著者
小口 正義 藤森 愛子 小口 はるみ 跡部 治 永田 和也 両角 和雄 藤森 洋子 立花 直樹 蜂谷 勤
出版者
公益財団法人 医療科学研究所
雑誌
医療と社会 (ISSN:09169202)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.97-105, 2010 (Released:2010-07-28)
参考文献数
14
被引用文献数
3 2

抗菌薬適正使用は感染患者の確実かつ安全な治癒,耐性菌出現と蔓延化の防止,および医療費の効率的運用の観点から対処するとされ,特に抗菌薬の使用法管理は経済的にも重要な問題となっている。そのため抗菌薬の使用法管理としての対策(抗MRSA薬・カルバペネム系薬の使用申請制度,監視制度,警告通知制度),DPC制度導入などがどの様に薬剤費に影響したかを調査・分析した。その結果,抗菌薬の総使用量は調査期間中ほぼ一定であったが,カルバペネム系薬の使用量,および抗菌薬の総使用金額は半減した。さらに平均在院日数も減少した。これらのことから当院の抗菌薬適正使用の取り組みにより,スペクトラムの広域な抗菌薬から狭域な抗菌薬への変更,および高価な抗菌薬から安価な製品への置き換えなど,適切な抗菌薬の選択が進んだものと考えられた。抗菌薬適正使用による抗菌薬の使用法管理は,薬剤費に大きなコスト削減効果を及ぼしていることがわかった。
著者
吉川 徹 北島 洋樹 橋爪 絢子 藤森 洋子 池崎 陽子 松田 晋哉
出版者
公益財団法人大原記念労働科学研究所
雑誌
労働科学 (ISSN:0022443X)
巻号頁・発行日
vol.89, no.3, pp.77-88, 2013 (Released:2015-01-25)
参考文献数
29
被引用文献数
2

本研究は新規開発された「止血弁つき安全装置つき静脈留置針(以下,留置針A)」の末梢静脈カテーテル留置手技における心理的負担軽減効果について,①留置針Aを利用している医療従事者536名への質問紙調査,②従来針と留置針Aの作業分析による比較により明らかにした。その結果,73.0%の使用者が留置針Aの使用は患者のケアと安全にとって効果的であり,82.3%が医療従事者の安全にとって効果的だと回答した。止血弁があることで従来針より末梢静脈ルート確保手技がしやすくなっていることが明らかとなった。作業分析から,留置針Aは従来針より非利き手の「押さえる」行為の平均動作時間が7秒短縮され,非利き手の「離す」,「持つ」の動作は2秒増加していた。止血弁により,非利き手の自由度を確保したことが,作業の余裕を生み,血液曝露による不安を軽減したものと考えられた。一方,止血弁の存在をうっかり忘れてしまうことによる止血弁解除後の血液漏れなどの事例も報告されており,従来針に新たな性能が付加された器材の導入には別の血液曝露リスクももたらされることも確認された。(図2,表5)