著者
行實 志都子 ユキザネ シヅコ 八重田 淳 ヤエダ ジュン Yukizane Shizuko Yaeda Jun
出版者
駒澤大学文学部社会学科
雑誌
駒沢社会学研究 : 文学部社会学科研究報告
巻号頁・発行日
no.53, pp.1-16, 2019-10

目的:精神障害者の地域生活支援を行う領域において、ピアサポート活動は約20年前から注目され始めた。精神障害者にとってピアサポートは自分自身を取り戻す「魔法のことば」のように取り扱われ、全国でピアサポート養成が実施された。ピアサポートは、同じ体験をもつ仲間同士の関係性を表す言葉であるが、特に仕事としてピアサポート活動に注目が集まった。よって本研究は、精神障害者当事者会が行うピアサポートを基盤にした電話相談等の活動には職業的妥当性があるかを検証することを目的とした。調査方法:2013年11月に精神障害者の当事者会に所属する12名に対して、フォーカスグループインタビュー調査を実施し内容分析を行った。結果:「人間関係の中での葛藤」、「ピアサポートの活動を実施したことでの気づき」、「ピアサポート活動での悩み」などの9つのカテゴリに整理された。考察:当事者会の電話相談等のピアサポート活動は、職業的妥当性といった観点からは、まだまだ課題が多く仕事して捉えることに無理が生じる。当事者会Pで実施される電話相談などの業務は、ピアサポート活動の一環として捉え、そこに発生する賃金等は活動に支える交通費等と捉える方がよいといえる。実際に、その程度の賃金しか支給されておらず、賃金で雇われているというものではなく、仲間としての関係性でその役割は存在していた。
著者
川口 真実 / 行實 志都子
出版者
日本福祉大学社会福祉学部
雑誌
日本福祉大学社会福祉論集 = Journal social Welfare, Nihon Fukushi University (ISSN:1345174X)
巻号頁・発行日
no.141, pp.83-94, 2019-09-30

本研究は,神奈川県における医療と介護に携わる福祉専門職がもつ連携に対する意識を明らかにすることを目的とした.また,本研究の仮説は,福祉専門職はそれぞれの職場が違っても,地域共生社会を支えるための連携に関する共通認識があるとした. 医療と介護の連携における具体的な共通課題として,「自分たちに求められる力」,「連携を見据えた研修体制の構築」の2つが明らかとなった.しかし,それぞれの専門職間において,"連携"に対する促え方の違いもみられた.この課題を解決するためにも「連携を見据えた研修体制の構築」が必要である.だが一方では,職場の事情により研修に参加したくても参加できないことや,「支援の縦割りの弊害」から自分の支援範囲以外に対する関心の低さが目立った.ただ連携に関する研修を整備するだけでは解決には至らない.連携には何がいるのか,自分はその中で何をするのかということをしっかりと理解し,行動に移すことができるようになる研修が必要である.
著者
行實 志都子 八重田 淳 若林 功
出版者
神奈川県立保健福祉大学
雑誌
神奈川県立保健福祉大学誌 : human services (ISSN:13494775)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.3-13, 2017

目的:本研究は、神奈川県における医療と介護の連携促進要因を探ることを目的とした。方法: 神奈川県医療ソーシャルワーカー協会(MSW)、神奈川県精神保健福祉士協会(PSW)、神奈川県介護支援専門員協会(CM)の協会員各150名を無作為抽出し、450名を対象とした郵送無記名自記式質問紙調査(2016年3月28日~4月15日)を実施した。主な調査内容は、基本属性、国の方策や地域の状況・疾患・医療体制等の知識、自分の周囲の連携体制、医療機関連携における課題、専門職としての役割意識である。データ分析には相関分析及び分散分析を用い、医療と介護の連携要因と傾向を探った。結果: 回答者140名(回収率31%)の職種全てにおいて項目間の高い相関が示された。特にMSWとPSWにおいての違いが顕著に見られた。考察: 本調査結果から連携促進要因には、①国の動向理解②疾患の正しい理解③連携への苦手意識の克服④スーパービジョン・コンサルテーションのシステム整備⑤クライエント中心にした連携意識が重要である。これらを踏まえ自分に何ができるかという視点や意識を少しでももちながら、その気持ちを共有でき一緒に何かを始められる仲間探しから連携の一歩が始まると考えられた。