著者
西川 青季
出版者
一般社団法人 日本数学会
雑誌
数学 (ISSN:0039470X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.245-256, 2000-07-28 (Released:2008-12-25)
参考文献数
28
著者
小田 忠雄 高木 泉 石田 正典 西川 青季 砂田 利一 森田 康夫 板東 重稔 新井 仁之 堀田 良之
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1995

本研究の目的および実施計画に沿って,研究代表者,研究分担者および研究協力者は,多様体に関する数理科学的諸問題を次のように研究した.1. トーリック多様体を代数幾何・代数解析・微分幾何の見地から研究し,交差コホモロジー,トーリック多様体への正則写像,トーリック・ファノ多様体の分類および複素微分幾何学的計量に関して新知見を得た.2. 多様体を数論・数論的幾何の見地から研究し,アーベル曲面等の有理点の分布,2次元エタール・コホモロジーに関するテート予想,クリスタル基本群・p進ホッジ理論に関して新知見を得た.3. 非アルキメデス的多様体の代数幾何学的研究を行い,剛性に関する新知見を得た.4. 可微分多様体,リーマン多様体,共形平坦多様体の大域解析的性質,双曲幾何学的性質,基本群の離散群論的性質を研究して数々の新知見を得た.5. 多様体上のラプラシアンやシュレーディンガー作用素のスペクトルの,量子論・準古典解析的研究および数理物理的研究を行うとともに,グラフに関する類似として離散スペクトル幾何に関しても興味深い数々の結果を得た.6. 生物等の形態形成を支配すると考えられる反応拡散方程式等の非線形偏微分方程式系を多様体上で大域的に研究し,安定性に関する新知見を得た.7. ケーラー多様体上のベクトル束の代数的安定性とアインシュタイン・エルミート計量に関する複素幾何学的研究を行い,いくつかの新知見を得た.8. 擬微分作用素・極大作用素・有界線形作用素・作用素環等を実解析・複素解析・フーリエ解析的側面から研究し,数々の新知見を得た.
著者
西川 青季 上野 慶介 井関 裕靖
出版者
東北大学
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
2000

本研究の目的は,調和写像の無限遠境界値問題を一般の負曲率等質リーマン多様体に対して研究することである.このような空間の中で,カルノー群とよばれる巾零リー群の1次元可解拡大として得られる「カルノー空間」は,対称空間の一般化として重要なカテゴリーをなす.本研究の目標は,このカルノー空間のカテゴリーにおいて,理想境界として現れる巾零リー群上の幾何学・解析学と,内部領域として現れる可解リー群上の幾何学・解析学の相互関係を,「調和写像の無限遠境界値問題」を通して調べることであり,そのためにはまず,解として得られる調和写像の無限遠理想境界の近傍での正則性(微分可能性)を詳しく調べる必要がある.昨年度の研究において,研究分担者・上野は,「複素双曲型空間形から実双曲型空間形への固有な調和写像で,無限遠境界まで連続的可能性をもって延びるものは存在しない」ことを証明したが,その際調和写像の無限遠境界での正則性は,カルノー空間の不変計量の無限遠境界の近傍での発散のオーダーと密接に関係することが明らかになった.今年度は,この点に関してさらに考察し,次の結果を得た.1.定義域のカルノー空間のステップ数が,値域となるカルノー空間のステップ数よりも小さい場合(例えば,複素双曲型空間形から実双曲型空間形への場合),無限遠境界の近傍での不変計量の発散のオーダーが同じであっても,固有な調和写像の無限遠境界の近傍での漸近挙動は,その境界値から完全には決定できない.2.定義域のカルノー空間のステップ数が,値域となるカルノー空間のステップ数よりも大きいか等しく,かつ無限遠境界の近傍での不変計量の発散のオーダーが同じである場合には,固有な調和写像の無限遠境界の近傍での漸近挙動は,その境界値から完全に決定される.西川はこの結果を,上海で開催された国際研究集「International Conference on Modern Mathematics」において,招待講演として発表した.