- 著者
-
小田 敦子
野田 明
武田 雅子
藤田 佳子
- 出版者
- 三重大学
- 雑誌
- 基盤研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 2003
平成15年6月に海外共同研究者アニタ・パターソンを交えての第1回の研究会に始まり、毎月の研究会を持ち、15年から16年度はエマスンのエッセイを17年度は詩を中心にテキストの精読と、共同研究者がそれぞれ専門とするエマスンの同時代の作家・詩人の観点からの議論を続けた。共同研究会は難解なエマスンのテキストを読む効果的な方法で、エマスンのテキストの19世紀における受容の実態、同時代人たちはエマスンを「マスター」と感じ、エマスンに批判的であると考えられているホーソーンやあまり関係づけられることのないディキンスンでさえ、彼の言説に注目し影響を受けていたことがわかった。研究代表者の小田は、平成16年度にアメリカのホーソーン学会に採択された研究発表"The Old Manse and the Concord as Emersonian Symbol"や、アメリカ文学会関西支部大会シンポジアムでの発表「エマスンの‘The Master Word'」で、エマスンがホーソーンに与えた影響を指摘した。野田は、エマスンがメルヴィルに与えた影響について、特に、文学の独創性や文学テキストの引用行為に対する両作家の姿勢・考え方に焦点を合わせることで検証しようとした。武田は、紀要に「ディキンスンの捉えたエマスン-伝記的事実に見る」を発表したが、これを踏まえて、エマスンとディキンスンの関係についての先行の研究をまとめることで、エマスンの影響を考察した。藤田は、当時の興味深い問題、科学と文学のかかわりの点からエマスンとソローを考察しエマスンの特性を論じると共に、この面に於いてエマスンがソローに及ぼした影響を明らかにした。パターソンは、ホイットマンとエマスンとの間の両義的な感情に関するこれまでの研究を精査した上で、彼らの相違点にもエマスンがホイットマンに教えたものの影を認めた。