- 著者
-
竹林 正樹
藤田 誠一
吉池 信男
- 出版者
- 日本健康教育学会
- 雑誌
- 日本健康教育学会誌 (ISSN:13402560)
- 巻号頁・発行日
- vol.26, no.1, pp.28-37, 2018-02-28 (Released:2018-02-28)
- 参考文献数
- 25
目的:小児肥満が深刻な青森県下北地域において,下北ブランド研究所では,母親と子が健康意識を大きく変えなくても小児肥満を予防できる食環境の整備を目的とした健康中食のマーケティングを実施した.本稿ではPDCAサイクルを用いた評価内容を示した.事業/活動内容(PLAN・DO):保育園保護者へのインタビュー(n=11)や質問紙調査(n=441)等から,当地域では親子向け健康中食の市場創出機会ありと判断した(推定市場規模6,200万円).ターゲットを「中食の摂取頻度が高く,子にヘルシー中食を食べさせたいと考える母親」,ポジショニングを「親しみ」と「手軽さ」と設定した.保育園給食メニューを中心に5品を発売した.事業/活動評価(CHECK):業者は健康中食を安定的に製造せず,ターゲット層の利用は推定市場規模の0.1%で,当地域での小児肥満予防に与える影響は極めて限定的であったと推測された.消費者ニーズがあったにもかかわらず業者を製造へと動かせなかった原因を「業者の心理を十分考慮しないまま戦略設計し,業者に事業の魅力が伝わらなかったため」と分析した.今後の課題(ACT):改善策として,業者と消費者が直接対話できる場を設定した.この策はナッジ(強制を伴わずに行動を促す仕組みやシグナル)によるものであり,業者は健康中食への愛着が高まり,製造へと一歩踏み出すことが期待される.