著者
古賀 政利 井上 学 園田 和隆 田中 寛大 塩澤 真之 岡田 敬史 池之内 初 福田 哲也 佐藤 徹 猪原 匡史 板橋 亮 工藤 與亮 山上 宏 豊田 一則
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
pp.10776, (Released:2020-03-30)
参考文献数
46
被引用文献数
3 1

要旨:脳梗塞の診断にはCT もしくはMRI による画像評価が必須である.再開通療法の可能性があれば速やかに最低限必要な画像評価で再灌流療法の適応を決定することが重要である.2018 年に改訂された米国のガイドラインでは,来院から20 分以内に画像診断を行うことが推奨されたが,わが国のガイドラインには画像診断までの時間の推奨はない.わが国では普及率が高いMRI で急性期脳梗塞を評価している施設が多い.機械的血栓回収療法の適応判定には脳実質の評価に引き続き速やかな頭頸部血管評価が必要である.米国では発症6 時間超の脳梗塞に対してCT もしくはMRI を使用した脳虚血コア体積や灌流異常の評価による機械的血栓回収療法の適応を推奨しているが,わが国では灌流画像評価や迅速解析に対応した自動画像解析ソフトウェアが普及していない.急性期脳梗塞に対する適切な再灌流療法を行うための,わが国の医療環境にあわせた画像診断指針が必要であろう.
著者
吉村 元 今井 幸弘 別府 美奈子 尾原 信行 小林 潤也 葛谷 聡 山上 宏 川本 未知 幸原 伸夫
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.48, no.10, pp.713-720, 2008 (Released:2008-12-01)
参考文献数
29
被引用文献数
4 7

症例は76歳男性である.インフルエンザA型感染症発症直後に高度の意識障害を呈し,その後急激にDICやショック,多臓器不全も合併した.インフルエンザ脳症(IAE)と診断し,オセルタミビル投与,ステロイドパルス療法を施行するも効果無く,発症から24時間強で死亡した.剖検では大脳に著明な浮腫とアメーバ様グリアのびまん性増加をみとめたが,炎症細胞浸潤は無かった.また,インフルエンザウイルスA・H3香港型が剖検肺から分離され,保存血清中のIL-6は35,800pg/mlと著明高値であった.本症例の臨床経過,検査所見,病理所見は小児IAE典型例と同様であり,成人でも小児と共通した病態機序でIAEをきたしうる.
著者
吉村 元 山上 宏 藤堂 謙一 川本 未知 幸原 伸夫
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.33, no.5, pp.501-505, 2011 (Released:2011-09-27)
参考文献数
20

:症例は生来健康な22歳男性.性交後に右後頭部痛と顔面を含む左半身感覚障害,左上同名性四分盲を生じ,頭部MRIで右後頭葉と右視床に脳梗塞巣,頭部MRAにて右後大脳動脈にpearl & string signを認めた.性交を契機とした後大脳動脈解離による脳梗塞と診断し,抗血小板薬による保存的加療を行った.経過は良好で,クモ膜下出血の合併や脳梗塞再発は認めず,MRA上右後大脳動脈の壁不整所見も経時的に改善した.脳動脈解離は若年性脳梗塞の原因として重要であるが,性交が誘因となることもあり,頭痛や神経症状発症時の状況を詳しく病歴聴取することが大切である.また,性行為に伴って生じる頭痛は一般に経過良好なprimary headache associated with sexual activityとして知られているが,本症例のような脳動脈解離を鑑別する必要がある.
著者
東田 京子 田中 智貴 山上 宏 泊 晋哉 福間 一樹 奥野 善教 阿部 宗一郎 長束 一行 豊田 一則 猪原 匡史
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.217-222, 2018 (Released:2018-04-25)
参考文献数
17
被引用文献数
3 3

脳卒中後てんかんの大規模研究は少なく,一定のコンセンサスが得られていない.今回,本邦での脳卒中後てんかんの診療実態を明らかにすることとした.2015年2~5月の脳梗塞治療症例数上位500施設を対象に患者数,検査,治療について,計14問のアンケートを依頼し,189施設から回答が得られた.てんかん入院症例の39%に脳卒中既往があった.検査については頭部MRIや脳波検査はそれぞれ99,97%の施設で施行されていたが,検査陽性率は低値であった.治療については発作の再発抑制にはカルバマゼピン,バルプロ酸,レベチラセタムの順に第1選択薬とされていた.