著者
伊藤 勅子 小松 大介 小山 洋 坂井 威彦 藤田 知之 中田 岳成 熊木 俊成 青木 孝學 春日 好雄
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.63, no.8, pp.1853-1856, 2002-08-25 (Released:2009-01-22)
参考文献数
15

甲状腺癌のほとんどを占める乳頭癌は分化度の高いものが多く,早期発見および適切な外科治療により治癒が期待できる.今回われわれは, 1997年4月から2002年3月までの5年間の当院人間ドックにおける触診での甲状腺癌検診の成績および外科治療を含めた臨床的検討を行った.発見率は総受診者25,139人中58人(0.23%)で,男性は17,443人中11人(0.06%),女性は7,696人中47人(0.61%)であった.最大腫瘍径が1cm以下のいわゆる微小癌は25例(43%)であった.組織型は乳頭癌は56例(96%)で,濾胞癌,髄様癌はそれぞれ1例(2%)であった.リンパ節転移陽性は27例(47%)に認められた.いずれも手術時合併症はなく現在再発を認めていない.人間ドックでの早期発見により侵襲,合併症が少ない治療が可能で患者のQOLは向上することが期待され,検診の意義は十分にあると考えられる.
著者
坂井 威彦 藤田 知之 草間 啓 熊木 俊成 青木 孝學 工藤 道也 春日 好雄
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.61, no.5, pp.1155-1158, 2000-05-25 (Released:2009-02-10)
参考文献数
17

1家系, 3世代に, 5例の甲状腺乳頭癌を認めた家系を経験したので報告する.発端者は21歳の大学生であり,その母親が8年前に甲状腺乳頭癌で,他医にて外科治療をされていた.発端者と同時期に, 25歳の実兄が甲状腺乳頭癌にて当科を紹介されて受診したので,家系調査を行った.その結果,母親の妹と,母方の祖母の2人に甲状腺乳頭癌が認められた.発端者の母親は,甲状腺内再発と両側肺転移を認めた. 5人の患者のうち4人に当科で外科治療が施行された.外科治療は甲状腺全摘が望ましいとされているが,合併症を防ぐため,準全摘とした.今後は他の発症していない家族の検診を続けるとともに,手術患者の局所再発,遠隔転移に注意していく必要があると考えられた.
著者
福嶌 教偉 藤田 知之 小川 真由子 北村 惣一郎
出版者
一般社団法人 日本臓器保存生物医学会
雑誌
Organ Biology (ISSN:13405152)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.29-36, 2017 (Released:2017-03-31)
参考文献数
12
被引用文献数
1

After the world first use of fresh aortic valve homografts transplanted into the descending thoracic aorta was reported in 1956, preservation methods have been investigated and the cryopreservation technique is currently used worldwide. In early 1990s, the cryopreservation technique for homograft was introduced to Japan and the local heart valve bank was established in Nara. Although organ procurement has been regulated by The Organ Transplantation Act (brain-dead donors since 1997, donors after cardiac death since 1979), there has been no law or governmental procurement network (except for cornea) in Japan. Since the late 1980s, some university hospitals have developed original banks. Finally, in 2001 guidelines for tissue procurement were established by The Japanese Society of Tissue Transplantation and Japan Tissue Transplant Network (JTTN) to coordinate tissue harvesting. Five tissue banks were joined to the tissue transplant network (skin in one, heart valves in two, and bone in two). In 2016, homograft implantation surgery was finally covered by insurance and the number of these surgery will increased in near future.
著者
簗瀬 正伸 瀬口 理 中西 道郎 渡邊 琢也 中島 誠子 黒田 健輔 望月 宏樹 福嶌 五月 藤田 知之 福嶌 教偉
出版者
一般社団法人 日本移植学会
雑誌
移植 (ISSN:05787947)
巻号頁・発行日
vol.55, no.Supplement, pp.351_2, 2020 (Released:2021-09-18)

背景:心移植後に行う心蔵リハビリテーション(心リハ)によって自然回復以上の運動耐容能を得ることができる。しかしながら、より心リハの効果が得られるレシピエント及びドナーの要因は明らかではない。方法:対象は2010年4月から2016年11月までに当院にて心移植術を受け、監視下の心リハ開始時と3ヶ月後に心肺運動負荷試験を実施した成人41例。レシピエント要因(年齢・基礎心疾患・人工心臓のタイプ・栄養状態など)とドナーの要因(年齢・LVEF・心停止の既往・虚血時間・高用量カテコラミン使用の有無など)による最大酸素摂取量の変化の検討した。結果:レシピエントの平均年齢は37.4歳。男性36名。40例は補助人工心臓補助下に心臓移植を待機し、平均待機日数は1085日であった。最大酸素摂取量は平均18.1から22.7ml/kg/minと心リハ前後で有意に改善した。レシピエント要因では年齢の若い群(50歳未満)と、3ヶ月後のリンパ球数が多い群(1200以上 vs 1200未満、前:20.4 vs 16.8 p<0.01, 後:25.1 vs 21.9ml/kg/min p=0.021)で心リハ前後の最大酸素摂取量が有意に高かった。ドナー要因で最大酸素摂取量の変化に影響を与えるものは認めなかった。結語:心移植後早期から積極的な栄養介入によって最大酸素摂取量のさらなる増加が得られる可能性が示唆された。