著者
五十嵐 康人 大河内 博 北 和之 石塚 正秀 吉田 尚弘 三上 正男 里村 雄彦 川島 洋人 田中 泰宙 関山 剛 眞木 貴史 山田 桂太 財前 祐二 足立 光司 中井 泉 山田 豊 宇谷 啓介 西口 講平 阿部 善也 三上 正男 羽田野 祐子 緒方 裕子 吉川 知里 青山 智夫 豊田 栄 服部 祥平 村上 茂樹 梶野 瑞王 新村 信雄 渡邊 明 長田 直之 谷田貝 亜紀代 牧 輝弥 佐藤 志彦
出版者
気象庁気象研究所
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2012-06-28

初期の放射性Cs放出には従来想定されていた水溶性サブミクロン粒子に加え,直径数μmの不溶性粗大球状粒子が存在することを初めて明らかにした。典型的な里山では再飛散由来のCs濃度は,都市部での結果と異なり,夏季に上昇し,冬季には低かった。夏季のCs担体は大部分が生物由来であることを初めて見出した。放射性Csの再飛散簡略スキームを開発し,領域エアロゾル輸送モデルを用いて森林生態系からの生物学的粒子による再飛散,ならびに事故サイトから継続する一次漏えいも含め,フラックス定量化-収支解析を行った。その結果、他のプロセス同様、再飛散は、地表に沈着したCsの減少や移動にほとんど寄与しないことがわかった。
著者
里村 雄彦 木村 富士男 佐々木 秀孝 吉川 友章 村治 能孝
出版者
気象庁気象研究所
雑誌
Papers in Meteorology and Geophysics (ISSN:0031126X)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.51-63, 1994 (Released:2006-10-20)
参考文献数
17
被引用文献数
2 3

チェルノブイリ原子力発電所事故の際に放出された放射性汚染物質の、ヨーロッパにおける空気中濃度と沈着量について、気象研究所の長距離輸送モデルを用いて計算した。このモデルは、気象庁の旧ルーチンモデルで気象要素の予報を行い、ラグランジュ移流拡散モデルで汚染物質の濃度を計算する。発電所からの汚染物質の放出量として、ATMESプロジェクトで配布された発生源データを用いた。 計算の結果、モデルのCs-137とI-131の空気中濃度は観測とよく合うことが示された。しかし、沈着量は観測と合わないこともわかった。気象予測モデルの降水予報の精度の悪さと、観測値とモデルとがそれぞれ代表するスケールの違いが、沈着量の差の原因と考えられる。
著者
里村 雄彦 林 泰一 安成 哲三 松本 淳 寺尾 徹 上野 健一
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

2004年7月および2005年3月の2回にわたりカトマンズ(ネパール)のネパール水文気象局本局を訪問し,既存の気象・気候データの所在,保存方法・形態,デジタル化の手順や収集の可能性について調査を行った。また,2004年10月7日には,第1回の現地調査の結果をふまえてアクロス福岡にて国内打合せ会議を開き,第2回現地調査項目および将来の国際共同研究計画への戦略について議論を行った。これらの内容は以下の通り:1)国内会議・南アジア(特にネパール・バングラとインド北部)における雨とそれに関わる大気状態の観測に取り組む必要がある。世界的に見て顕著な降水がある領域であるが、観測・データの制約、研究の少なさのために、まだ基本的な事実自体が十分に解明されていない状況にある。改めて降水の実態把握にこだわる意味は大きい。また,降水量予測もターゲットにするべきであろう。・新しい測器・データの利用と、特別観測、更た新しい研究ツールとしての数値モデルを有効に活用することを通じて、南アジアの降水メカニズムに関する知見を深めていくことを重視すべきである。2)現地調査・地上観測点は多いが,高層観測は全く行っていない。24時間観測をしているのはカトマンズ空港1地点のみであり,他は夜間の観測を行っていない。多くの観測点は日平均値,最大・最小のみの報告を行っている。・最新の自動気象観測装置が数点入っているが、試験導入という位置づけであり,機器の維持・整備の状況に差が大きい。カトマンズ市内の機器を調査した結果,カトマンズ空港以外のデータは研究に利用できない可能性が高い。・高層観測を今後の共同研究で実施する重要度は大きいが,技術的な困難も大きい。・DHMのShrestha長官と面談し、低緯度モンスーン地帯の急峻山脈南山麓という世界的に特殊な環境に起因する気象擾乱や災害について情報交換を行った。また、今後の国際共同研究に向けて具体的な観測項目、そのための事務的な準備などについても打ち合わせた。なお,これらの結果をふまえて実際の国際共同研究を行うため,平成17年度科学研究費基盤Aの申請を行った。
著者
里村 雄彦 松本 淳 森 修一 勝俣 昌己 荻野 慎也 横井 覚
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

多数のレーダーのエコー合成図を作成し、インドシナ半島上の台風の全体像を捕らえることができた。長寿命台風では半島上に降水に好都合な気象状況となっていることも示すことができた。数値実験では台風の中心位置が観測と良く一致する結果を得ることができた上、レーダーデータと共に上陸後の衰退期の台風構造を捕らえることにも成功した。また、半島東海岸中部では秋季に特に台風による降雨が多くなることやENSOの影響を強く受けていることも明らかにした。
著者
里村 雄彦 沖 大幹 渡辺 明 西 憲敬
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

ドップラーレーダー解析研究では,タイ気象局(TMD)チェンマイレーダーとタイ王立人工降雨農業航空局(BRRAA)オムコイレーダーを中心に,1998-2000年のモンスーン雨期のレーダーエコー強度を解析し,その特徴を調査した。その結果,どちらのレーダー観測範囲においても,下層のエコー全面積はモンスーン雨期を通じて,昼前に急速に面積を増大して15-16時に最大を迎え,夜から翌日の朝にかけて緩やかに減少するという顕著な日変化を示すことがわかった。次に,観測範囲に欠けがないオムコイレーダーデータを中心に,詳しいエコー解析を行った。まず、エコー移動方向の解析を行ったところ,5-7月はほぼすべての日の大多数のエコーが近辺の対流圏下層と同じ風向の南〜南西風と同じ向きに動いていること,10月前半はエコー移動方向も卓越風向も逆転していることが明らかとなった。さらに,レーダー観測範囲の南半分を山岳地形にほぼ平行な11本の帯に分割し,それぞれの帯領域内のエコー面積の日変化を調べた。その結果、5-7月の南西モンスーン期においては,タイ北部山脈風上側のベンガル湾およびミャンマー海岸地域では朝に,山岳地域では午後に最大となる日変化をしていた。しかし,風下側にあたるタイ北部では,山岳からの距離が離れるとともにエコー面積増大の開始時刻や最大時刻が遅れることを,明瞭に示すことができた。さらに,風向の逆転した10月にも,風下側で同様な位相の遅れを認めることができた。雲解像モデルによる数値実験においては,スコールラインの東への移動がインドシナ地域の降水日変化の主要な原因であるという結論を得た。この数値モデルから提案された仮説が,上記レーダー観測から証明された。気象衛星赤外データと雨量計網を用いた解析研究では,バングラディシュからインドシナ半島全体に及ぶ広い範囲での降水日変化の様子を,詳細に調べた。その結果,降水日変化には海陸の差だけでなく,たとえば同じインドシナ半島内でも夕方から夜の早いうちに最大となる平原部や,深夜から夜明け前に最大になる一部山岳域など変化に富んでいることが明らかになった。また,3次元領域気候モデルによるインドシナ半島の長期間シミュレーションによって,タイ東北部の森林伐採がインドシナ半島の降水に与える影響を評価した。その結果,森林伐採を行った地域での平均降水量の減少は9月に発生にすることがわかった。これらデータ解析と数値実験の結果から,南西モンスーンが強い8月には十分な水蒸気が供給されるために森林伐採の影響は少なく,季節風の弱まる9月に局地的な森林伐採の影響が降水量減少となって現れると結論できた。