著者
寺下 智美 立原 素子 堂國 良太 吉崎 飛鳥 関谷 怜奈 田村 大介 山本 正嗣 上領 博 小林 和幸 西村 善博
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.163-167, 2018-03-25 (Released:2018-03-29)
参考文献数
11
被引用文献数
1

背景.炎症性筋線維芽細胞腫inflammatory myofibroblastic tumor(IMT)は稀な低悪性度の軟部腫瘍であり,術前診断しえた例は非常に少ない.症例.39歳,男性.健診での胸部異常陰影の精査目的で当院を紹介受診された.胸部CTでは造影効果を伴う左B8をほぼ閉塞するような境界明瞭な4 cm大の腫瘤影を認めるも,血液検査では炎症反応の亢進や腫瘍マーカー値の上昇を認めなかった.気管支鏡検査では左B8に発赤を伴う腫瘤の露頭を認めた.経気管支針生検transbronchial needle aspiration(TBNA)にてリンパ球などの炎症細胞の浸潤を伴った細胞密度の高い紡錘形細胞の増生を認め,α-smooth muscle actin(αSMA)とanaplastic lymphoma kinase(ALK)陽性であったためIMTと診断した.結論.本症例のように若年者の孤発結節影を認めた場合,IMTを鑑別にあげる必要がある.TBNAとALKの免疫染色は,術前診断に有用な手法であると考えられた.
著者
西村 善博 前田 均 田中 勝治 橋本 彰則 橋本 由香子 横山 光宏 福崎 恒
出版者
The Japanese Respiratory Society
雑誌
日本胸部疾患学会雑誌 (ISSN:03011542)
巻号頁・発行日
vol.29, no.7, pp.795-801, 1991-07-25 (Released:2010-02-23)
参考文献数
18
被引用文献数
8

加齢による呼吸筋力の変化を検討するため, 成人116名 (男性57例, 女性59例) を対象に, 座位にて全肺気量位での呼気最大口腔内圧 (PEmax) 及び残気量位での吸気最大口腔内圧 (PImax) を測定した. 口腔内圧測定の至適回数に対する予備的検討で, 最低3回測定すれば再現性のよい値が得られたので, 3回測定での最大値を用いた. PEmaxの平均値は, 男女それぞれ123.6cmH2O及び79.0cmH2O, PImaxの平均値はそれぞれ98.4cmH2O及び71.9cmH2を示し, 性別間で有意差を認めた. PEmax及びPImaxは男女とも年齢との間に有意な負の相関を認めた. PEmaxは全肺気量と有意な正相関を, PImaxは残気率と有意な負の相関を認めた. 残気率は加齢による増加を認めた. 以上の呼吸筋力の検討より, 加齢による吸気筋力低下の原因の一つに経年的な残気率増大が関与している可能性が示唆された. 一方, 呼気筋力の経年的筋力低下は肺機能諸量と明確な関係を示さず, 栄養状態, 全身的筋力低下など多因子の関与が推測された. 最大口腔内圧測定は最低3回行えば再現性のある値の得られることが確認された.
著者
西村 善博 山本 正嗣 小林 和幸 永野 達也
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

粒径が0.1µm以下のナノ粒子(PM0.1)は肺胞まで到達し、その影響は全身へと波及することから、健康への影響が懸念されている。しかし、PM0.1が喘息の増悪や難治化に及ぼす影響は分かっておらず、本研究ではそれを明らかにする。まず、粒子状物質の分級サンプリングが可能なナノサンプラーⅡ(Kanomax)を用い、2019年2月7日から2月12日の5日間、東京都新宿区において計640.5µgのPM0.1を回収した。次に、マウス喘息モデルの作成およびPM0.1の経鼻投与実験を行った。すなわち、OVA(卵白アルブミン)10µg/匹と水酸化アルミニウム1mg/匹をDay1とDay8に腹腔注射してOVAに感作させたマウスに、PM0.1 10µg/匹とOVA 200µg/匹をDay14,15,16に経鼻投与し、Day17に気管支肺胞洗浄液を採取した(PM0.1群)。OVA群、PBS群では、Day14,15,16にOVAのみ、ないしPBSのみを投与した。気道炎症の評価として気管支肺胞洗浄液の総細胞数、好酸球数の解析をしたところ、PM0.1群およびOVA群ではPBS群に比して有意な上昇を認めたが、PM0.1群とOVA群の間に差を認めなかった。また、上記のPM0.1群とOVA群に対して、Day14, 15, 16の経鼻投与1時間前にステロイド(デキサメタゾン20µg/匹)を腹腔注射する治療実験も行った。ステロイド投与により、PM0.1群、OVA群ともに総細胞数、好酸球数の減少を認めたが、ステロイドへの反応性は2群間で有意な差を認めなかった。上記の結果、PM0.1と喘息の増悪や難治化には関係性がみられない可能性があるが、粒子径の違いにより気道炎症の程度に差が生じる可能性があり、引き続きPM2.5やPM10といった粒径のより大きな物質との比較検討を行う予定である。