- 著者
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西山 正吾
- 出版者
- 社団法人プラズマ・核融合学会
- 雑誌
- プラズマ・核融合学会誌 (ISSN:09187928)
- 巻号頁・発行日
- vol.87, no.2, pp.89-93, 2011-02-25
観測装置の発展に支えられ,20世紀末には宇宙論が精密科学へと成熟していった.今後も装置の進歩は止まらず,観測精度はますます高くなっていくだろう.しかしそれだけで,宇宙を"精密に"とらえられるようになるのだろうか.精密化の鍵をにぎるのは,星間空間にただよう宇宙塵である.天体からの光は星間塵によって減光される.紫外線から赤外線の波長にわたる観測では,特にこの影響が顕著である.近年の研究で,星間塵による減光がいかに"多様か"ということがわかってきた.本節では,星間減光の理解の変遷を,歴史的な経緯を含めて紹介したい.星間減光の多様性を理解すること,赤外線波長域での星間減光の観測を推し進めること,これらが今後,光赤外線天文学をより精密な科学とするために必要な要素である.