著者
下澤 達雄 穆 勝宇 藤田 敏郎
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.250-254, 2012-04-01 (Released:2013-04-01)
参考文献数
12

塩分摂取により高血圧が発症するメカニズムには遺伝的背景,ホルモン環境,腎機能などが関与することが知られていたが,最近,β2アドレナリン受容体刺激を介してヒストンがアセチル化されることが明らかになり,その結果グルココルチコイド受容体の作用が亢進し,腎臓でナトリウムを再吸収するチャネル (NCC) の発現が亢進することがそのメカニズムの一つであることが示された.得られた成果がエピジェネティクス制御を介した新たな治療法の開発につながることが期待される.
著者
藤田 敏郎
出版者
筑波大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1986

含硫アミノ酸タウリンは, 生体内に広く分布するアミノ酸であり, また魚貝類などに豊富に含まれているが, タウリンは神経組織内でneuromodulatorとして働き, 神経末端からのノルエピネフリン遊出を抑制することが, in vitroの実験にて証明されている. そこで高血圧症における食事療法の一つとして含硫アミノ酸タウリンに着目し, タウリン摂取の降圧効果を明らかにするために, その降圧作用機序における交感神経系の役割について基礎的検討を行った. その結果, deoxycorticosterone acete(DOCA)-食塩高血圧ラットにおいて, タウリンの投与が高血圧の発症を抑制するとともに血圧上昇後にも降圧をもたらし, その機序に交感神経系の抑制が重要な役割を果していることを報告した. さらに, タウリン投与ラットの視床下部ではタウリン含量の著明な増加が認められた.近年タウリンは, 中枢神経系において神経機能調節因子として働いている可能性が示唆されていることから, タウリンの降圧作用ならびに交感神経抑制作用は中枢神経系の変化を介する可能性が考えられる. さらに最近, クロニジンなどの中枢性交感神経抑制剤の降圧作用機序に, 内因性オピオイドペプチドの賦活化が関与するとの報告がなされ注目されている. 本研究はDOCA-食塩高血圧ラットにおけるタウリンの降圧作用機序における内因性オピオイドの役割を検討した.その結果, taurine投与群ではopiate receptor antagonistのnaloxone投与により有意な昇圧が認められたことから, taurineの降圧作用ならびに, 交感神経抑制作用は, 一部脳内opioid活性の賦活化を介する可能性が推察された.
著者
安東 克之 伊東 康 藤田 敏郎
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.16, no.3, pp.241-246, 1984-03-25 (Released:2013-05-24)
参考文献数
32

甲状腺機能亢進症における循環動態異常は交感神経充進状態に類似している. そこで,本症における交感神経系の役割を調べる目的で, 7名の本症患者にプロプラノロール 60mg/日を 3 日間投与し, 循環動態, ホルモン動態の変化について検討した. プロプラノロール投与により, 心拍出量, 心拍数は有意の減少を認めたが, 一回拍出量は変化しなかった. さらに, 血漿ノルエピネフリン濃度も有意に低下し, 血漿ノルエピネフリン濃度と心拍出量の間には有意の正の相関が認められた.血漿レニン活性も有意の減少を示した. 以上のことから, プロプラノロールは甲状腺機能亢進症の循環動態異常を改善し, これには効果器のβ受容体阻害作用に加えて, 中枢神経系を介するノルエピネフリンの放出の抑制やシナプス前 β 受容体遮断によるノルエピネフリン遊出阻害作用も重要な役割を果していることが示唆された. また, レニンーアンジオテンシン系の関与も考えられた.
著者
中尾 睦宏 野村 忍 久保木 富房 末松 弘行 下澤 達雄 藤田 敏郎
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.71-78, 1995

高血圧患者10名を対象にパイオフィードバック療法による白衣高血圧症の降圧効果の検討を行なった。治療前の自己血圧値と医師測定値が収縮期において25mmHg以上差があった者を白衣高血圧群(以上W群;5名),それ以外の者をN群(5名)とした。治療は週1回計4回行なった。治療による自己血圧の低下はわずかであったが,医師測定血圧は,収縮期でW群18mmHg,N群11mmHg,拡張期圧でW群11mmHg,N群8mmHg低下し,W群の降圧が著しかった.また,暗算負荷テストによる血圧上昇もW群の方が治療による抑制が著しかった。本治療法にストレスによる昇圧反応を抑制する効果があり,白衣高血圧によい適応があることが示唆された。