著者
沼野 藤夫 GRANDOS Juli PARK Y.B HOFFMAN Gray REYESーLOPEZ ペドロエー ROSENTHAL Ta ARNETT Frank MECHRA N.K. SHARMA B.K. PREEYACHIL C SUWANWELA Ni 角田 恒和 能勢 真人 松原 修 木村 彰方 長沢 俊彦 西村 泰治 CHARAOENWONGSE P. REYES-ROPEZ P.A. GRANDOSE J. PEDRO A Reye FRANK C Arne YACOV Itzcha N.K Mehra B.K Sharma NITAYA Suwan Y.B Park
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1994

高安動脈炎は非特異性血管炎であり、その成因は不明で、我国では難病の1つに指定されている。長年の研究の結果、この血管炎の発生に自己免疫機序の関与が示唆されるが、まだ十分解明されるまでには至っていない。本症は、臨床的にもいくつかの特徴が明らかにされており、(1)若年女性に多発し、(2)アジア諸国に多く、欧米に少ない種属差が知られている。我々は、本症の成因に遺伝要因の関与を想定し、現在までにHLA A24-B52-DR2のhaplotypeが本症患者に有意に高い頻度で出現していることを確認し、この事実がアジア諸国に多発する本症の謎と解きあかす鍵と考えられた。なぜならばB52の高い出現頻度を示しアジア諸国、アメリカインディアン、南米と本症の多発地域とが一致するからである。その後の検索で南米、韓国、インド等に於いても、本症患者にB-5 or B-52が有意に高い頻度を示すことが明らかにされてきている。そこで本症の病態につき国際研究を開始したが、この国際比較に於いていくつかの新しい事態が明らかにされた。その1つは、各国によって男女比が異なることである。我国では、女性が圧倒的に多い事実に対して西方にゆくに従って、その比率が減少し、イスラエル、トルコでほぼ6:4の割合までにゆくことである。もう1つは種属によりその臨床病態が異なり、我国では上行大動脈より大動脈弓部にかけての病変が多いのに対し、インド、タイ、南米(メキシコ、ペル-)ではむしろ腹部大動脈に病変が多いという差が明らかにされた。特にインド等では腹部大動脈に限局した患者もかなり認められた。このことから病態の分類に腹部大動脈の病変のみを含めた新しい体系を国際間で取り決め、この新分類に従った患者の実態を目下明らかにしつつある。このことはHLAの研究に於いても新たな展開を開かしめた。我々の研究に於いてHLA B-39の存在が健康日本人に比し有意に高い統計上の成績が得られたが、実数はわずか10名に満たぬ程であった為に放置しておいたが、そのDNAレベルの研究から、本症患者にのみ認められるB-39-2という新しいタイプの存在が発見された。そしてこのB-39は南米や東南アジア諸国に於いてはB-52より高い出現頻度を示しており、B-39と連鎖不平衡を示す遺伝要因が改めて注目されるようになっている。目下、各国に於いてB-39の出現頻度とその臨床病態との比較が新たなテーマとして取り上げられ、目下検討が成されつつある。このDNAレベルの解析は、各国より送ってもらった血液にて当大学で目下行いつつある。