著者
神山 順 西山 勝彦 Shin'ichi Sato 島田 順一 大賀 興一 岡 隆宏
出版者
The Japanese Association for Chest Surgery
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.99-102, 1994-01-15 (Released:2009-11-10)
参考文献数
5

欧米では銃器による胸部穿通性外傷の報告が多くみられるが, 日本では, その発生頻度は極めて低い.今回我々は22口径の拳銃による肺損傷の患者を, 緊急開胸術による直接肺縫合で救命し得た.銃器による穿通性胸部外傷の特徴は, ナイフなどによる他の穿通創とは異なり, 弾丸が通過した部分のみの損傷にとどまらない.今回の症例は, 大きな気道の損傷および大血管の損傷はなく縫合閉鎖によって止血できた.しかし, 症例によっては, 肺損傷が著しく肺葉切除や大血管損傷に対する修復が必要な場合もあり, 術前から補助手段なども考慮しておくことが必要である。
著者
谷口 功 FARRELL Nich CHELEBOWSKI ジャン エフ HAWKRIDGE Fr 木田 建二 西山 勝彦 FARRELL Nicholas P WYSOCKI Vick JAN F.Chelbo VICKI H.Wyso FRED M.Hawkr
出版者
熊本大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1994

本研究では、金属タンパク質の構造変化による機能制御の本質を解明、応用するための基礎を確立するため、日米二つの研究グループの得意な領域を有機的に結合して、金属タンパク質の電極上での直接電子移動を自在に制御し、金属タンパク質の電気化学的性質を明らかにすると共に、界面電子移動反応に関する基礎的知見の増大と新しい概念の創出を目指して研究を進めた。本研究の過去3年間の研究成果は以下の通りである。1.金属タンパク質の界面電子移動制御とその生物電気化学的応用について(1)種々の機能電極の開発によって、ミオグロビン、ヘモグロビン、チトクロムc、フェレドキシンなどの電極上での直接電子移動制御が可能となった。(2)ミオグロビンについては、酸化インジューム電極を用いて、不均一電子移動速度定数と電極表面の親水性の関係を定量的に評価し、金属タンパク質の電子移動制御のための界面機能を一般化した概念を提唱した。また、種々の起源のミオグロビンの電子移動と配位子置換による電子移動反応の影響を明らかにした。さらに、マンガン再構成ミオグロビンやモノアザ及びジアザヘミン置換ミオグロビンを作製してヘム鉄の軸配位子の酸化還元電位および不均一電子移動速度定数への影響を明らかにした。(3)チトクロムcのための機能修飾電極について、フレームアニールクエンチ法で作製した金単結晶電極上にチオール系機能化分子を修飾した電極を作製して、その界面機能を電気化学法、分光学、走査プローブ顕微鏡などを用いて詳細に明らかにした。また、機能化分子の微細な構造の相違が金属タンパク質の電子移動促進効果に大きく反映することを明確にした。(4)フェレドキシンのアミノ酸改変体を作製し、そのレドックス電位や酵素反応速度への影響の定量的な解析から、フェレドキシンの機能をアミノ酸残基レベルで酸化還元電位の制御部位と酵素分子との結合部位などに明確に区別されていることを明らかにした。2.金属タンパク質の構造変化のダイナミクス測定について(1)円二色性(CD)分光電気化学法について、電子移動過程の速度論的な情報を得るストップトフローCD測定のための装置の開発・高度化によって、高機能測定装置を組み立てた。(2)本装置を用いて電子移動過程で金属タンパク質構造のin situ時間分解測定を行い、チトクロムc、フェレドキシンいずれも電子移動に伴う構造変化が多段階的に生じることを明らかにした。(3)電気化学法及び新しいCD分光電気化学法などを用いて電子移動過程に伴うチトクロムc、ミオグロビン及びフェレドキシンの電子移動速度及び電子移動に伴う全体的かつ局部的な構造変化のダイナミクスに関する新しい知見を得た。(4)フェレドキシンの電気化学挙動の温度依存性から、ボルタモグラムのディジタルシミュレーション法による解析を用いてその反応機構に微細な構造変化が存在することを明らかにした。3.フェレドキシンの電子移動制御と光合成モデル生体機能化学反応への応用について(1)フェレドキシンの電極反応を、フェレドキシン-NADP^+-リダクターゼ(FNR)系と共役させ、さらにNADPHを補酵素とする酵素と共役させて、立体選択的精密化学合成へと展開した。具体例として、ピルビン酸からLーリンゴ酸が、さらに、オキソグルタル酸からL-グルタミン酸が得られることを示した。(2)電気化学測定から酵素反応の速度論的解析と反応機構の解明のためのディジタルシミュレーション手法を開発した。4.半人工改変金属タンパク質のユニークな機能発現の分子構造的解明(1)ミオグロビンを用いて、その活性中心を人工分子で置換した半人工再構成分子を作製し、その特性を電気化学的に明らかにした。特に、ヘム鉄の配位子であるヘミンの構造やヘム鉄周りの分子内環境が酸化還元電位やミオグロビンの機能の発現に重要であることが示された。(2)フェレドキシンのアミノ酸変異分子の酸化還元電位の大きな変化は、主に、特定のアミノ酸残基への置換によって生じる鉄-イオウクラスターの歪みによって生じる可能性が、コンピューター分子構造モデル計算による立体構造表示から示唆された。
著者
小野寺 秀記 竹村 周平 笠松 美宏 辻本 庄司 西山 勝彦 土橋 康成 杉本 尚仁 中原 梨佐 土井 たかし 杉野 成 近藤 元治
出版者
日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 : 日本気管支研究会雑誌 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.185-193, 1993-03-25

心嚢炎で発症し, 約1年の経過をもって胸膜炎と気管支転移を合併した悪性胸腺腫の55歳男性症例について報告した。心嚢炎と胸膜炎に関した病理学的確診はえられなかったが, これらは共通の性状と治療経過を示したことから悪性胸腺腫の直接浸潤と考えた。原発巣と気管支病変に関しては病理学的確診がえられ, 画像診断より, 原発巣と気管支病変の連続性が認められないことから, 気管支病変は転移と考えた。治療に関して, 本例では多剤併用療法により部分的寛解後, 縦隔を主とした根治的放射線療法を行い, その後約1年の経過を通じて原発巣の縮小を維持できた。また漿膜浸潤の増悪も局所の化学療法により対処しうるものと想定された。転移を伴った悪性胸腺腫の延命には, 化学療法のdose intensificationが必要と考えられ, G-CSFをはじめとした補助あるいは併用療法の検討が今後の重要課題となるものと思われた。本例の死因は, 心嚢炎の再燃と肝転移に伴う多臓器疾患であった。