著者
井上 恵子 西川 〓八 木村 直人 広田 公一
出版者
日本体力医学会
雑誌
体力科學 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.156-165, 1992-04-01
被引用文献数
2 2

日常継続的な運動を行っていない6名の男子学生(23〜25才)に対し, 主に上腕二頭節がコンセントリックおよびエクセントリック収縮となるような重量負荷運動を課した. 運動強度は20%MVCであった. そしてその運動の3週間後に同一運動(2nd Ex.)を再負荷し, 筋痛と血清CK活性値, および白血球数におよぼす影響について検討し, 以下の結果を得た. 1. 血中乳酸値は, 1st, 2nd Ex.とも運動直後に有意(p<0.01)な上昇を示し, 運動終了6時間後には安静レベルに戻った. 血中乳酸値は, 両運動間ではとんど差はみられなかった. 2. 白血球数は1st Ex.および2nd Ex.ともに運動終了直後から6時間後まで一過性に増加し, その後安静レベルに戻ったが, 運動終了7日後に再び上昇を示した. 1st Ex.の運動終了6時間後と7日後に, 5%レベルで安静値より有意な上昇が認められた. 3. 血清CKは, 1st Ex.において5名に安静値からの著しい上昇(266〜763%)がみられ, 上昇のピークは運動終了3〜4日後と遅延した上昇を示した. これに対し2nd Ex.のCKは僅かな変動しか示さなかった. 血清CK値の両運動間には有意(p<0.01)な差が認められた. 4. 1st Ex.の運動後, 3〜7日間に亘って被検者全員に筋痛が認められ, そのピークは運動終了2日後であった. しかし2nd Ex.においては, 筋痛の程度は軽く, 消失も早くなる傾向が認められた. 5. 2nd Ex.において, 1st Ex.と同程度の筋痛が見られた被検者YIについては, CKについても1st Ex.と同様の上昇が認められた. しかしその値は, CK上昇が見られた5名中最も低い値であった. 以上のことから, 1st Ex.により, 新組織に損傷を与え筋痛を引き起こしたものと思われるが, 2nd Ex.で認められた筋痛と白血球数およびCK逸脱の低減は, 筋組織の損傷後修復過程が進行し, 3週間後の運動負荷に対し耐えうる準備ができたことによると推察された. また, 1st Ex.においてCK上昇の程度が低かった者には2nd Ex.においても筋痛とCKの低減が認められず, 筋組織に適応を引き起こす閾値が存在することが推測された.