive technology: ART)後に双胎妊娠した女性への助産ケアに対する助産師の認識を明らかにする.方法:助産師5名を対象にして,グループインタビューを実施した.データ分析は,Riessman(2008)のテーマ分析を用いた.結果:ART後に双胎妊娠した女性への助産ケアに対する助産師の認識について(a)【心が不安に占領される妊娠生活】(b)【双胎妊娠の負担の上に重なる高齢妊娠の重荷】(c)【出産をゴールに据えるがための理想と現実のギャップへの困惑】(d)【子どもとの距離を感じる母親】(e)【継続的な支援の必要性】(f)【ART後であることへの配慮の欠如】が見出された.結論:ARTヒストリーの情報を活用した継続的なケアの実践には至っておらず,ARTヒストリーを踏まえた助産ケアの知識の確立と普及の必要性が示唆された.
著者
藤井 美穂子
出版者
一般社団法人 日本助産学会
雑誌
日本助産学会誌 (ISSN:09176357)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.183-195, 2014 (Released:2015-05-30)
参考文献数
22
被引用文献数
2 1

目 的 本研究では,生殖補助医療(以下ART)によって双胎妊娠した女性が不妊治療期から出産後6か月頃までに母親となっていくプロセスを明らかにした。方 法 研究デザインは,ライフストーリー法である。研究参加者はARTによって双胎妊娠し,妊娠8か月以降に胎児に先天的な奇形や異常がない。加えて,妊娠8か月の時点で母親に合併症がなく,今後の妊娠・出産経過が順調であると推測できた妊婦4名である。データ収集は,半構成的面接と参加観察法によって行った。面接や参加観察は,①産科外来通院中,②出産後の産褥入院中,③子どもの1か月健診時頃,④子どもの3か月健診時頃⑤子どもの6か月頃の5時点で縦断的に実施した。結 果 本研究では,子どもをもつことで夫と家族になる夢を叶えたAさんのライフストーリー,子どものために強い母親になろうとするBさんのライフストーリー,子どもを失った苦しみから立ち直ろうとするCさんのライフストーリー,母親となったことをなかなか実感できないDさんのライフストーリーが記述された。考 察 本研究の参加者の全員は,妊娠期に母親となることを否認するが,出産後に妊娠期から母親の準備をしていたかのように物語を書き替えることで,妊娠期に胎児と過ごした時間を取り戻していた。また,不妊治療中に自尊心が傷つき辛かった体験を想起して現状を「良かった」と意味づけていた。研究参加者は,未解決な過去を肯定的に意味づけることで過去を受容して母親としての人生を歩もうとする物語を語った。 しかし,その裏で,出産後も拭いとることができない不妊というスティグマによる傷ついた物語が母親となる物語に影を落としていた。ART後に双胎妊娠した女性の母親となっていく物語は,不妊治療期から育児期へと続く語りによって書き直されていくが,その根底には,不妊による傷ついた物語が継続していたと考えられた。不妊治療期から育児期までの女性の体験を理解し,個々の女性の体験に即して継続的に支援する必要性が示唆された。
著者
藤井 美穂子
出版者
一般社団法人 日本助産学会
雑誌
日本助産学会誌 (ISSN:09176357)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.2_77-2_86, 2007 (Released:2008-07-07)
参考文献数
15
被引用文献数
4 3

目 的 双子を持つ母親の退院後1か月間の育児体験を明らかにする対象および方法 研究対象は,平成17年6月下旬から7月上旬にA病院で双子を出産し,子どもが先天性奇形や疾患を有さず子どもと一緒に退院し,研究参加協力が得られた退院後1か月を経過した母親4名である。 研究方法は,退院から1か月間の双子の育児を振り返ってもらい,印象的だった事象やその時に生じた思いや体験について半構成的面接を行った。得られたデータを逐語録とし,事例ごとに文脈に沿って内容を分析した。結 果 研究参加者である母親は,乳腺炎等の突発的な出来事や2人が同時に泣く,時期をずらして交互に嘔吐する等の双子特有の体験をしていた。経産婦は,前回の出産や育児と比較することで,授乳方法の違いや体の不調を感じながら育児していた。 また,研究参加者である4名の母親から,病院退院後1か月の育児体験を通して肯定的・否定的な育児への思いを反映する言動がみられた。 双子の母親は,2人の成長を実感することやそれに応じて直接母乳ができる体験等を通して肯定的な思いを反映する言動がみられた。また,突発的な出来事など入院中に予測できなかった体験を通して,「心配」「不安」等の思いを抱いていた。本研究の参加者は,2人が同時に泣くことにより,自分の時間を作ることや児に対して十分に相手をすることができないことで「かわいそう」等の思いを抱いていた。里帰り中の母親は,退院後1か月頃になると自宅へ帰った後の生活を考え,イメージできないことで否定的な思いを反映する言動がみられた。結 論 双子の母親が退院後1か月間に,2人の成長に気づき対応できる育児体験をしていることや,予想出来なかった出来事やイメージできない育児に対し不安を抱いていることが明らかになった。家族を含めて具体的な双子の生活がイメージできるような情報提供や助産師による入院中からの継続的な支援の必要性が示唆された。
著者
谷野 祐子 小野 恵美 朝比奈 七緒 大塚 志乃ぶ 森谷 美智子 藤井 美穂子 松井 典子
出版者
日本母性衛生学会
雑誌
母性衛生 = Japanese Lournal of Maternal Health (ISSN:03881512)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.90-96, 2007-04-01
参考文献数
17
被引用文献数
1

父親対象の産前産後の育児指導受講の有無が,1ヵ月後の育児参加に与える影響を明らかにするために,児の1ヵ月健康診査で来院した父親99名を対象に無記名式質問紙調査を行った。その結果64名から有効回答が得られ,産前・産後の育児指導の受講状況別に比較検討したところ,次の結果が得られた。1.産前に育児指導を受講した父親35名のうち,産後指導を受講した父親21名(60.0%)であった。また,産後指導の受講の有無にかかわらず,父親の育児態度は高かった。しかし,産後指導を受講した父親のほうが育児技術を実施していた。2.産前の育児指導を受講しなかった父親29名のうち,産後指導を受講した父親は8名(27.6%)であった。また,産後指導の受講の有無と,父親の育児態度や育児技術実施状況に関連はみられなかった。以上より,父親の育児参加を高めるためには,産後の育児指導を受講するだけでは効果が不十分であり,産前からの継続的な受講が有効であることが示唆された。