著者
橋﨑 孝賢 木下 利喜生 左近 奈々 児嶋 大介 森木 貴司 上西 啓裕 関口 岳人 西村 行秀
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.42 Suppl. No.2 (第50回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.1275, 2015 (Released:2015-04-30)

【目的】Ehlers-Danlos症候群(EDS)は,皮膚,関節,血管など結合組織の脆弱性を引き起こす遺伝性疾患である。今回,複数下肢関節不安定性を有するEDS症例に装具作製を行い,有効な効果を得たので,装具処方の工夫や経過をふまえて報告する。【症例提示】46歳女性。平成9年,スノーボードで転倒,右膝外傷,関節鏡検査し保存的加療を実施。43歳頃より両膝関節に強い荷重時痛が頻発した。平成24年12月,後頚部痛出現し,頚椎すべり症指摘され平成25年7月初旬に手術考慮され当院整形外科受診,EDSを疑われた。8月中旬に手術目的で当院入院。術前よりリハビリテーション紹介となり,翌日頚椎除圧固定術施行。術後歩行時に両側反張膝,右膝外反位が著明となり右膝痛強く,歩行困難となった。歩行獲得のため両側長下肢装具作製開始した。【経過と考察】活動性や美容面を考慮し装具を作製した。当初は膝装具での対応を試みたが荷重時の足関節不安定性が著明となるため長下肢装具(LLB)を選択した。軽量化と強度を考慮し剛性の高いカーボン素材とポリエチレンを使用しチタン素材の支柱と膝継手で連結した。この装具により両膝・足関節の不安定性は除去できたが,右膝外反矯正は不十分であった。さらに膝継手の内側にパッドや足部に内側ウェッジを追加することで外反は矯正され良肢位となり歩行の安定と疼痛や不安定性が除去できた。これにより自覚症状や歩容の改善が得られ独歩で自宅退院した。本症例のように膝関節の不安定性だけではなく足関節や多関節の不安定性が強い場合は,膝装具での矯正が困難な場合が多い。活動性が高い症例においてLLBは外見や重量から敬遠されがちであるが,患者の状態や要望を十分把握するのみではなく,医学的にも適切な装具を医師,義肢装具士らと協力し作製していく必要があると考えた。
著者
木下 利喜生 田島 文博 児嶋 大介 橋崎 孝賢 川西 誠 森木 貴司 吉田 知幸 上西 啓裕 西村 行秀 中村 健
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2015, 2016

【はじめに,目的】近年,脳卒中患者における急性期リハビリテーション(リハ)の有効性が明らかになっている。本邦をはじめ,多くの国のガイドラインにおいても医学的に安定した脳卒中患者のリハはできるだけ早期に始めるよう勧められている。先行研究では早期にリハを開始した方がActivity of Daily Living(ADL)障害,抑うつ症状,Quality of Lifeの改善が良好で,早期リハ実施の安全性も示されている。我々の施設においても,以前より急性期からの積極的なリハに取り組んでいる。しかし急性期病院入院期間中だけを調査した短期効果は示されていない。また先行研究における早期リハ開始時間は脳卒中発症24時間以内や48時間以内,長いものでは72時間以内と定義されているものもあり,リハ開始時間は統一されていない。今回,脳卒中発症直後の患者をリハ開始時間により3群にわけ,リハ効果を検討する事で急性期病院における早期リハ介入効果,および適切なリハ開始時間の検討を試みた。【方法】本研究はprospective cohort studyであり,2014年7月から2015年4月までに入院した初発脳卒中片麻痺患者227名を対象とした。除外基準は発症前modified Rankin Scale score<4,神経症状が増悪しているもの,重篤な心不全,下肢骨折などにより運動療法が困難なものとした。発症からリハ開始までを24時間以内(Very Early Mobilization;VEM群),24~48時間まで(Early Mobilization;EM群),48時間以上(Usual care;UC群)の3群に分け,リハ開始時,転帰時のGlasgow Coma Scale(GCS),National Institutes of Health Stroke Scale(NIHSS),Functional Independence Measure(FIM)を測定し,急性期のリハ介入時期による効果を比較した。また死亡者数,脳卒中再発数を比較し安全性の検討も行った。GCS,NIHSS,FIMにおける3群間の比較にはKruskal-Wallis testを行いpost hocはDunn's testを使用した。それ以外の項目はANOVAを行いpost hocはTukey-Kramerを用いた。また死亡者数,再発数の比較はχ2 testを使用した。【結果】対象は24時間以内が47名(内2名[4%]死亡,1名[2%]再発),24~48時間が77名(内4名[5%]死亡,6名[8%]再発,1名[1%]心不全),48時間以上が103名(内7名[7%]死亡,4名[4%]再発,2名[2%]心不全)であり,3群間の死亡者数,再発者数に有意差はなかった。リハ開始時のGCS,NIHSS,FIMに有意差はなく,転帰時のGCSではVEM群が他の2群より有意に高く,NIHSSにおいてもVEM群がUC群よりも有意に良好であった。また転帰時のFIMはtotal score,motor subscale,cognition subscaleともに3群間に有意差はなかったが改善量で比較したところVEM群のtotal score,motor subscaleは他の2群より有意な改善量を示した。【結論】脳卒中患者に対する急性期リハは発症24時間以内に開始する事で高いADL,GCS,NIHSSの改善が得られる事が判明した。さらに発症24時間以内に介入しても危険性が増す事はなかった。すなわち脳卒中患者における急性期リハの効果は1日開始が遅れるだけで影響をうける可能性がある。