著者
白鳥 千恵子 半澤 香子 三原 貴洋 川崎 るい 許 懷哲 明石 なつき 大塚 創平 木次 洋一 西尾 里志
出版者
一般社団法人 日本獣医麻酔外科学会
雑誌
日本獣医麻酔外科学雑誌 (ISSN:21896623)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.23-28, 2020 (Released:2020-11-02)
参考文献数
20

4年前に脾臓結節性過形成の自壊による脾摘歴がある11歳のラブラドール・レトリバーが、1週間前からの元気食欲低下と血尿を主訴に来院した。全身性炎症反応症候群(SIRS)と伴に腹腔内の多発性腫瘤が認められたため、試験開腹を行った。腫瘤は大網や腹壁に散在し、それらを摘出した後の病理検査では、全て異所性脾臓と診断された。術後は良好に回復した。SIRSの主因は化膿性炎症と思われ、感染源は泌尿生殖器と推定された。偶発的に発見された異所性脾臓は、過去の良性脾臓病変の自壊による後天性の脾症と考えられた。脾摘歴のある犬の腹腔内の多発性腫瘤においては、異所性脾臓の可能性も考慮すべきと思われた。
著者
許 懷哲 絵野沢 伸 小林 英司
出版者
一般社団法人 日本臓器保存生物医学会
雑誌
Organ Biology (ISSN:13405152)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.35-41, 2019 (Released:2019-03-29)
参考文献数
26

近年,再生医療や医療機器開発の分野で,ブタを用いた研究報告の数が増している.背景として,臨床を再現できるサイズメリット,実験向けに育種されたミニブタ,マイクロミニブタといった小型ブタが比較的容易に入手できるようになったこと,そして遺伝子改変ブタの開発がある.また,愛玩動物として古い歴史のあるイヌを実験にあまり用いなくなったことも大きい.研究報告が増すことによって,基盤的な情報やプロトコールが蓄積され,今後,ますます大型実験動物としてのブタの使用が増えることが予想される.本稿では,これまでの報告から,ブタを用いた臓器・組織移植実験における免疫抑制法を紹介する.基本的には,cyclosporine あるいはtacrolimsと,mycophenolate mofetilの2剤併用が多く,一部ではさらにステロイドも投与している.また,胸腺摘出の有効性も報告されている.これらの方法により,同種移植だけでなく,ヒト組織・細胞を含む,異種移植実験も続々と報告されるようになった.