著者
吉村 元 山上 宏 藤堂 謙一 川本 未知 幸原 伸夫
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.33, no.5, pp.501-505, 2011 (Released:2011-09-27)
参考文献数
20

:症例は生来健康な22歳男性.性交後に右後頭部痛と顔面を含む左半身感覚障害,左上同名性四分盲を生じ,頭部MRIで右後頭葉と右視床に脳梗塞巣,頭部MRAにて右後大脳動脈にpearl & string signを認めた.性交を契機とした後大脳動脈解離による脳梗塞と診断し,抗血小板薬による保存的加療を行った.経過は良好で,クモ膜下出血の合併や脳梗塞再発は認めず,MRA上右後大脳動脈の壁不整所見も経時的に改善した.脳動脈解離は若年性脳梗塞の原因として重要であるが,性交が誘因となることもあり,頭痛や神経症状発症時の状況を詳しく病歴聴取することが大切である.また,性行為に伴って生じる頭痛は一般に経過良好なprimary headache associated with sexual activityとして知られているが,本症例のような脳動脈解離を鑑別する必要がある.
著者
渡辺 光太郎 藤堂 謙一 奥野 龍禎 佐々木 勉 望月 秀樹 岡崎 周平 谷口 茉利子 柿ヶ野 藍子 北野 貴也 秀嶋 信 石倉 照之 中野 智仁 神野 隼輝
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
2019

<p>要旨:可逆性脳血管攣縮症候群(RCVS)は稀ながら周産期脳卒中の原因として重要な疾患である.症例は37 歳の初産婦,妊娠40 週に緊急帝王切開で第一子を出産した.産褥3 日目に,頭痛,めまい,左手の使いにくさが出現し,当院に搬送された.頭部MRI で左小脳半球と橋に急性期脳梗塞,右前頭葉に皮質下出血を認めた.来院時のMRA では主幹動脈に異常を認めなかったが,第8 病日に脳底動脈・両側椎骨動脈に高度狭窄が新たに出現し,basi-parallel anatomical scanning(BPAS)および3 dementional-T1 weighted imaging(3D-T1WI)の所見から血管攣縮と考えられた.カルシウム拮抗薬で治療を行い,次第に狭窄は改善し,数カ月の経過で正常化した.本例では,MRA に加え,BPAS および3D-T1WI を経時的に撮影することにより,非侵襲的にRCVS の診断が可能であった.</p>
著者
石井 淳子 山本 司郎 吉村 元 藤堂 謙一 川本 未知 幸原 伸夫
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.165-170, 2015 (Released:2015-03-17)
参考文献数
26
被引用文献数
2 5

症例は82歳女性.呼吸困難で入院し,白血球17,700/μl,好酸球52%(9,204/μl),好酸球増多をおこす基礎疾患をみとめず,特発性好酸球増加症候群(hypereosinophilic syndrome; HES)と診断した.第6病日に左上下肢麻痺が出現し,頭部MRIで両側大脳半球分水嶺領域・小脳に散在性多発微小脳梗塞をみとめた.心エコーで左室壁全周性に血栓をみとめ,Löffler心内膜心筋炎合併による左室内血栓からの多発脳塞栓症であると考えた.抗凝固およびプレドニゾロン内服開始後,脳梗塞の再発はなかった.HESの合併症として脳梗塞を呈した際は,心内膜心筋障害を評価し早期治療介入が必要である.