著者
田村 まどか 福嶌 教偉 白石 公
出版者
特定非営利活動法人 日本小児循環器学会
雑誌
日本小児循環器学会雑誌 (ISSN:09111794)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.100-109, 2017-03-01 (Released:2017-05-13)
参考文献数
9

補助人工心臓(VAD)の開発と承認などにより,移植待機中の患者の状態が多様化している今日の小児心臓移植医療の現場において,移植待機期間中,そして移植後も子どもとその家族への心理社会的支援の提供は重要である.医療環境下にある子どもや家族に,心理社会的支援を提供する専門職であるChild Life Specialist(CLS)は,小児心臓移植医療の現場において,①治癒的遊びと環境の提供,②医療体験への心の準備のサポート,③検査・処置中の心理的サポート,④退院・復学支援,⑤きょうだい・家族へのサポート,⑥グリーフ・サポートなどを通して,子どもたちが主体的に医療に臨めるように医療チームの一員として活動している.CLSを含む移植医療に関わる多職種が,チームで連携し協働することにより,子ども一人ひとりのニーズに合った支援の提供と,その家族全体の包括的な支援が心臓移植待機中,そして移植後も継続して可能になると考える.
著者
剣持 敬 福嶌 教偉 肥沼 幸 牛込 秀隆 久保 正二
出版者
一般社団法人 日本移植学会
雑誌
移植 (ISSN:05787947)
巻号頁・発行日
vol.49, no.6, pp.393-401, 2014-12-10 (Released:2014-12-26)
参考文献数
21

The number of organ transplantations from donation from brain-dead (DBD) donors has recently increased because of the enforcement of the revised Organ Transplantation Law in 2010 in Japan. More than 500 kidney transplant recipients, more than 30 liver transplant recipients, and two recipients of simultaneous pancreas and kidney transplantations have already experienced pregnancy and childbirth in our country. Along with the increase of DBD donors, pregnancy and childbirth must be an important issue for the recipients of heart and lung transplantations as well as kidney and liver transplantations. The Japan Society for Transplantation has decided to make a guideline for pregnancy and childbirth in patients after organ transplantation.The contents of this guideline are planned to be classified into two chapters. One concerns common problems after organ transplantations, such as the use of drugs, including immunosuppressive agents and vaccines. The second chapter is planned to focus on problems particular to reach organ transplantation. Furthermore, this guideline will include the problems of living donors for kidney and liver transplantations and male recipients who underwent organ transplantations.
著者
松宮 護郎 松田 暉 澤 芳樹 福嶌 教偉 西村 元延 市川 肇 舩津 俊宏
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

重症心不全でLVAD装着術後に自己心機能が改善し左室補助循環装置(LVAS)離脱が可能となる症例、いわゆる"Bridge to Recovery"が報告されているが、その心機能を改善させるための手段として細胞移植が応用できないかを検討することを目的として本研究を開始した。1.拡張型心筋症ハムスターに対する筋芽細胞シート移植拡張型心筋症ハムスターの27週齢時に、筋芽細胞シートを2層化して移植し、経時的に心機能を測定し、心筋構造蛋白の免疫染色を行った。筋芽細胞シートを移植した群は、従来の針による細胞移植法と比較して、有意な心機能向上効果を認め、左室壁の肥厚化を認めた。また、dystrroglycan, a, d-sarcoglycanの濃染性を認めた。また、筋芽細胞シート移植群は他群と比較して、生命予後は延長した。2.拡張型心筋症モデル犬に対する筋芽細胞シート移植ビーグル成犬に心室ペーシングを続け、拡張型心筋症モデルを作成した。ペーシング開始後4週後に自己筋芽細胞シートを心表面に移植し心機能の経時的変化を測定し、非移植群と比較した。シート移植群は有意に駆出率の増加、および内腔の縮小、壁厚の増大を認めた。また、組織学的検討では移植群において有意な心筋線維化抑制、apoptosis抑制効果を認めた。3.虚血性心筋症モデルブタに対する筋芽細胞シート移植ミニブタの冠状動脈左前下行枝をアメロイドリングを用いて結紮し、虚血性心筋症モデルを作成した。骨格筋筋芽細胞シートを移植し、心機能を評価した。シート移植群において他群に比して有意に良好な左室収縮能、壁厚の増大、内腔の縮小を認めた。またFDG-PETにて心筋の糖代謝能改善が認められた。これらのメカニズムを検証するにあたり、電子顕微鏡、免疫染色、RT-PCR法、FDG-PET法、MEDシステム等を駆使し、構造、因子、遺伝子、代謝、電位活性等の多方面からの検討を行った。
著者
福嶌 教偉 藤田 知之 小川 真由子 北村 惣一郎
出版者
一般社団法人 日本臓器保存生物医学会
雑誌
Organ Biology (ISSN:13405152)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.29-36, 2017 (Released:2017-03-31)
参考文献数
12
被引用文献数
1

After the world first use of fresh aortic valve homografts transplanted into the descending thoracic aorta was reported in 1956, preservation methods have been investigated and the cryopreservation technique is currently used worldwide. In early 1990s, the cryopreservation technique for homograft was introduced to Japan and the local heart valve bank was established in Nara. Although organ procurement has been regulated by The Organ Transplantation Act (brain-dead donors since 1997, donors after cardiac death since 1979), there has been no law or governmental procurement network (except for cornea) in Japan. Since the late 1980s, some university hospitals have developed original banks. Finally, in 2001 guidelines for tissue procurement were established by The Japanese Society of Tissue Transplantation and Japan Tissue Transplant Network (JTTN) to coordinate tissue harvesting. Five tissue banks were joined to the tissue transplant network (skin in one, heart valves in two, and bone in two). In 2016, homograft implantation surgery was finally covered by insurance and the number of these surgery will increased in near future.
著者
簗瀬 正伸 瀬口 理 中西 道郎 渡邊 琢也 中島 誠子 黒田 健輔 望月 宏樹 福嶌 五月 藤田 知之 福嶌 教偉
出版者
一般社団法人 日本移植学会
雑誌
移植 (ISSN:05787947)
巻号頁・発行日
vol.55, no.Supplement, pp.351_2, 2020 (Released:2021-09-18)

背景:心移植後に行う心蔵リハビリテーション(心リハ)によって自然回復以上の運動耐容能を得ることができる。しかしながら、より心リハの効果が得られるレシピエント及びドナーの要因は明らかではない。方法:対象は2010年4月から2016年11月までに当院にて心移植術を受け、監視下の心リハ開始時と3ヶ月後に心肺運動負荷試験を実施した成人41例。レシピエント要因(年齢・基礎心疾患・人工心臓のタイプ・栄養状態など)とドナーの要因(年齢・LVEF・心停止の既往・虚血時間・高用量カテコラミン使用の有無など)による最大酸素摂取量の変化の検討した。結果:レシピエントの平均年齢は37.4歳。男性36名。40例は補助人工心臓補助下に心臓移植を待機し、平均待機日数は1085日であった。最大酸素摂取量は平均18.1から22.7ml/kg/minと心リハ前後で有意に改善した。レシピエント要因では年齢の若い群(50歳未満)と、3ヶ月後のリンパ球数が多い群(1200以上 vs 1200未満、前:20.4 vs 16.8 p<0.01, 後:25.1 vs 21.9ml/kg/min p=0.021)で心リハ前後の最大酸素摂取量が有意に高かった。ドナー要因で最大酸素摂取量の変化に影響を与えるものは認めなかった。結語:心移植後早期から積極的な栄養介入によって最大酸素摂取量のさらなる増加が得られる可能性が示唆された。
著者
福嶌 教偉
出版者
特定非営利活動法人 日本小児循環器学会
雑誌
日本小児循環器学会雑誌 (ISSN:09111794)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.403-414, 2014-07-01 (Released:2014-08-01)
参考文献数
12
被引用文献数
1 1

心臓移植は,すでに欧米では末期的心および呼吸不全患者の外科的治療として定着し,外科的治療として確立しつつある.1997年に施行された臓器移植法は,6歳未満の脳死判定基準がないこと,15歳以下の臓器提供の意思が認められないことから,小児は心臓移植を受けるチャンスは極めて低く,多くの小児が海外で心臓移植を受けていた.このような現状を打開するために,改正臓器移植法が2010年7月17日に施行され,脳死臓器提供者の年齢制限がなくなった.その結果,2013年末までに6名の児童(6歳未満1名,10〜16歳3名,15〜17歳2名)の脳死臓器提供があり,6名の児童が国内で心臓移植を受けることができたが,身体の小さな小児や,拘束型心筋症など医学的緊急度2の状態で,心臓移植を受ける必要のある小児は,いまだに海外に一縷の望みをかけて渡航しているのが現状である.ここでは,わが国の小児心臓移植の現状を紹介するとともに,小児心臓移植の適応,移植後の管理について概説する.