著者
藤野 真希 川上 隆茂 門田 佳人 井上 正久 藤代 瞳 角 大悟 鈴木 真也
雑誌
日本薬学会第141年会(広島)
巻号頁・発行日
2021-02-01

【背景・目的】亜鉛の生活習慣病に対する重要性は、様々な基礎研究や疫学研究から示されているが、単純な亜鉛摂取では説明できない細胞内の亜鉛調節機構の重要性も明らかになりつつある。他方、メタロチオネイン(MT)は亜鉛によって誘導され、生理的役割として細胞内における亜鉛や銅などの必須金属の代謝調節機能を有するが、MT遺伝子欠損条件における生活習慣病発症に対する亜鉛の効果の程度については不明な点が多い。本研究では野生型(WT)およびMT欠損マウスを用いて、高脂肪食(HFD)誘導性の生活習慣病に対する亜鉛の効果とそれに対するMTの寄与について比較検討した。【方法】雄性8週齢のWTおよびMT欠損マウスにHFDを亜鉛を含む飲料水(0、227および1135 mg/L)と共に10週間自由摂取させた。6週目に糖負荷試験を行い、解剖時に肝臓および内臓脂肪組織(WAT)重量を測定した。一部の肝臓は、HE染色法による組織学的検索を行った。また、ICP-MSを用いて肝臓および血漿中の亜鉛濃度を測定した。【結果・考察】ICP-MSの解析結果より、肝臓中の亜鉛濃度は、両系統マウスの亜鉛処理群間で同程度であった。WTマウスの血漿中の亜鉛濃度は、亜鉛処理によって用量依存的に増加していたが、MT欠損マウスでは変化は認められなかった。①WTマウスでは亜鉛処理によりWAT重量が有意に低下し、②HFD誘導性の脂肪肝および耐糖能異常の改善が認められた。③一方、MT欠損マウスでは、高濃度の亜鉛処理でもWAT重量の低下、脂肪肝および耐糖能異常の改善は認められなかった。亜鉛処理により両系統マウスの肝臓には同程度の亜鉛が存在していたにもかかわらず、WTマウスで認められた亜鉛補充による生活習慣病の改善作用はMT欠損マウスでは認められなかった。 以上、亜鉛による糖尿病および脂肪肝改善作用の感受性決定遺伝子としてMTが重要な役割を担っており、その作用の一部にWAT重量の低下の関与が示唆された。
著者
小栗 友紀 角田 鉄人 加来 裕人 堀川 美津代 稲井 誠 黒田 英莉 鈴木 真也 田中 正己 伊藤 卓也 高橋 滋
出版者
天然有機化合物討論会実行委員会
雑誌
天然有機化合物討論会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.56, 2014

<p> アブラムシの中には鮮やかな体色をもつものも多く,その体色表現にポリケタイド系色素が深く関わっていることが分かってきた.そして当研究室では,これまでにイタドリに寄生するユキヤナギアブラムシ(Aphis spiraecola,黄色)から黄色色素furanaphin<sup>1)</sup>を,セイタカアワダチソウに寄生するセイタカアワダチソウヒゲナガアブラムシ(Uroleucon nigrotuberculatum,赤色)から赤色色素uroleuconaphin A<sub>1</sub>, B<sub>1</sub>,<sup>2)</sup>黄色色素xanthouroleuconaphin<sup>3)</sup>を,ソラマメヒゲナガアブラムシ(Megoura crassicauda,緑色)から緑色色素viridaphin A<sub>1</sub> glucoside<sup>4,5)</sup>を単離し構造決定した.その他,megouraphin glucoside A, Bやuroleuconaphin A<sub>2a,b</sub>, B<sub>2a,b</sub>の構造決定も行った (Fig. 1).一方,これら色素はポリケタイドであることから,生物活性も期待された.実際,</p><p>Fig. 1</p><p>ヒト前骨髄性白血病細胞 (HL-60)に対する細胞毒性試験を行ったところ,furanaphinのIC<sub>50</sub>は25 mM,uroleuconaphin A<sub>1</sub>では30 mM,uroleuconaphin B<sub>1</sub>が10 mM,viridaphin A<sub>1</sub> glucosideが23 mMと,弱いながらも細胞毒性を示した.このように当研究室ではアブラムシのもつ色素成分に注目して研究してきたが,今回は無色透明のアブラムシCryptomyzus sp.について調べた.当然のこととして,色素は存在しないと考えられるが,それに代わる何らかの化合物の存在を期待した.</p><p>1. 構造決定</p><p>1-a. 抽出と単離</p><p> Cryptomyzus sp.はヤブサンザシ(Ribes fasciculatum)の葉裏にひっそりと目立たず寄生している無色で透明感のあるアブラムシである.体長わずか0.5-1 mmの極小な昆虫であることから,テントウムシなどの捕食昆虫にとっては極めて発見しにくいものと思われる.このアブラムシを刷毛で掃き集め,エーテル中で潰して成分を抽出した.このエーテル抽出物を順相及び逆相クロマトグラフィーを繰り返し,4種の無色結晶cryptolactone A<sub>1 </sub>(1), A<sub>2 </sub>(2)(A<sub>1 </sub>: A<sub>2</sub> = 6.2:1)およびcryptolactone B<sub>1 </sub>(3), B<sub>2 </sub>(4) (B<sub>1 </sub>: B<sub>2</sub> = 4.7:1)を得た (Fig. 2).当然ながら着色成分は一切得られなかった.</p><p>Fig. 2</p><p>1-b. Cryptolactone A<sub>1</sub> (1)およびA<sub>2 </sub>(2)の構造</p><p> Cryptolactone A<sub>1 </sub>(1)の分子式はCI-HRMSよりC<sub>18</sub>H<sub>30</sub>O<sub>4</sub>と決定した.またIRスペクトルから水酸基 (3407 cm<sup>-1</sup>),カルボニル基 (1712 cm<sup>-1</sup>)の吸収が観測された.<sup>13</sup>C-NMRより18個の炭素シグナルが観測され,DEPTより1個のメチル基 [d<sub>C</sub>/d<sub>H</sub> 14.1/0.88],11個のメチレン基 [d<sub>C</sub>/d<sub>H</sub> 29.9/2.34 and 2.41, 41.5/1.75 and 1.82, 48.8/2.53 and 2.66, 43.6/2.43, 23.6/1.57, および 22.6, 29.1, 29.2, 29.3, 29.4, 31.8/1.26-1.32],4個のメチン基 [d<sub>C</sub>/d<sub>H</sub> 121.4/6.03, 145.2/6.89, 74.8/4.74, 63.7/4.39],2個のカルボニル炭素 [d<sub>C</sub> 164.2 and 212.2] の存在を確認した.またこれらデータから2個のオキシメチン基 [d<sub>C</sub>/d<sub>H</sub> 74.8/4.74, 63.7/4.39],2個のオレフィン炭素 [d<sub>C</sub>/d<sub>H</sub> 121.4/6.03, 145.2/6.89]の存在も確認できた.最終的にHMBC実験の詳細な検討により,化合物1はb-ヒドロキシケトン構造を側鎖にも</p><p>(View PDFfor the rest of the abstract.)</p>
著者
西村 太一 堀川 美津代 加来 裕人 角田 鉄人 西井 健 前川 春賀 稲井 誠 伊藤 卓也 鈴木 真也 島津 光明 竹林 純 八木 康行
出版者
天然有機化合物討論会実行委員会
雑誌
天然有機化合物討論会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.55, pp.PosterP-51, 2013

<p> アブラムシの中には色鮮やかな体色をしているものがあり,その体色はポリケタイド系色素由来であることが明らかとなってきた.これら色素の役割として,保護色を構成する要素であることが考えられる.さらにポリケタイドであることから,アブラムシ自身の生体防御物質である可能性が考えられたが,その実験的証拠はなかった.しかし,最近の我々の研究で非常に興味深いデータが得られた.すなわち,エンドウヒゲナガアブラムシから単離された赤色色素uroleuconaphin類 (1-4) をアブラムシに感染能力のある昆虫病原菌二種,不完全菌(Lecanicillium sp.)と昆虫疫病菌(Conidiobolus obscurus)に対して成長阻害活性試験を行ったところ,配糖体 1, 2では活性が無いものの,アグリコン 3, 4では活性を有することがわかった<sup>1)</sup>.アグリコン 3, 4は, 死亡したアブラムシ(感染死)から単離できることから,自らを犠牲にして病原菌の増殖をおさえていることが示唆された (Fig. 1). </p><p> </p><p>Fig.1</p><p> </p><p> 当研究室ではこれまでに、ユキヤナギアブラムシから黄色色素furanaphin (5)<sup>2)</sup>, エンドウヒゲナガアブラムシとソラマメヒゲナガアブラムシからは黄色色素megouraphin glucoside A (6)<sup>3)</sup>, キョウチクトウアブラムシから黄色色素6-hydroxymusizin (7)<sup>2)</sup>,セイタカアワダチソウヒゲナガアブラムシからは上記の色素1-4の他に黄色色素xanthouroleuconaphin (8)<sup>4)</sup>, さらにその配糖体 9と, 7の配糖体10を単離してきた (Fig. 2). </p><p> </p><p> </p><p>Fig.2</p><p> しかし,これらの色素について詳細な生物活性は調べきれていない.サンプル量の確保が難しいことが原因となっている.今回我々はアブラムシ色素のもつ生物学的意味を解明することを目標として,色素の生物活性を多面的に評価することを計画した.また,先に述べたように糖部分の有無で活性に差があることから,他の色素も同様のことが考えられるので,その点についても活性比較を行うことを念頭に,これら色素の大量合成を目標にした.今回合成した色素について,抗菌活性試験,細胞毒性試験,抗酸化能試験,昆虫疫病菌に対する成長阻害活性試験を行ったので報告する.</p><p>1. BF<sub>3</sub>•2AcOHを用いたFries転位</p><p> 先ず,5, 6の合成を計画し,その出発原料として12を選んだ. 12をHWE反応により炭素鎖伸長した後に,脱保護,環化によりアセテート16を合成した.一方,7, 8の合成のために13を出発原料としてフェニルスルホン18に変換後,19とのMichael付加,加水分解,環化により20とし,続く脱離反応によりナフトール体へと導き,フェノール性水酸基をアセチル基で保護してアセテート21を得た (Scheme 1).</p><p> </p><p> </p><p>Scheme 1</p><p> </p><p> 次に16, 21に対してBF<sub>3</sub>•OEt<sub>2</sub>存在下でのFries転位を試み,22,</p><p>(View PDFfor the rest of the abstract.)</p>
著者
佐藤 政男 鈴木 真也
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.127, no.4, pp.703-708, 2007-04-01 (Released:2007-04-01)
参考文献数
16
被引用文献数
6 6

Much attention has been paid to lifestyle-related diseases including type 2 diabetes mellitus, cardiovascular disease, hypertension, and hyperlipidemia because the incidence rates of these diseases are increasing in developed countries. Elucidation of factors contributing to the development of obesity and insulin resistance is needed. Metallothionein (MT), a ubiquitous metal-binding protein, is induced not only by heavy metals but also by various kinds of stresses. Endoplasmic reticulum (ER) stress is caused by accumulation of misfolded proteins in ER. Recently, increased ER stress by obesity and impairment of insulin action by ER stress have been reported. Exposure to ER stress increased induction of MT synthesis, and an enhanced response to ER stress evaluated as expression of Bip/GRP78mRNA was observed in the liver of MT-null mice, suggesting that MT attenuates expression of ER stress. MT may prevent ER stress and thereby modulate the development of obesity and insulin resistance. A possible role of metallothionein in response reaction for ER stress is discussed.
著者
小林 美沙樹 小田中 みのり 鈴木 真也 船崎 秀樹 高橋 秀明 大野 泉 清水 怜 光永 修一 池田 公史 市田 泰彦 高橋 邦雄 齊藤 真一郎
出版者
一般社団法人日本医療薬学会
雑誌
医療薬学 (ISSN:1346342X)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.18-23, 2015-01-10 (Released:2016-01-15)
参考文献数
9
被引用文献数
1 2

Hand-foot skin reaction (HFSR) is one of the major adverse effects of sorafenib necessitating discontinuation of the drug, however, no standard interventions for HFSR have been established yet. At our hospital, we are using a urea-containing cream prophylactically for HFSR associated with sorafenib. We carried out this study in 74 hepatocellular carcinoma patients receiving treatment with sorafenib at our hospital between June 2009 and January 2011 to assess the benefit of prophylactic use of urea-containing cream against sorafenib-induced HFSR. Patients with a history of previous use of tyrosine kinase inhibitors or insufficient data in respect of the dose of urea-containing cream were excluded. The patients were divided into a high-dose group (38 patients) and a low-dose group (36 patients) according to the median dose (2.9 g per day) of urea-containing cream used within the first 2 weeks after the start of sorafenib treatment. The frequency of grade 2 or 3 HFSR was 42.1% in the high-dose group and 61.1% in the low-dose group(P = 0.105). The relative dose intensity of sorafenib was 71.1% in the high-dose group and 59.6% in the low-dose group (P = 0.043). No significant difference was observed in the response rate or time to progression between the two groups. In conclusion, prophylactic use of a urea-containing cream might enhance the relative dose intensity of sorafenib, but further prospective studies are warranted to elucidate its usefulness.
著者
鈴木 真也
出版者
研究・イノベーション学会
雑誌
年次学術大会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.32, pp.731-734, 2017-10-28

一般講演要旨