著者
齊藤 美奈子 加賀谷 〓彦 森井 秀樹 中川 喜直 木村 直人 吉田 博幸 広田 公一
出版者
一般社団法人日本体力医学会
雑誌
体力科学 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.31-40, 1991

大学の男子競歩選手5名 (選手群) と体育専攻男子大学生5名 (対照群) を被検者とし, 競歩と普通歩行におけるスピードと酸素需要量・歩長, 歩数の関係から, 競歩の特性, 競歩の健康の維持・増進のための運動としての有用性について検討を行ったが, その結果, 次のように要約された.<BR>1.本研究における競歩の限界スピードは, 選手群が200~220m/min, 対照群が160m/minであった.普通歩行の限界スピードは両群とも140m/minであった.<BR>2.競歩と普通歩行の境界スピードは, 両群とも約130m/minにみることができ, 普通歩行はその直後に限界に達しているが, 約130m/minより低スピードにおいて, 競歩は普通歩行より効率が悪いが, それ以上のスピードでは効率が良いということがわかった.<BR>3.選手群の普通歩行, 対照群の両歩行のoptimal speedは60m/minであった.これに対し, 選手群の競歩におけるoptimal speedは60~80m/minであり, やや高いスピードまでみることができた.<BR>4.選手群は, 両歩行とも対照群のそれより同一スピードにおいて小さい酸素需要量を示しており効率よく歩くことができた.<BR>5.選手群は, 競歩において歩行の限界まで歩長, 歩数とも増加を示したが, 選手群の普通歩行と対照群の両歩行は, 歩幅が80cm付近で, 歩長が限界に達し, その後のスピードの増加は, 歩数の増加によって得ているが, やがて歩数の増加も限界に達し, 歩行困難になるということがわかった.<BR>6.競歩における選手群と対照群の歩長と歩数の差を比較すると, 歩数より歩長に大きな違いをみることができ, 速いスピードまで歩くには, 歩長を大きくできることが条件になると考えられる.<BR>7.対照群に競歩を行わせた場合, 選手群ほど歩長を伸ばすことはできず, 歩行スピードを高めることはできないが, 普通歩行よりは速いスピードの160m/minまで歩行を可能とし, この時, 77.5%Vo<SUB>2</SUB>maxの強度に相当する運動を行うことができた.これにより, 競歩は呼吸循環器系の改善に十分効果的な強度の運動法であることが示唆された.
著者
齊藤 美奈子 加賀谷 煕彦 森井 秀樹 中川 喜直 木村 直人 吉田 博幸 広田 公一
出版者
日本体力医学会
雑誌
体力科學 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.31-40, 1991-02-01
被引用文献数
1

rights: 日本体力医学会rights: 本文データは学協会の許諾に基づきCiNiiから複製したものであるrelation: IsVersionOf: http://ci.nii.ac.jp/naid/110001929615/The purpose of this study was to clarify some of the characteristics of race-walking, especially the relationship between walking speed and oxygen requirement, and stride in race-walking and normal walking, and to examine whether rase-walking is effective for the maintenance and promotion of health. The subjects were five male race-walkers (race-walker group) and five male college students (control group). The results obtained were as follows : 1.Under race-walk conditions,the highest speeds attained in the race-walker and control groups were 200〜220 m/min and 160m/rnin, respectively. Under normal walking conditions, however, the values were 140 m/nlin in both groups. 2.A lower oxygen requirement was observed at slower speed during normal walking and at a higher speed(over 130 m/min) during race-walking. 3.Oxygen requirement(ml/kg/100 m) in the race-walker group was minimal at 60〜80 m/min during race-walking and at 60 m/min during normal walking.Values in the control group were minimal at 60 m/min under both walking conditions. 4.The oxygen requirement in the race-walker group was less than that of the control group under both walking conditions. 5.Under normal walking conditions,as the speed increased,both step-length and step frequency gradually increased,until step-length reached a limit of 80 cm. Thereafter, walking was maintained only by an increase in step frequency.However,in the race-walkes group,the subjects were capable of increasing their step-length further,and maintaining a higher speed(up to 220m/min). 6.It was suggested that race-walking is one of the most efficient exercises for maintaining and improving health.
著者
井上 恵子 西川 〓八 木村 直人 広田 公一
出版者
日本体力医学会
雑誌
体力科學 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.156-165, 1992-04-01
被引用文献数
2 2

日常継続的な運動を行っていない6名の男子学生(23〜25才)に対し, 主に上腕二頭節がコンセントリックおよびエクセントリック収縮となるような重量負荷運動を課した. 運動強度は20%MVCであった. そしてその運動の3週間後に同一運動(2nd Ex.)を再負荷し, 筋痛と血清CK活性値, および白血球数におよぼす影響について検討し, 以下の結果を得た. 1. 血中乳酸値は, 1st, 2nd Ex.とも運動直後に有意(p<0.01)な上昇を示し, 運動終了6時間後には安静レベルに戻った. 血中乳酸値は, 両運動間ではとんど差はみられなかった. 2. 白血球数は1st Ex.および2nd Ex.ともに運動終了直後から6時間後まで一過性に増加し, その後安静レベルに戻ったが, 運動終了7日後に再び上昇を示した. 1st Ex.の運動終了6時間後と7日後に, 5%レベルで安静値より有意な上昇が認められた. 3. 血清CKは, 1st Ex.において5名に安静値からの著しい上昇(266〜763%)がみられ, 上昇のピークは運動終了3〜4日後と遅延した上昇を示した. これに対し2nd Ex.のCKは僅かな変動しか示さなかった. 血清CK値の両運動間には有意(p<0.01)な差が認められた. 4. 1st Ex.の運動後, 3〜7日間に亘って被検者全員に筋痛が認められ, そのピークは運動終了2日後であった. しかし2nd Ex.においては, 筋痛の程度は軽く, 消失も早くなる傾向が認められた. 5. 2nd Ex.において, 1st Ex.と同程度の筋痛が見られた被検者YIについては, CKについても1st Ex.と同様の上昇が認められた. しかしその値は, CK上昇が見られた5名中最も低い値であった. 以上のことから, 1st Ex.により, 新組織に損傷を与え筋痛を引き起こしたものと思われるが, 2nd Ex.で認められた筋痛と白血球数およびCK逸脱の低減は, 筋組織の損傷後修復過程が進行し, 3週間後の運動負荷に対し耐えうる準備ができたことによると推察された. また, 1st Ex.においてCK上昇の程度が低かった者には2nd Ex.においても筋痛とCKの低減が認められず, 筋組織に適応を引き起こす閾値が存在することが推測された.