著者
恩田 裕一 高 翔 谷口 圭輔
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2018年大会
巻号頁・発行日
2018-03-14

2011年の東日本大震災に起因して東京電力福島第一原子力発電所事故が起きたことにより,福島の周辺環境において放射性核種134Csや137Csが検出された.環境省は2011年8月から公共用水域について環境モニタリング調査を実施しており,2011-2012年環境省で取った底質サンプルは,多くの地点において減少傾向がみられるものの,増減にばらつきが非常に多く,場所によっては増加する地点も報告されている。従来の研究成果より,河川等の環境試料の時系列変化を解析する場合に,粒径補正を行うことが必要と考えられる。そこで,本研究では,それらの底質サンプルの粒径を分析することにより,粒度補正を施した後に河川の底質の実効減衰速度を考察した。 本研究によって,粒径補正前に見られて大きな変動は,ほとんど見られなくなった。また,時間とともに濃度が上昇している地点が,25地点から,7地点に減少した。底質における89個地域の減衰速度(λ)は平均1.15となり,河川底質の濃度減少傾向について解明することができた。さらに,福島県内の浮遊砂測定結果と比較すると,底質におけるCs濃度を粒径補正し懸濁態濃度を推定したところ,24地点の内,14地点で減衰変化が一致した。このことから,セシウムが河川中を流下する際の吸脱着により,多くの地点で懸濁態,底質,溶存態が平衡状態となっていることが推定された。
著者
新井田 拓也 脇山 義史 高田 兵衛 谷口 圭輔 藤田 一輝 コノプリョフ アレクセイ
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会研究発表会要旨集
巻号頁・発行日
pp.360, 2021 (Released:2021-12-30)

本研究では,河川における137Cs動態および海域への影響を明らかにすることを目的として、福島県浜通り地域の3河川の下流域において出水時の採水を行い,懸濁態・溶存態137Csの濃度変化を記述するとともに,懸濁物からの137Cs溶脱を含めて海域への137Cs移行量を求めた.新田川原町地点,請戸川幾世橋地点,高瀬川高瀬地点において、2019年9月9~10日,2020年7月14~22日,2020年7月28~30日の出水イベント時に採水を行い、懸濁態・溶存態137Csの濃度を測定し、懸濁態137Cs流出量・溶存態137Cs流出量および懸濁物からの137Cs溶脱量を推定し,海域への137Cs移行量を求めた.懸濁物の137Cs濃度はいずれの河川においても有意な正の相関(p <0.05)を示し,溶存態137Cs濃度は新田川と請戸川で有意な正の相関(p <0.05) を示した.137Cs流出量は新田川で6.6~24 GBq,請戸川で1.9~8.8 GBq,高瀬川で2.8~13 GBqであった。このうち,懸濁態137Csからの溶脱量は0.19~2.8 GBqであり,溶存態として流出する137Csの量の0.8~15倍の値となった.海域への移行を考える上でも,懸濁態137Csの動態の理解が重要であることがわかった.
著者
恩田 裕一 谷口 圭輔 脇山 義史
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
JpGU-AGU Joint Meeting 2017
巻号頁・発行日
2017-03-10

福島原発事故後5年間のモニタリングによって,福島河川中の放射性セシウム濃度は激減した。本発表では,その低下要因および濃度がチェルノブイリより1桁低いことをを紹介する。また,除染の効果についても算定したのでその結果も報告する。