著者
有松 優行 渥美 生弘 諏訪 大八郎 大熊 正剛 土手 尚 石田 惠章 齋藤 隆介 古内 加耶 小林 駿介 伊藤 静 德山 仁美 中安 ひとみ 出口 美義 光定 健太 角屋 悠貴 武田 栞幸 田中 茂
出版者
日本脳死・脳蘇生学会
雑誌
脳死・脳蘇生 (ISSN:1348429X)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.91-94, 2022 (Released:2022-08-26)
参考文献数
8

【目的】本人,家族に臓器提供の意思があったが虐待の可能性が否定できなかったために臓器提供に至らなかった1例を報告する。【症例】13歳,男性。現病歴:自宅内で首を吊っていたところを発見され,救急搬送された。経過:搬送後に経口挿管を行い,アドレナリンを投与し自己心拍が再開した。入院4日目に脳幹反射が消失し,CT検査で脳浮腫,脳波で平坦脳波を確認した。本人の保険証に臓器提供の意思が確認され,家族にもその意思があった。しかし,来院前日に父親が患者を叱責した事実が明らかになった。警察と児童相談所へ照会を行い,院内の倫理委員会で,虐待の事実は確認できないが可能性が否定できないとされた。「法的脳死判定マニュアル」1)で,脳死判定の除外例に「被虐待児,または虐待が疑われる18歳未満の児童」をあげていることから,脳死判定を行わず臓器提供も行わない方針とした。【まとめ】虐待の否定ができないことが臓器提供を行うことができないことに直結する現制度は,患者本人の意思を尊重できない可能性がある。
著者
諏訪 大八郎 西野 暢彦 松浦 めぐみ 神谷 欣志 松本 圭五 馬場 恵 田中 達郎 今野 弘之 中村 達 馬塲 正三 青木 克憲
出版者
The Japan Broncho-esophagological Society
雑誌
日本気管食道科学会会報 (ISSN:00290645)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.378-385, 1998-08-10 (Released:2010-10-20)
参考文献数
47
被引用文献数
3 2

Esophageal perforation is a serious acute disease. In this paper, a case of esophageal perforation by a fish-bone with severe mediastinitis and a cervical abscess is reported.For a 50-year-old male, the diagnosis was made 15 days after he had swallowed a fish-bone, because the symptoms were slight before severe chest pain began. Two esophageal perforations (19-21 cm and 24-31 cm from his initial tooth line) were confirmed by endoscopy. Moreover, mediastinitis and a huge cervical abscess were recognized perioperatively. Most of his esophagus was resected due to the two long perforations, and mediastinal drainage, cervical esophagostomy and gastrostomy were also performed. After the operation, the patient suffered from a severe pyothorax, but he fortunately recovered. 10 months later, an esophageal reconstraction by gastric tube was done. Since fish-bones sometimes cause esophageal perforations and severe complications are often seen, strict follow-up is needed for patients who accidentally swallow them.
著者
大石 康介 小泉 貴弘 諏訪 大八郎 井田 勝也 石原 康守 大貫 義則 鈴木 章男 中島 昭人 神谷 隆
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 = Journal of abdominal emergency medicine (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.525-528, 2007-03-31
参考文献数
13
被引用文献数
2

腹部緊急手術後の, 感染による腹壁欠損症例を2例経験した。症例1 : 26歳, 男性。交通事故による左側腹部広範囲挫滅創, 腹腔内臓器損傷に対し緊急手術を施行した。術後, 創周辺に感染, 壊死を起こし, 15&times;10cmの腹壁全層欠損が生じ, Bard Composix Mesh<sup>&reg;</sup> (以下, メッシュ) で欠損部を充填し, 腹壁を閉鎖した。創部感染の収束を待ち, 腹直筋皮弁を用いた腹壁再建術を行い得た。症例2 : 77歳, 男性。閉塞性大腸炎による大腸穿孔をきたし, 横行結腸部分切除, 人工肛門造設を行った。術後, 空腸皮膚瘻による人工肛門周囲の感染を併発し, 同部周囲に腹壁欠損を生じた。人工肛門閉鎖時, 欠損部は5&times;10cmとなり, メッシュで欠損部を覆った。感染収束後メッシュを除去, 閉創を行った。高度感染を伴う腹壁欠損の2症例において, メッシュを用いた二期的再建が有効であった。
著者
諏訪 大八郎
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.28, no.5, pp.743-746, 2008-07-31 (Released:2008-09-02)
参考文献数
11
被引用文献数
1

症例は74歳,女性。盲腸憩室炎の診断で当院外科へ入院。入院時の腹部CTで盲腸壁の浮腫,肥厚があり絶食,抗生剤の点滴で加療したが治療中に腹痛の増強あり,腹部CTの再検査で腸管壁の浮腫,肥厚の増悪を認めた。緊急手術も考慮したが高度の肥満,コントロール不良の糖尿病などが併存し,術後合併症の発生の可能性が高いこと,上行結腸まで浮腫が及んでおり腸管切除が広範囲に及ぶ可能性があること,膿瘍形成した時点での経皮的穿刺ドレナージも可能と考え抗生剤を変更し保存的治療にて経過を観察した。3日後の腹部CTで盲腸周囲膿瘍が明らかとなりただちにエコー下に穿刺ドレナージを行った。ドレナージチューブからの排膿は次第に減少した。1ヵ月後,大腸内視鏡検査を行い盲腸に憩室を認めたが炎症は消退していた。その後も炎症の再燃はなく糖尿病のコントロールを行いドレナージチューブを抜去,退院となった。