著者
須藤 紀子 澤口 眞規子 吉池 信男
出版者
公益社団法人 日本栄養士会
雑誌
日本栄養士会雑誌 (ISSN:00136492)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.349-355, 2010 (Released:2011-12-27)
参考文献数
41

災害時の栄養・食生活支援活動の参考となるように、被災者の栄養リスクについての知見をまとめた。被災のようなライフイベント発生時には、ストレスによる食欲低下と共に、食事やその準備にかけられる時間の減少、調理意欲の低下によって、食事摂取量が減少する。しかし、時間や調理意欲のなさに、ファストフードやインスタント食品を選択することによって対応するとエネルギー摂取量は増加する。ストレスが慢性化すると、ストレスからの回復をめざして食欲は増進する。ストレス対処行動として菓子類の摂取が増加するので、摂り過ぎに注意が必要である。ストレス負荷時は脳のエネルギー源となる糖質と必須アミノ酸を含む良質なたんぱく質を十分に摂取する必要がある。微量栄養素では、生鮮食品を含む多様な食品を摂取することで、ビタミンB1、ビタミンB6、ビタミンC を確保する。特に平常時から不足しがちな鉄とカルシウムには注意が必要である。
著者
竹林 正樹 小山 達也 千葉 綾乃 吉池 信男
出版者
日本健康教育学会
雑誌
日本健康教育学会誌 (ISSN:13402560)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.240-247, 2022-08-31 (Released:2022-09-07)
参考文献数
20

目的:大学生を対象にした健康教育関連シンポジウムの案内チラシにおけるナッジ別の参加意欲の検証.方法:保健系大学生917人を無作為に3群に振り分け,健康教育関連シンポジウムの異なる3種類のチラシをメールで送信し,参加意欲を調査した.対照群のチラシは従来型のチラシをもとに詳細な情報を記載し,簡素化ナッジ群は文字数を73%削減した.EASTナッジ群はナッジの枠組みEAST(簡素化,印象的,社会的,タイムリー)に沿って,4コマ漫画や主催者の似顔絵等を記載した.結果:対照群70人,簡素化ナッジ群67人,EASTナッジ群71人(有効回答率29.1%)を解析対象とした.「参加したいが日程が合わない」「参加する」と回答した者は,対照群,簡素化ナッジ群,EASTナッジ群の順に,30.0%,40.3%,47.9%で,対照群よりEASTナッジ群が有意に高かった.チラシの感想では,対照群は「読みやすい」「すぐに読みたくなった」で他の2群より有意に低く,「不快に感じる」は簡素化ナッジ群より有意に高かった.結論:既存型のチラシは情報量の多さが参加意欲の阻害要因であり,「阻害要因の除去としての簡素化ナッジ」と「促進要因としてのタイムリーナッジ」を設計することで意欲が向上することが示唆された.本研究は実際の参加者数をアウトカムにしなかったこと等の限界があり,さらなる検証が求められる.
著者
佐田 文宏 福岡 秀興 尾崎 貴視 伊藤 善也 吉池 信男 瀧本 秀美
出版者
一般社団法人日本衛生学会
雑誌
日本衛生学雑誌 (ISSN:00215082)
巻号頁・発行日
vol.72, no.1, pp.15-19, 2017 (Released:2017-02-02)
参考文献数
26
被引用文献数
2

There are two major nationwide birth cohort studies in Japan, namely, the Longitudinal Survey of Newborns in the 21st Century conducted by the Ministry of Health, Labor and Welfare (MHLW) and the Japan Environment and Children’s Study (JECS) conducted by the Ministry of Environment. The former was a longitudinal questionnaire survey focusing on environmental and socioeconomic factors for descriptive epidemiology conducted every year since 2001 by mail. The latter was based on 15 unit centers nationwide with environmental measurements and collection of biological samples for environmental risk evaluation. Both are prospective birth cohort studies whose findings will be expected as the basis for establishing health policies. The data obtained in the former study can be used for research with permission from MHLW. To date, there have been more than ten published studies using those data. We have reviewed these studies and introduced our preliminary findings on factors affecting infant growth. Employment before delivery, educational background of parents, household income, and smoking habit of both parents have been suggested to affect infant growth. We will analyze the associations between socioeconomic factors and infant growth trajectory to elucidate the most adequate intervention for children.
著者
竹林 正樹 吉池 信男 竹林 紅
出版者
日本健康教育学会
雑誌
日本健康教育学会誌 (ISSN:13402560)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.173-181, 2021-05-31 (Released:2021-06-16)
参考文献数
20

目的:ナッジのEASTフレームワークに沿って構築した職域用体重測定促進介入のプロセス評価と報告事業内容:働く世代の肥満予防策として,3つの体重測定促進介入を構築した.全群にEasy型ナッジを採用の上,クイズ群(Attractive型),宣言群(Social型),成功回顧群(Timely型)を設計した.青森県職員(応募要件:体重測定頻度が週1回未満)を対象に1時間の集合型研修会を開催し,実施者の実施意欲と負担感,参加者満足,人件費を含む実施コストについて,インタビューと質問紙調査によるプロセス評価を行った.事業評価:研修会の実施には職員4人が携わり(解析対象者3人),参加者は83人(解析対象者78人)だった.実施者の研修前の実施意欲はクイズ群,宣言群,成功回顧群の順に高かった.実施コストは成功回顧群(263~291千円),クイズ群(207~235千円),宣言群(179~207千円)で,実施負担感もこの順だった.参加者満足はクイズ群(92.6%),成功回顧群(88.5%),宣言群(64.0%)(P=0.016)の順だった.課題:クイズ群は実施者,参加者双方の評価が高く,最も普及可能性があると推測された.人件費を含む実施コストは,事前予想した額に比べ,実際に要した額は2倍以上であった.また,実施者のナッジ普及フェーズが習得期から実践期へ変化したことが観察された.
著者
山本 茂 中森 正代 酒井 徹 武田 憲明 吉池 信男 酒井 徹 武田 憲昭 吉池 信男
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本研究は、亜鉛の栄養状態が子どもの成長や、予防接種(麻疹)による免疫の獲得を含めた感染症の罹患に与える影響について検討することを目的とした。ベトナム北西部Bac Giang省YenThe地区を代表する4村において、6ヶ月齢~2歳の乳幼児とその母親を対象とし、乳幼児の亜鉛の栄養状態、母乳および離乳食からの亜鉛摂取状況、成長発達、予防接種後の麻疹抗体価および感染症の発症について調査を実施し、栄養介入を今後実施するために有益な知見を得た。
著者
吉池信男
雑誌
The Lipid
巻号頁・発行日
vol.12, pp.281-289, 2001
被引用文献数
1
著者
竹林 正樹 藤田 誠一 吉池 信男
出版者
日本健康教育学会
雑誌
日本健康教育学会誌 (ISSN:13402560)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.28-37, 2018-02-28 (Released:2018-02-28)
参考文献数
25

目的:小児肥満が深刻な青森県下北地域において,下北ブランド研究所では,母親と子が健康意識を大きく変えなくても小児肥満を予防できる食環境の整備を目的とした健康中食のマーケティングを実施した.本稿ではPDCAサイクルを用いた評価内容を示した.事業/活動内容(PLAN・DO):保育園保護者へのインタビュー(n=11)や質問紙調査(n=441)等から,当地域では親子向け健康中食の市場創出機会ありと判断した(推定市場規模6,200万円).ターゲットを「中食の摂取頻度が高く,子にヘルシー中食を食べさせたいと考える母親」,ポジショニングを「親しみ」と「手軽さ」と設定した.保育園給食メニューを中心に5品を発売した.事業/活動評価(CHECK):業者は健康中食を安定的に製造せず,ターゲット層の利用は推定市場規模の0.1%で,当地域での小児肥満予防に与える影響は極めて限定的であったと推測された.消費者ニーズがあったにもかかわらず業者を製造へと動かせなかった原因を「業者の心理を十分考慮しないまま戦略設計し,業者に事業の魅力が伝わらなかったため」と分析した.今後の課題(ACT):改善策として,業者と消費者が直接対話できる場を設定した.この策はナッジ(強制を伴わずに行動を促す仕組みやシグナル)によるものであり,業者は健康中食への愛着が高まり,製造へと一歩踏み出すことが期待される.
著者
笠原 美香 吉池 信男 大西 基喜
出版者
日本健康教育学会
雑誌
日本健康教育学会誌 (ISSN:13402560)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.145-153, 2021-05-31 (Released:2021-06-16)
参考文献数
29

目的:青森県内と長野県内の高校生を対象とし,ヘルスリテラシー(Health Literacy: HL)に関して両県の地域差を含む実態を明らかにすること,およびHLの高低を規定する要因を明らかにすること.方法:2018年7月3日~24日に,青森県B市6校806人(公立,私立),長野県C, D市4校978人(公立のみ)の高校2年生を対象に自記式質問紙調査による横断研究を行った.調査項目は,性別,相互作用的・批判的ヘルスリテラシー(Communicative and Critical Health Literacy: CCHL),インターネット利用状況,学習面に影響すると考えられる「将来の夢」や目標を持っている,自分は「やればできる」と思う,学習意欲(勉強は好きである,保健の学習は好きである),「将来の生活習慣予測」である.各項目について地域間で比較を行った後に,重回帰分析によってCCHLが高いことと関連する因子を検討した.結果:青森県の高校生は,長野県の高校生に比べて,インターネットの使用頻度やCCHLが高かった.また,CCHLが高いことは,インターネット利用状況,「将来の夢」や目標を持っている,自分は「やればできる」と思う,保健学習が好きであること,将来,定期的な運動をする,定期的に体重管理をすると予測していることと,正の関連が見られた.結論:高校生のHL教育を推進していく上では,インターネットを利用した健康情報の活用,「将来の夢」や目標を持つこと,自分は「やればできる」と思える状況を促す教育が重要である.
著者
佐藤 ななえ 吉池 信男
出版者
公益社団法人 日本栄養士会
雑誌
日本栄養士会雑誌 (ISSN:00136492)
巻号頁・発行日
vol.54, no.11, pp.809-816, 2011 (Released:2011-12-13)
参考文献数
33
被引用文献数
1

日本人小児における咀嚼行動にかかわる食育の効果を評価する指標として、何が適切かを明らかにするため、昭和58 年~平成22 年に発表された論文について、データベース「医学中央雑誌」および「MEDLINE」を用い、系統的に収集・分析した。最終的に選択された13 件の論文を精査し、エビデンステーブルとして整理した。咀嚼行動の評価には、(1)自記式質問紙による咀嚼習慣の把握、(2)小児用簡易咀嚼回数計を用いた測定(咀嚼回数、食事に要した時間)、(3)ビデオ観察の3 種類が、咀嚼能力の評価には、(4)咬合力測定、(5)ガムを用いた咀嚼テストの2 種類が用いられていた。集団に用いる場合、これらの評価指標は、妥当性や適用性(経費、労力、時間)といった点で、それぞれ長所と短所がある。したがって、実施可能性および妥当性の許容範囲から、食育プログラムを実際に行う諸々の状況においては、(1)と(2)を組み合わせて用いる方法が最良の選択肢と考えられた。また、本論文において、筆者らは、咀嚼行動(噛まない)と咀嚼能力(噛めない)の本質的な違いを明確に示したが、小児の咀嚼にかかわる食育の適切な介入プログラムの開発においては、この2 つの点をどちらも考慮に入れる必要がある。
著者
吉池 信男
出版者
日本健康教育学会
雑誌
日本健康教育学会誌 (ISSN:13402560)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.59-67, 2022-02-28 (Released:2022-04-16)
参考文献数
22

目的:健康教育やヘルスプロモーションにおいて,人々の食行動への介入を行うことの倫理性及び効果的な手段について,社会的変化や急速に進む技術革新を踏まえて考察すること.内容:1)基本的人権としての「食べること」と介入の倫理性,2)栄養と健康を捉える視点(栄養学的観点),3)食行動を規定する様々な要因,4)ヒトの食行動の生理学的な理解,5)食行動の社会経済的な規定要因,6)デジタルトランスフォーメーション時代における新たな展開,という6つの視点から考察を行った.展望:基本的人権としての栄養や食物選択の自由を前提として,それらに何らかの介入を加えることの倫理性や社会的な正当性を考えることが必要である.また,食品企業等の経済活動に対して,国民の健康保護を目的として政府が介入を行う際には,その理論的根拠を考えつつ,食品選択に関して自己責任に委ね難い子ども等への特段の配慮が必要である.一方,デジタル技術を中心とした技術革新が急速に進む中で,新たな視点から食行動に関与する要因やメカニズムを理解し,社会におけるヘルスリテラシー促進の努力もさらに必要である.食と栄養の未来を予測しながら,新たな価値の創造につながるような健康教育やヘルスプロモーションの実践と研究を行いたいと考えている.
著者
佐藤 ななえ 吉池 信男
出版者
公益社団法人 日本栄養士会
雑誌
日本栄養士会雑誌 (ISSN:00136492)
巻号頁・発行日
vol.54, no.11, pp.809-816, 2011

日本人小児における咀嚼行動にかかわる食育の効果を評価する指標として、何が適切かを明らかにするため、昭和58 年~平成22 年に発表された論文について、データベース「医学中央雑誌」および「MEDLINE」を用い、系統的に収集・分析した。最終的に選択された13 件の論文を精査し、エビデンステーブルとして整理した。咀嚼行動の評価には、(1)自記式質問紙による咀嚼習慣の把握、(2)小児用簡易咀嚼回数計を用いた測定(咀嚼回数、食事に要した時間)、(3)ビデオ観察の3 種類が、咀嚼能力の評価には、(4)咬合力測定、(5)ガムを用いた咀嚼テストの2 種類が用いられていた。集団に用いる場合、これらの評価指標は、妥当性や適用性(経費、労力、時間)といった点で、それぞれ長所と短所がある。したがって、実施可能性および妥当性の許容範囲から、食育プログラムを実際に行う諸々の状況においては、(1)と(2)を組み合わせて用いる方法が最良の選択肢と考えられた。また、本論文において、筆者らは、咀嚼行動(噛まない)と咀嚼能力(噛めない)の本質的な違いを明確に示したが、小児の咀嚼にかかわる食育の適切な介入プログラムの開発においては、この2 つの点をどちらも考慮に入れる必要がある。
著者
竹林 正樹 吉池 信男 竹林 紅
出版者
日本健康教育学会
雑誌
日本健康教育学会誌 (ISSN:13402560)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.173-181, 2021

<p>目的:ナッジのEASTフレームワークに沿って構築した職域用体重測定促進介入のプロセス評価と報告</p><p>事業内容:働く世代の肥満予防策として,3つの体重測定促進介入を構築した.全群にEasy型ナッジを採用の上,クイズ群(Attractive型),宣言群(Social型),成功回顧群(Timely型)を設計した.青森県職員(応募要件:体重測定頻度が週1回未満)を対象に1時間の集合型研修会を開催し,実施者の実施意欲と負担感,参加者満足,人件費を含む実施コストについて,インタビューと質問紙調査によるプロセス評価を行った.</p><p>事業評価:研修会の実施には職員4人が携わり(解析対象者3人),参加者は83人(解析対象者78人)だった.実施者の研修前の実施意欲はクイズ群,宣言群,成功回顧群の順に高かった.実施コストは成功回顧群(263~291千円),クイズ群(207~235千円),宣言群(179~207千円)で,実施負担感もこの順だった.参加者満足はクイズ群(92.6%),成功回顧群(88.5%),宣言群(64.0%)(<i>P</i>=0.016)の順だった.</p><p>課題:クイズ群は実施者,参加者双方の評価が高く,最も普及可能性があると推測された.人件費を含む実施コストは,事前予想した額に比べ,実際に要した額は2倍以上であった.また,実施者のナッジ普及フェーズが習得期から実践期へ変化したことが観察された.</p>
著者
片山 夕香 吉池 信男 政安 静子 平野 孝則 佐藤 明子 稲山 貴代
出版者
公益社団法人 日本栄養士会
雑誌
日本栄養士会雑誌 (ISSN:00136492)
巻号頁・発行日
vol.54, no.7, pp.482-491, 2011 (Released:2011-12-13)
参考文献数
12

本研究は、身体障害者施設成人入所者の栄養アセスメントに活用できる、性・年齢階級別のパーセンタイル値を含む身体計測値の基準データを提示することを目的とした。調査時点で正式登録のあった全国の身体障害者入所全施設(470 施設)に対し、年齢階級(30 歳代から50 歳代)、性、原疾患、日常生活自立度、身長、調査時点の体重、1 年前の体重、5 年前の体重のカルテ調査を依頼した。最終的に49 施設から1 , 217 名分の回答が得られ、調査内容に欠損のない1 , 059 名(男性597 名、女性462 名)を解析対象とした。日常生活自立度は、男性、女性ともに生活自立は10% に満たず、準寝たきりが約30%、寝たきりが約60% を占めた。調査時点での身長、体重データから、男性では過体重(BMI≧25 kg/m2)12%、低体重(BMI
著者
坂本 元子 杉浦 加奈子 香川 芳子 池上 幸江 江指 隆年 倉田 忠男 斎藤 衛郎 鈴木 久乃 八尋 政利 吉池 信男
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 : Nippon eiyo shokuryo gakkaishi = Journal of Japanese Society of Nutrition and Food Science (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.54, no.5, pp.311-317, 2001-10-10
被引用文献数
5 1

食品に含有する栄養成分についての表示が国際的な流れの中で, 急速に, また複雑な形で市場に出回ってきている。そのため, 厚生労働省では「栄養成分表示基準制度」を平成8年に発足し, 国民の普及啓発がすすめられている。食品表示制度の発足と市場にあふれる食品表示情報に対し, 消費者はどのような対応をし, どのように活用しているのか, さらに表示の内容, 方法, それに対する意識について調査をし, 消費者の現状について検討した。表示があることは約70%の人が認知しているが, 毎日の使用はまだ低率である。表示栄養素のニーズは, 主要栄養素を中心に女子ではエネルギー, 脂肪が多く, 男子ではミネラル類が多い。しかし, 日本人に不足している栄養素, カルシウムや鉄分, 過剰なもの, 脂肪やコレステロールについては表示へのニーズが高く見られた。表示の活用目的では男女, 年齢を問わず, 健康上の理由や食べ物に注意が必要なときが多く, 健康意識の高まりや健康維持のために使用を目指す人が多く, とくに高齢者層に多く見られている。栄養成分表示の利用について主要なポイントは,「自分の必要量がわからない」ために, どれくらいとっていいかが不明であるという指摘が見られた。今後の表示内容・方法の検討に重要な示唆となるであろう。
著者
今野 佳絵 茆原 弘光 松本 桃代 小笠原 加代子 永井 泰 福岡 秀興 渡邊 浩子 吉池 信男
出版者
日本母性衛生学会
雑誌
母性衛生 = Maternal health (ISSN:03881512)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.286-293, 2011-07-01
参考文献数
12

【目的】非妊娠時BMI別の推奨体重増加量と新生児の体格との関連,簡易型自記式食事歴法質問票(BDHQ)を用いた栄養素等摂取状況との関連について,妊娠各期を経時的に検討した。【研究方法】対象は基礎疾患のない197名の妊婦。妊娠12,20,32週にBDHQを実施,妊婦健診時に体重測定,分娩後に出生時体重,胎盤重量を測定した。対象者は非妊娠時BMI別にやせ,普通,肥満群の3群に分けた。さらに各群は妊娠推奨体重増加量別に過少,適切,過多群のサブグループに分け,サブグループ間での評価項目の差異を比較検討した。【結果】やせ群において,体重増加量が過少な群は適切または過多に増加した群と比較して,新生児の身長,胎盤重量が小さく,妊娠12週においては栄養素摂取量のn-3系脂肪酸,ナトリウム,亜鉛が少なかった(P<0.05)。【考察】非妊娠時にやせの妊婦が体重増加不良であると,新生児体格が小さくなること,有意に摂取量の少ない栄養素があることが明らかになった。今後は非妊娠時「やせ」の母体や体重増加量不良の妊婦も含めて管理していく必要性が示唆された。
著者
片山 夕香 吉池 信男 政安 静子 平野 孝則 佐藤 明子 稲山 貴代
出版者
公益社団法人 日本栄養士会
雑誌
日本栄養士会雑誌 (ISSN:00136492)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.25-35, 2011 (Released:2011-12-27)
参考文献数
21
被引用文献数
1

本研究は、知的障害者施設成人入所者の栄養アセスメントに活用できる、性・年齢階級別のパーセンタイル値を含む身体計測値の基準データを提示することを目的とした。調査時点で正式登録のあった全国の知的障害者入所全施設(1,950施設)に対し、年齢階級(30歳代から50歳代)、性、原疾患、日常生活自立度、身長、調査時点の体重、1年前の体重、5年前の体重のカルテ調査を依頼した。最終的に188施設から5,371名分の回答が得られ、調査内容に欠損のない4,903名(男性2,643名、女性2,260名)を解析対象とした。日常生活自立度は、約88%が「自立」から「A1」のおおむね1人で活動できる者であった。調査時点での身長、体重データから、男性では、過体重(BMI≧25kg/m2)16%、低体重(同<18.5)13%、女性では過体重27%、低体重12%であった。てんかん、精神遅滞・発達障害を原疾患に持つサブグループのBMI分布は、全体のBMI分布と比べ大きな差は見られなかった。5年前の体重を用いた後ろ向きデータから、中年期において男女いずれも体重が5年間で3%前後減少する傾向が見られ、健常者中年期の年齢変化による体重推移とは対照的であった。これらの結果から、知的障害者に対する栄養支援の重要性が示唆された。
著者
佐藤 ななえ 吉池 信男
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.68, no.4, pp.253-262, 2010 (Released:2010-10-26)
参考文献数
28
被引用文献数
10 10

【目的】この研究の目的は,小児の咀嚼行動特性や,それに関連すると考えられる因子について,実験食を食べた際の咀嚼回数及び食事に要した時間を評価指標として用いて検討することである。【設定及び対象】2つの幼稚園の61名の園児(5-6歳)を対象とする横断研究である。【方法】本研究では,日常的な幼稚園昼食を実験食とする,小児用簡易咀嚼回数計を用いた, 咀嚼回数(回)及び食事に要した時間(分)の測定,デンタルプレスケールを用いた咬合力測定及び対象児の咀嚼行動に関する保護者への質問紙調査を行い,咀嚼行動に関連すると考えられる因子について検討した。その際,食事に要した時間の影響を考慮した,食事時間調整咀嚼回数(以下「調整咀嚼回数」と称す)を残差法により算出し,咀嚼行動の個人間差を表わす新たな指標として検討に用いた。【結果】調整咀嚼回数との関連では,肥満度についてのみ有意な負の相関(r=-0.28;p=0.041)が示された。一方,食事に要した時間との関連では,身長(r=-0.31;p=0.018),体重(r=-0.30;p=0.026),肥満度(r=-0.27;p=0.047)に有意な負の相関が示された。重回帰分析(ステップワイズ法)の結果,「材料やおやつはよく噛んで食べることを考えて選んでいる」という保護者の行動が調整咀嚼回数に関連していることが明らかとなった。食事に要した時間では,保護者による児の判断,「すぐに飲み込まず,いつまでも口の中に入れていることがある」に有意な正の相関(r=0.35;p=0.010)が,同様に「よく噛まずに食べている」に有意な負の相関(r=-0.33;p=0.011)が示された。咬合力との間に有意となる関連はみられなかった。【結論】実験食を用いた本研究においては,肥満傾向であるほど食事時間が短かく,噛む回数が少ないこと,小柄であるほど噛む回数が多く,食事に時間を要することが明らかとなった。その他,「材料やおやつはよく噛んで食べることを考えて選んでいる」という保護者の関わりが,児の咀嚼行動に関連していた。実験食において測定した調整咀嚼回数により,肥満度及び他の因子との間の関連を明らかにすることができたことは,関連研究及び小児の咀嚼行動に着目した食育実践のエビデンス構築に役立つであろう。(オンラインのみ掲載)
著者
吉池 信男
出版者
公益社団法人 日本栄養士会
雑誌
日本栄養士会雑誌 (ISSN:00136492)
巻号頁・発行日
vol.62, no.10, pp.533-539, 2019 (Released:2019-10-22)
参考文献数
20

わが国の食事基準(dietary standard)は、旧来「栄養所要量」として策定・改定がなされてきた。米国でもRDA(recommended dietary allowance)として第10版(1991年)まで改定がなされてきたが、1993年ごろから拡張した概念枠組みの検討が開始され、1997年に米国・カナダ合同でDRIs(Dietary Reference Intakes)が発表された。ここで最も重要な点は、栄養素の必要量を正規分布と仮定し、個人に 対して不足のリスクをEAR(estimated average requirement)およびRDAを組み合わせて確率として示したことである。また、より適切な利用のために、AI(adequate intake)、UL(tolerable upper intake level)を含めた複数の指標のセットが提案された。これを受けてわが国でも「第六次改定」に向けて情報収集、検討が行われた。その結果、1999年に「第六次改定日本人の栄養所要量―食事摂取基準―」として、 DRIsの概念が一部とり入れられたが、十分なものではなかった。次の改定の「日本人の食事摂取基準(2005年版)」では、DRIsの概念がほぼ全てとり入れられ、さらに「生活習慣病の一次予防のために現在の日本人が当面の目標とすべき摂取量」(tentative dietary goal for preventing lifestyle-related diseases)、すなわちDG(目標量)が、独自の指標として作られた。その後、EER等多少の変更はあったものの、この形が「2020年版」まで承継されている。DRIsが提唱されてから約20年が経ったが、米国でも正しい活用がなされていないとの指摘もあり、これはわが国でも課題であろう。
著者
竹林 正樹 吉池 信男 小山 達也 鳥谷部 牧子 阿部 久美 中村 広美 平 紅
出版者
行動経済学会
雑誌
行動経済学 (ISSN:21853568)
巻号頁・発行日
vol.11, no.Special_issue, pp.S9-S12, 2018 (Released:2019-04-10)
参考文献数
7

【目的】シンプルな肥満予防介入として体重測定促進研修会を実施し,週1回以上の体重測定習慣化について比較検証することを目的とした.【介入・解析】青森県出先機関職員向け研修会の応募者(適格条件:体重測定頻度が週1回未満)から3人単位のクラスターを作成し,乱数表で無作為にクイズ群,行動宣言群,成功回顧群の3群に割り付け,RCT(1時間の研修会および一斉メールによる介入)を行った.また,別地域の職員を参照群に設定し,6か月後の体重測定行動を並行群間比較した.【結果・考察】クイズ群20人,行動宣言群22人,成功回顧群22人,参照群44人を解析した結果,介入3群全体で6月後体重測定者は44%(参照群2%,p<.001)であった.中でも成功回顧群は59%と最も高い効果がみられた.ただし,本研究にはサンプルサイズ等に関する限界がある.
著者
吉池 信男
出版者
国立保健医療科学院
雑誌
保健医療科学 (ISSN:13476459)
巻号頁・発行日
vol.66, no.6, pp.556-573, 2017-12-01 (Released:2018-02-20)
参考文献数
21

乳幼児期の栄養・食生活は,その時期における健全な成長・発達に対してのみならず,成人後のNCDsリスクの低減という観点からも重要なことと考えられる.乳幼児期の栄養・食生活の実態に関しては,10年毎に実施されている乳幼児栄養調査から重要な情報を得ることができる.最新の2015年の調査においては,以前と比べて,母乳育児を支援する環境づくりに進捗が見られ,母乳栄養児の割合も高くなった( 1 か月51.3%, 3 か月54.7%).また,離乳食の開始時期も以前より遅くなってきており,2007年に出された「授乳・離乳の支援ガイド」とそれを活用した普及啓発活動の効果の表れと考えられた.一方,離乳食について約75%の保護者が何らかの「困りごと」を有しており,離乳食に関する学習の場として最も重要な保健所・市町村保健センター等における支援のさらなる充実が望まれる.幼児期の食習慣の形成には,保護者の影響が大きいと考えられ,保護者が抱える子どもの食事に関する「困りごと」への支援とともに,第 3 次食育推進基本計画が示している「若い世代を中心とした食育」や「子どもの成長,発達に合わせた切れ目のない」対応の推進が必要である.幼児期の食事に関わる健康問題として重要な食物アレルギーへの対応や肥満予防のための取組についても課題があり,今後の改善が必要と考えられる.子どもの貧困が社会問題化する中で,家庭の経済状況に応じた支援のあり方も検討される必要がある.