著者
許 懷哲 絵野沢 伸 小林 英司
出版者
一般社団法人 日本臓器保存生物医学会
雑誌
Organ Biology (ISSN:13405152)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.35-41, 2019 (Released:2019-03-29)
参考文献数
26

近年,再生医療や医療機器開発の分野で,ブタを用いた研究報告の数が増している.背景として,臨床を再現できるサイズメリット,実験向けに育種されたミニブタ,マイクロミニブタといった小型ブタが比較的容易に入手できるようになったこと,そして遺伝子改変ブタの開発がある.また,愛玩動物として古い歴史のあるイヌを実験にあまり用いなくなったことも大きい.研究報告が増すことによって,基盤的な情報やプロトコールが蓄積され,今後,ますます大型実験動物としてのブタの使用が増えることが予想される.本稿では,これまでの報告から,ブタを用いた臓器・組織移植実験における免疫抑制法を紹介する.基本的には,cyclosporine あるいはtacrolimsと,mycophenolate mofetilの2剤併用が多く,一部ではさらにステロイドも投与している.また,胸腺摘出の有効性も報告されている.これらの方法により,同種移植だけでなく,ヒト組織・細胞を含む,異種移植実験も続々と報告されるようになった.