著者
角田 鉄人
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.57, no.9, pp.414-415, 2009-09-20 (Released:2017-06-30)
参考文献数
5

光延反応は,リン原子の持つ高い酸素親和性を巧みに利用し,活性水素を持つ広い意味での酸性化合物(HA)とアルコールとを脱水的に縮合させる反応である。利用できるHAとしてカルボン酸,フェノールなどの酸素求核剤,イミドを代表とする窒素求核剤,さらにはイオウ求核剤や炭素求核剤もあげられる。光延反応は,反応の一般性,信頼性,応用性の広さ故,今日の有機合成化学を支える重要な素反応となり,多くの有機化学者がその恩恵に浴している。
著者
小栗 友紀 角田 鉄人 加来 裕人 堀川 美津代 稲井 誠 黒田 英莉 鈴木 真也 田中 正己 伊藤 卓也 高橋 滋
出版者
天然有機化合物討論会実行委員会
雑誌
天然有機化合物討論会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.56, 2014

<p> アブラムシの中には鮮やかな体色をもつものも多く,その体色表現にポリケタイド系色素が深く関わっていることが分かってきた.そして当研究室では,これまでにイタドリに寄生するユキヤナギアブラムシ(Aphis spiraecola,黄色)から黄色色素furanaphin<sup>1)</sup>を,セイタカアワダチソウに寄生するセイタカアワダチソウヒゲナガアブラムシ(Uroleucon nigrotuberculatum,赤色)から赤色色素uroleuconaphin A<sub>1</sub>, B<sub>1</sub>,<sup>2)</sup>黄色色素xanthouroleuconaphin<sup>3)</sup>を,ソラマメヒゲナガアブラムシ(Megoura crassicauda,緑色)から緑色色素viridaphin A<sub>1</sub> glucoside<sup>4,5)</sup>を単離し構造決定した.その他,megouraphin glucoside A, Bやuroleuconaphin A<sub>2a,b</sub>, B<sub>2a,b</sub>の構造決定も行った (Fig. 1).一方,これら色素はポリケタイドであることから,生物活性も期待された.実際,</p><p>Fig. 1</p><p>ヒト前骨髄性白血病細胞 (HL-60)に対する細胞毒性試験を行ったところ,furanaphinのIC<sub>50</sub>は25 mM,uroleuconaphin A<sub>1</sub>では30 mM,uroleuconaphin B<sub>1</sub>が10 mM,viridaphin A<sub>1</sub> glucosideが23 mMと,弱いながらも細胞毒性を示した.このように当研究室ではアブラムシのもつ色素成分に注目して研究してきたが,今回は無色透明のアブラムシCryptomyzus sp.について調べた.当然のこととして,色素は存在しないと考えられるが,それに代わる何らかの化合物の存在を期待した.</p><p>1. 構造決定</p><p>1-a. 抽出と単離</p><p> Cryptomyzus sp.はヤブサンザシ(Ribes fasciculatum)の葉裏にひっそりと目立たず寄生している無色で透明感のあるアブラムシである.体長わずか0.5-1 mmの極小な昆虫であることから,テントウムシなどの捕食昆虫にとっては極めて発見しにくいものと思われる.このアブラムシを刷毛で掃き集め,エーテル中で潰して成分を抽出した.このエーテル抽出物を順相及び逆相クロマトグラフィーを繰り返し,4種の無色結晶cryptolactone A<sub>1 </sub>(1), A<sub>2 </sub>(2)(A<sub>1 </sub>: A<sub>2</sub> = 6.2:1)およびcryptolactone B<sub>1 </sub>(3), B<sub>2 </sub>(4) (B<sub>1 </sub>: B<sub>2</sub> = 4.7:1)を得た (Fig. 2).当然ながら着色成分は一切得られなかった.</p><p>Fig. 2</p><p>1-b. Cryptolactone A<sub>1</sub> (1)およびA<sub>2 </sub>(2)の構造</p><p> Cryptolactone A<sub>1 </sub>(1)の分子式はCI-HRMSよりC<sub>18</sub>H<sub>30</sub>O<sub>4</sub>と決定した.またIRスペクトルから水酸基 (3407 cm<sup>-1</sup>),カルボニル基 (1712 cm<sup>-1</sup>)の吸収が観測された.<sup>13</sup>C-NMRより18個の炭素シグナルが観測され,DEPTより1個のメチル基 [d<sub>C</sub>/d<sub>H</sub> 14.1/0.88],11個のメチレン基 [d<sub>C</sub>/d<sub>H</sub> 29.9/2.34 and 2.41, 41.5/1.75 and 1.82, 48.8/2.53 and 2.66, 43.6/2.43, 23.6/1.57, および 22.6, 29.1, 29.2, 29.3, 29.4, 31.8/1.26-1.32],4個のメチン基 [d<sub>C</sub>/d<sub>H</sub> 121.4/6.03, 145.2/6.89, 74.8/4.74, 63.7/4.39],2個のカルボニル炭素 [d<sub>C</sub> 164.2 and 212.2] の存在を確認した.またこれらデータから2個のオキシメチン基 [d<sub>C</sub>/d<sub>H</sub> 74.8/4.74, 63.7/4.39],2個のオレフィン炭素 [d<sub>C</sub>/d<sub>H</sub> 121.4/6.03, 145.2/6.89]の存在も確認できた.最終的にHMBC実験の詳細な検討により,化合物1はb-ヒドロキシケトン構造を側鎖にも</p><p>(View PDFfor the rest of the abstract.)</p>
著者
西村 太一 堀川 美津代 加来 裕人 角田 鉄人 西井 健 前川 春賀 稲井 誠 伊藤 卓也 鈴木 真也 島津 光明 竹林 純 八木 康行
出版者
天然有機化合物討論会実行委員会
雑誌
天然有機化合物討論会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.55, pp.PosterP-51, 2013

<p> アブラムシの中には色鮮やかな体色をしているものがあり,その体色はポリケタイド系色素由来であることが明らかとなってきた.これら色素の役割として,保護色を構成する要素であることが考えられる.さらにポリケタイドであることから,アブラムシ自身の生体防御物質である可能性が考えられたが,その実験的証拠はなかった.しかし,最近の我々の研究で非常に興味深いデータが得られた.すなわち,エンドウヒゲナガアブラムシから単離された赤色色素uroleuconaphin類 (1-4) をアブラムシに感染能力のある昆虫病原菌二種,不完全菌(Lecanicillium sp.)と昆虫疫病菌(Conidiobolus obscurus)に対して成長阻害活性試験を行ったところ,配糖体 1, 2では活性が無いものの,アグリコン 3, 4では活性を有することがわかった<sup>1)</sup>.アグリコン 3, 4は, 死亡したアブラムシ(感染死)から単離できることから,自らを犠牲にして病原菌の増殖をおさえていることが示唆された (Fig. 1). </p><p> </p><p>Fig.1</p><p> </p><p> 当研究室ではこれまでに、ユキヤナギアブラムシから黄色色素furanaphin (5)<sup>2)</sup>, エンドウヒゲナガアブラムシとソラマメヒゲナガアブラムシからは黄色色素megouraphin glucoside A (6)<sup>3)</sup>, キョウチクトウアブラムシから黄色色素6-hydroxymusizin (7)<sup>2)</sup>,セイタカアワダチソウヒゲナガアブラムシからは上記の色素1-4の他に黄色色素xanthouroleuconaphin (8)<sup>4)</sup>, さらにその配糖体 9と, 7の配糖体10を単離してきた (Fig. 2). </p><p> </p><p> </p><p>Fig.2</p><p> しかし,これらの色素について詳細な生物活性は調べきれていない.サンプル量の確保が難しいことが原因となっている.今回我々はアブラムシ色素のもつ生物学的意味を解明することを目標として,色素の生物活性を多面的に評価することを計画した.また,先に述べたように糖部分の有無で活性に差があることから,他の色素も同様のことが考えられるので,その点についても活性比較を行うことを念頭に,これら色素の大量合成を目標にした.今回合成した色素について,抗菌活性試験,細胞毒性試験,抗酸化能試験,昆虫疫病菌に対する成長阻害活性試験を行ったので報告する.</p><p>1. BF<sub>3</sub>•2AcOHを用いたFries転位</p><p> 先ず,5, 6の合成を計画し,その出発原料として12を選んだ. 12をHWE反応により炭素鎖伸長した後に,脱保護,環化によりアセテート16を合成した.一方,7, 8の合成のために13を出発原料としてフェニルスルホン18に変換後,19とのMichael付加,加水分解,環化により20とし,続く脱離反応によりナフトール体へと導き,フェノール性水酸基をアセチル基で保護してアセテート21を得た (Scheme 1).</p><p> </p><p> </p><p>Scheme 1</p><p> </p><p> 次に16, 21に対してBF<sub>3</sub>•OEt<sub>2</sub>存在下でのFries転位を試み,22,</p><p>(View PDFfor the rest of the abstract.)</p>
著者
角田 鉄人 堀川 美津代 加来 裕人
出版者
徳島文理大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究によって,世新しい光延試薬CMMP,CMBP等のホスホラン型の試薬を世界で先駆けて開発できた.また研究例のほとんどないデラセミ化法を開発できた。例えばラセミ体の3-ベンジル-2-ヘキサノンを光学活性なホスト分子と塩基性条件下で処理すると、93%の収率で99%eeのS体に変化した.これら手法を用い不斉3級炭素,不斉なアルコールさらに不斉なアミン類を効率よく調整できるようになった。これら新反応を利用してアブラムシの生体防御物質であるポリケタイド類の全合成を行った。