- 著者
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谷 直樹
中嶋 節子
増井 正哉
岩間 香
西岡 陽子
- 出版者
- 大阪市立大学
- 雑誌
- 基盤研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 1997
本研究は、祭礼時の町家および街路空間を中心としたハレの日の演出に着目して、その現状を詳細に調査し、聞き取りや文献研究によって、歴史的変遷を明らかにすることを目的に進めてきた。調査期間は、平成9年度、10年度の2年間で、現地調査は本調査・補足調査を含めて近江日野祭、越前三国祭、京都祇園祭、大阪天神祭、小浜放生会、近江大津祭、京都鞍馬祭、丹波亀岡祭、伊賀上野天神祭で実施した。現地調査にあたっては、建築班・街路班・民俗班・美術班を編成して総合的な調査分析を試みた。町家・町会所でのお飾りの実測調査、街路空間における演出要素の分布調査、祭礼の建営母胎や準備状況についての聞き取り調査、屏風の作品調査等を行った。また、祭礼関係絵図、地誌、町の共有文書などの資料を収集することによって、歴史的変遷を解明した。以上の調査研究によって、神事や山車を中心にしたものが主流であった従来の祭礼研究に、町家や街路の演出手法についての新たな知見を加えることができた。その概要は次の4点に要約できる。(1) 両側町という比較的閉鎖的な都市空間では、軒庇を利用した幔幕、提灯の飾りが定型になっている。(2) 町並みを構成する町家はふだんは閉鎖的であるが、祭礼時には通りに向かって開放的になり、展示空間として機能している。(3) 町会所や当番の町家では、山車の懸装品等が展示され、コミュニティ施設にふさわしいハレの演出が見られる。(4) 祭礼時の空間演出の研究は、民家史研究や住生活史研究のみならず、歴史を活かしたまちづくりを進める上で、建築計画学、都市計画学においても大きな意味をもつものといえる。報告書は、総論として建築・都市、美術史、民俗の3つの視点から分析を行い、事例報告で鞍馬祭、天神祭、大津祭、日野祭、亀岡祭、上野天神祭、小浜放生会、三国祭を紹介した。