著者
西尾 聡悟 寺上 伸吾 竹内 由季恵 松本 辰也 髙田 教臣
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.137-147, 2022 (Released:2022-06-30)
参考文献数
43
被引用文献数
1

ニホンナシの育種は農研機構および全国の県の試験場で行われている.育種において最も重要な形質は黒星病抵抗性であり,生理障害の発生少,収量性,早生性,高糖度,自家和合性なども重要な育種目標となっている.近年温暖地においてナシの発芽不良が問題となっているため,温暖地でも安定栽培可能な品種の開発が求められている.そのような中で,黒星病抵抗性,自家和合性,黒斑病抵抗性,早生性,果皮色についてはDNAマーカーが開発され現場の育種に利用可能となっている.しかしながら, これらの形質は遺伝の顕性と潜性 (優性と劣性),質的形質と量的形質,対立遺伝子に異なる複数の効果があるなどの特徴があるため,効率的な選抜のためにはそれぞれの形質の遺伝様式を十分に理解したうえでDNAマーカーを使う必要がある.本総説ではニホンナシの育種に重要な59品種のこれらの形質の表現型と遺伝子型データベースを公開し,それぞれの形質の遺伝様式と利用技術についてとりまとめ解説する.
著者
齋藤 寿広 壽 和夫 澤村 豊 高田 教臣 平林 利郎 佐藤 明彦 正田 守幸 寺井 理治 西端 豊英 樫村 芳記 阿部 和幸 西尾 聡悟 木原 武士 鈴木 勝征 内田 誠
出版者
農業技術研究機構果樹研究所
雑誌
果樹研究所研究報告 (ISSN:13473549)
巻号頁・発行日
no.19, pp.1-9, 2015-03

1. '美玖里'は,1995年に農林水産省果樹試験場(現農業・食品産業技術総合研究機構果樹研究所)において'石鎚'に'秋峰'を交雑し,育成した実生から選抜した果実品質が優れる中~晩生のニホングリ品種である。1999年に一次選抜し,2000年からクリ第6回系統適応性検定試験に供試した。2009年2月の平成20年度果樹系統適応性・特性検定試験成績検討会(落葉果樹)で新品種候補にふさわしいとの合意が得られ,2011年3月9日に,登録番号20474号として種苗法に基づき品種登録された。2. 樹勢は強く,樹姿は直立で,枝梢の発生量は多い。雌花の開花期は'筑波'より遅く'石鎚'とほぼ同時期,果実の成熟期は育成地では9月下旬~10月上旬で'筑波'と'石鎚'の間である。若木での収量は'筑波'や'石鎚'と同程度である。双子果,裂果,腐敗果の発生は栽培上問題とならない程度に少ない。環境条件により,虫害果が多発する場合がある。3. 果実は円形で,褐色を呈する。系統適応性検定試験における平均果重は26g程度で'筑波'や'石鎚'と同程度以上で,揃いは良好である。果実の比重は'筑波'や'石鎚'より高く,肉質,甘味,香気ともに'筑波'と同程度以上で'石鎚'より優れ,食味は良好である。渋皮剥皮は困難である。果肉は黄色で,'筑波','石鎚'と比較して明度が高く,黄色味が強い。4. 関東地方以西の産地で特性を発揮できるが,東北地方での適応性は不明である。既存の主要品種と比較して果肉色や食味の点で優れており,ゆで栗等家庭用消費の他,付加価値の高い加工原料としての利用が期待される。