著者
三上 正男 藤谷 徳之助 張 希明
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
Journal of the Meteorological Society of Japan. Ser. II (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.73, no.5, pp.899-908, 1995-10-25
被引用文献数
4

乾燥地における砂漠化の機構を調べるため、1991年より中国新疆ウイグル自治区内のタクラマカン砂漠において、気象要素の長期観測を行った。この目的のため、タクラマカン砂漠南縁の礫沙漠(ゴビ)上に自動気象ステーションを設置した。約1年間にわたる観測データを解析し、オアシス郊外の草地の観測データと比較した。全ての月で月平均地表面温度は気温よりも高く、月平均顕熱輸送は一年を通じ上向きである。夏季において日中の比湿の増加が顕著に見られる。これは、風上側に位置する相対的に湿潤なオアシスからの水蒸気移流によるものと考えられる。主風向は2つあり、4月から6月にかけて見られる西よりの強風(平均風速7m/s以上)と夜間の南南東風である。この夜間の南南東風は、一年を通じて顕著に見られる時計回りの風向の日変化に伴うものである。ゴビから11キロ離れたオアシス内の草地とゴビの風向は,同じ日変化を示す。ゴビから西に100キロ離れたオアシス和田の地上から160mまでの風はゴビと同様の変化を示している。この風向の日変化は、崑崙山脈と砂漠地帯間の局地循環によるものである事が強く示唆される。
著者
山元 龍三郎 藤谷 徳之助
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.46, no.8, pp.555-556, 1999-08-31
著者
米山 邦夫 藤谷 徳之助
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
Journal of the Meteorological Society of Japan. Ser. II (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.73, no.2, pp.291-304, 1995-06-15
被引用文献数
4

東経156度の赤道上におけるR/V「なつしま」停船観測によるラジオゾンデの観測結果を中心にして、TOGA-COARE集中観測期間中の、1993年2月5日〜14日の「なつしま」上空大気の特徴を調べた。2月6日から9日にかけて高度2〜4km付近に強い乾燥した西風域が存在し、時間と共にその領域が降下し、2月10日に高度2km付近でその存在が不明瞭になる様子が認められた。2月6日から9日の間は活発な対流活動は認められなかったが、2月10日には「なつしま」上空では深い対流が発達した。観測期間の前半には、高度800hPa付近に温度逆転層が形成され、その上空の乾燥した空気塊が対流活動を抑制していた。この空気塊は北東貿易風を起源として赤道域に侵入していることが示された。また、乾燥域の降下の原因として、乾燥域による対流活動の抑制の他に、乾燥域の周囲に存在した活発な対流雲群から生じる沈降流と関係していたことが示された。さらに、対流の発生した2月10日には下層の風向が北西風から西風に変化している様子が示された。この2月10日を境にして下層で見られた風向の変化は対流活動の変動と関係しており、上述の乾燥域の振る舞いとそれに関連する対流活動の変動が赤道太平洋上における数日スケールの大規模な大気変動と深く関係していることが示唆された。