著者
山村 義治 上田 茂信 伊谷 賢次 粉川 隆文 杉野 成 近藤 元治 浜田 春樹 園山 輝久 弘中 武 蒲田 洋二 芦原 司
出版者
The Japan Society of Hepatology
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.29, no.7, pp.956-962, 1988
被引用文献数
7 2

症例は29歳女性.上腹部痛を主訴として,昭和59年8月2日入院.血液学的検査で,中等度の貧血と血小板の減少,血清LDHの軽度上昇を認めた.出血時間,プロトロンビン時間共に延長していた.AFPは陰性.腹部血管造影では,肝・脾血管腫と診断され,さらに骨転移巣も認めた為,血管肉腫が強く示唆された.確定診断の目的で腹腔鏡下肝生検を試みたが,出血が激しく断念し,外科的肝切除にて血管肉腫と診断された.本例は,その後肝機能が悪化し,昭和60年3月22日に肝不全で死亡した.剖検では,肝臓,脾臓,骨髄に血管肉腫を認めたが,原発巣は不明であった.肝血管肉腫は生前診断が困難であり,特に肝血管腫や肝嚢胞性病変との鑑別が問題となる.疑いのある症例には,速やかに開腹下肝生検,あるいは肝切除術を行うことが必要と考えられた.
著者
小野寺 秀記 竹村 周平 笠松 美宏 辻本 庄司 西山 勝彦 土橋 康成 杉本 尚仁 中原 梨佐 土井 たかし 杉野 成 近藤 元治
出版者
日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 : 日本気管支研究会雑誌 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.185-193, 1993-03-25

心嚢炎で発症し, 約1年の経過をもって胸膜炎と気管支転移を合併した悪性胸腺腫の55歳男性症例について報告した。心嚢炎と胸膜炎に関した病理学的確診はえられなかったが, これらは共通の性状と治療経過を示したことから悪性胸腺腫の直接浸潤と考えた。原発巣と気管支病変に関しては病理学的確診がえられ, 画像診断より, 原発巣と気管支病変の連続性が認められないことから, 気管支病変は転移と考えた。治療に関して, 本例では多剤併用療法により部分的寛解後, 縦隔を主とした根治的放射線療法を行い, その後約1年の経過を通じて原発巣の縮小を維持できた。また漿膜浸潤の増悪も局所の化学療法により対処しうるものと想定された。転移を伴った悪性胸腺腫の延命には, 化学療法のdose intensificationが必要と考えられ, G-CSFをはじめとした補助あるいは併用療法の検討が今後の重要課題となるものと思われた。本例の死因は, 心嚢炎の再燃と肝転移に伴う多臓器疾患であった。
著者
田中 恵子 池田 順子 東 あかね 入江 祐子 松村 淳子 杉野 成
出版者
夙川学院短期大学
雑誌
夙川学院短期大学研究紀要 (ISSN:02853744)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.1-11, 2004-03-17
被引用文献数
1

青年期女性のやせの者の生活習慣上の問題点を明らかにすることを目的として、15〜29歳女性住民415人を対象とした生活習慣調査を行い、やせと生活習慣との関連をFisherの直接法と重回帰分析により検討した。やせの割合は、15〜19歳、20歳代の順に31.3、23.0%であった。普通体型で自分の体型を太めに評価している者に、ダイエット経験者(現在ダイエットをしている者と過去にしていた者)の割合が有意に高かったことから、青年期女性において適正体重に関する健康教育が重要であることが改めて示された。15〜19歳では、食生活に関する幾つかの項目で、好ましくない習慣を有する者にやせの割合が高いという結果が得られた。やせの者に食品の組み合わせについての意識が低い傾向がみられたこと、ご飯、その他の野菜(緑黄色野菜を除く野菜)、牛乳・乳製品の摂取頻度の低い者にBMIが有意に低いという関連がみられたこと、さらに総合的な食品のとりかたの評価指標であるバランススコア平均値がやせで低い傾向を示したことから、10歳代後半のやせの者に対するバランスのとれた食事摂取という健康教育をおこなう必要性が改めて示された。20歳代においては、喫煙習慣を有する者ほどBMIが低くなる傾向がみられたことから、喫煙が体型および健康に及ぼす影響について正しい認識をもたせて禁煙教育を積極的にすすめていく必要性が高いと考えられた。食生活では、15〜19歳に比べて、やせと関連する問題となる習慣は少なかったが、バランススコア平均値が、普通に比べてやせで低い傾向を示したことから、15〜19歳と同様にできるだけ多様な食品をとることの重要性を示していく必要性が高いと考えられた。