著者
川原 由佳里 田中 幸子
出版者
日本赤十字看護大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

諸外国における高度看護実践の発展プロセスを調査した。海外での関連史資料の調査と米国の看護史専門家への聞き取り調査を行った。結果、高度実践看護は様々な変遷を辿り、関係職種との衝突と調整を経て、現行の教育認証、資格認定、権限を整備してきたこと、日本での導入においては看護学の基盤に基づく教育、保健師助産師看護師法での資格規定、検査、診断、処方に関する権限の医師法・薬剤師法を含めた法体系のもとでの整備が必要であり、とりわけ医師による医業独占を廃し、必要な権限を獲得すると同時に、ケアサイエンスとしての看護のアイデンティティと実践の基盤をより確かにすることが重要と考えられた。
著者
谷津 裕子 佐々木 美喜 千葉 邦子 新田 真弓 濱田 真由美 山本 由香 芥川 有理
出版者
日本赤十字看護大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

20代女性の出産に対するイメージを当事者への聞き取り調査を通じて明らかにした。20歳代未婚女性33名に非構成的面接法を行い、得られたデータを質的に分析した結果、20代女性の出産イメージを示す10の特徴が抽出された。20代女性が出産に現実味を感じにくい背景には、就労状況の過酷さや職場や地域社会における家族中心施策の未整備,ロールモデルの不在、ライフデザイン教育の不十分さ等が存在し、これらの問題に取り組むことが少子社会における出産環境の創出に向けた喫緊の課題と考えられた。
著者
西村 ユミ
出版者
日本赤十字看護大学
雑誌
日本赤十字看護大学紀要 (ISSN:09142444)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.1-9, 2002-03-10

In research exploring human experiences, researchers often come into direct contact with research participants to collect data, such as events and their descriptions. Therefore, within a series of research processes, the ways in which research subjects participate, observe events, and are interviewed are important. Although these processes are often listed as methodologies or procedures for data collection, the ways in which these processes are performed in actual practice is rarely discussed. The present paper discusses an interactive interview process with nurses, and how the author placed herself in clinical settings in the author's past studies investigating experiences of nursing care for patients in a persistent vegetative state (Nishimura, 1999 and 2001). The results demonstrate that relationships between patients in a persistent vegetative state and nurses were constructed from the interaction (interview) of physical communication between nurses and the author. In addition, when discussing past experiences, nurses interpreted past events with current perspectives and recreated new experiences while in the process of describing how they physically nursed these patients in a persistent vegetative state. Furthermore, placing oneself in clinical settings meant that the author was involved in the reformation of past events, and thus the nurses related their experiences as if the author had been present. "Interactive interview" and "Placing oneself in clinical settings" are two processes of research when researchers come in direct contact with research participants, and these processes are facilitated by physical communication, which is the foundation for providing nursing care for patients in a persistent vegetative state.
著者
山崎 裕二
出版者
日本赤十字看護大学
雑誌
日本赤十字武蔵野短期大学紀要 (ISSN:13461907)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.92-122, 1999

1910年代の日赤救護看護人は, 平時において, 軍事演習や招魂祭といった軍関連行事の救護, 常設救護所や巡回診療といった診療事業の救護, 自然災害や火災, 交通災害, 伝染病流行などの災害救護に従事した。戦時においては, 中国辛亥革命に際しての漢口や鳳凰城での救護, 第1次世界大戦(日独戦争)に際しての日赤病院船での救護, 中国蒙古紛争に際しての郭家店での救護, シベリア出兵に際してのウラジオストクなどでの救護に派遣された。その特徴を一言でいえば, "1910年代における日赤救護看護人は, 日本近代看護史のなかで一番多様な看護活動を行った男性看護者であった"といえる。
著者
山崎 裕二
出版者
日本赤十字看護大学
雑誌
日本赤十字武蔵野短期大学紀要 (ISSN:13461907)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.75-99, 1997

日本赤十字社は, 日清戦争の救護経験から男性看護要員(準備看護人)を本社や支部で養成し戦時に備えることにした。養成期間は10カ月で, 前期5カ月は本社病院や支部養成所(あるいは依託した公私立病院, 陸軍衛戍病院)で看護法や包帯法など学科の教授が行われ, 後期5カ月は陸軍衛戍病院での実務教習が行われた。戦争が起きた場合, 準備看護人には戦地で患者輸送など軍衛生部門を幇助することが求められたため, 生徒には軍の規律や風紀を守ることが厳しく教えられた。卒業後の準備看護人の動向は, 救護法の復習や現況調査のための点呼召集への応召や, 陸軍行事への救護参加, 災害救護への参加, 日赤関連行事への参加, 磨工資格や医術開業免許の取得, 精神病院への就職, などであった。準備看護人生徒の中には, 行政機関の衛生事務などへの就職斡旋を日赤指導層に要望する者もいたが, 日赤は看護婦外勤部の開設のような就職斡旋事業を準備看護人に対しては行わなかった。
著者
柳澤 尚代
出版者
日本赤十字看護大学
雑誌
日本赤十字武蔵野短期大学紀要 (ISSN:13461907)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.54-72, 1999

ベトナムベンチェ省をフィールドにしたNGO「ベトナムの子ども達を支援する会」(以下「会」)の活動に参加し, 母子保健の中心課題である栄養不良の要因分析と今後の活動のあり方について地域看護の視点から考察した。栄養不良の要因を明らかにするため, プロジェクト・サイクル・マネージメント(Project Cycle Management : PCM)の手法を使い, 問題点と望ましい姿を分析した。この結果, 栄養不良は, 基本的な人権を脅かす最も危険な指標であり, 活動計画の上位目標に「生きる子供の権利を保障」することを据え, かつ地域の人々のイニシアチブを生かした基本的なアプローチが成果を生み出す鍵であることが考察できた。またこうしたプロセスを通して地域の人々のエンパワーメントが可能となることも理解できた。
著者
守田 美奈子 吉田 みつ子 川原 由佳里 樋口 康子 吾妻 知美 西村 ユミ 池川 清子 稲岡 文昭 坂本 成美
出版者
日本赤十字看護大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

本研究は、看護学の体系化に向けて最も重要な学的基盤としての看護哲学の確立をめざすことを目的とした。ここ数十年の間に、わが国においても看護の研究論文は増え、新たな看護の知も蓄積されつつある。看護という現象が、経験の中にうずもれ、学的な体系として整理されにくかった大きな理由は、看護という現象の複雑さや深みというものが、既存の理論や従来の科学的学問観で捉え、明らかにしていくことに困難さを伴うものであったからだといえる。しかし、その違和感を問うことに看護の学的基盤を創るエッセンスがあり、「看護とは一体何なのか、どのような現象なのか、どのような特徴があるのか」といった問いを追究することがことが必要なのである。本研究は、このような問題意識から始まり、これまでの看護理論家の思索の足跡をたどりながら、それを問い直し、対話をはかることによって次の各課題についての考察した。1.看護哲学の必要性(看護哲学の課題、わが国の看護哲学に求められているもの)2.看護のアート(「看護のアート」とは何か、看護のアートにおける「技術」の概念看護における全体性の概念、患者理解における直観概念の意義3.看護学の知のスタイル(看護のリアリティ、看護におけるアクチュアリティ)4.看護の科学と哲学(複雑系の科学の可能性、カオス理論と看護研究)
著者
佐藤 裕子 中木 高夫 濱田 悦子 川島 みどり 木村 義 齋藤 彰 平木 民子 奥原 秀盛
出版者
日本赤十字看護大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

本研究は看護学生の論理的思考を育成する教育方法の1つとして、看護方法学の授業教材として使用できるコンピューター・ソフトウェアの作成を目指した。このソフトウェアの基盤を構築するために未だ明らかにされていない看護者に特有な推論構造を解明する目的で平成10年度に予備調査を実施した。結果、経験の厚い看護者の推論をより密着して詳細に調査することが必要となり、平成11年度には本調査を実施した。結果、手がかりから仮説へと至る看護者の推論プロセスの特徴、対・患者場面で看護者の即座の行為を導く推論の特徴、さらに看護者に追加される情報によって推論が発展していくことが明らかとなった。得られた資料を土台として、平成12年度から平成13年度にかけて、ソフトウェアの主軸となるルールセットを構築していった。このルールセツト作成作業では現象データからどのような推論が生まれてくるかをシミュレーション化したうえで、現象→推論→根拠→否定手段の4要素のルールからなるセットを蓄積していった。これらをシステムに組み込む作業を経たうえで、ユーザーインターフェイスを開発、ソフトウェア化していった。これと平行し本研究で作成するソフトウェアの適用対象となる看護学生の思考発展調査を平成12年度から13年度にかけて行った。結果、看護学の専門的知識を学習する前の時期は自らの生活体験や身近な家族・親戚、ぞして講義などの影響が大きい学生の思考は、基礎実習を経ることによって、さらに看護過程や看護専門知識の学習を経ることによって、現象を見る視点が多様化し語彙量が増え、表現豊かになっていくという思考の発展が明らかとなった。学生の思考発展に応じた適切な時期と活用法を考慮に入れながら論理的思考を育成することを目指す本ソフトウェアの授業教材化と評価が今後の課題である。