著者
新井田 拓也 脇山 義史 高田 兵衛 谷口 圭輔 藤田 一輝 コノプリョフ アレクセイ
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会研究発表会要旨集
巻号頁・発行日
pp.360, 2021 (Released:2021-12-30)

本研究では,河川における137Cs動態および海域への影響を明らかにすることを目的として、福島県浜通り地域の3河川の下流域において出水時の採水を行い,懸濁態・溶存態137Csの濃度変化を記述するとともに,懸濁物からの137Cs溶脱を含めて海域への137Cs移行量を求めた.新田川原町地点,請戸川幾世橋地点,高瀬川高瀬地点において、2019年9月9~10日,2020年7月14~22日,2020年7月28~30日の出水イベント時に採水を行い、懸濁態・溶存態137Csの濃度を測定し、懸濁態137Cs流出量・溶存態137Cs流出量および懸濁物からの137Cs溶脱量を推定し,海域への137Cs移行量を求めた.懸濁物の137Cs濃度はいずれの河川においても有意な正の相関(p <0.05)を示し,溶存態137Cs濃度は新田川と請戸川で有意な正の相関(p <0.05) を示した.137Cs流出量は新田川で6.6~24 GBq,請戸川で1.9~8.8 GBq,高瀬川で2.8~13 GBqであった。このうち,懸濁態137Csからの溶脱量は0.19~2.8 GBqであり,溶存態として流出する137Csの量の0.8~15倍の値となった.海域への移行を考える上でも,懸濁態137Csの動態の理解が重要であることがわかった.
著者
國頭 恭 諸 人誌 藤田 一輝 美世 一守 長岡 一成 大塚 重人
出版者
土壌微生物研究会
巻号頁・発行日
vol.73, no.2, pp.41-54, 2019 (Released:2020-04-09)

2008年のリン価格の高騰以降,農地に蓄積した「legacy P」の有効化を試みる研究が多くされている。このlegacy Pの有効化は,リン資源枯渇の問題だけでなく,湖沼の富栄養化や植物病害を抑制する上でも重要である。土壌のリンの可給化に寄与する因子としては,アーバスキュラー菌根菌が最もよく研究されているが,ここでは効果が明瞭でない,あるいはあまり研究されていない,リン溶解菌,ホスファターゼ,微生物バイオマスリン,土壌の還元化に関する基礎的情報を提供した。いずれも,いまだ基礎的な知見すら不足しており,すぐに実用的に利用することは困難である。しかし,実際に土壌中で重要な役割を果たしており,農地に蓄積したリンの可給性を規定する仕組みを理解するうえでも,これらに関する理解の深化は不可欠である。またlegacy Pを有効利用するためにリン減肥をする際は,これまでよりもさらに精確なリン可給性の評価が必要となる。その場合,化学的評価法だけではなく,微生物バイオマスリンや土壌酵素の資源配分モデルといった生物指標の利用も有用である可能性があり,今後検証する必要がある。