著者
山本 寛 Vo Nguyen Trung 貝田 佐知子 山口 剛 村田 聡 谷 眞至
出版者
日本外科代謝栄養学会
雑誌
外科と代謝・栄養 (ISSN:03895564)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.199-204, 2016 (Released:2017-01-17)
参考文献数
18

高度肥満症に対する減量手術は,2型糖尿病(T2DM)をはじめとするメタボリックシンドロームを改善する効果があり,肥満T2DMのみならず,非肥満糖尿病患者に対してもT2DMを手術で治す,いわゆるメタボリックサージェリーが注目されている.しかし,手術によりT2DMが改善するメカニズムは明らかにされていない.基礎的・臨床的検討から,手術により過剰分泌するインクレチンをはじめとする消化管ホルモンがT2DM改善のキープレーヤーであることが考えられている.特に,消化管の部位により分泌される消化管ホルモンが異なることが重要であると考えられる.【方法】今回われわれは,ラットの胃・十二指腸・空腸・回腸の異なる4カ所の消化管に栄養チューブを留置したモデルを作成した(各n=10).チューブ留置1週間後に,意識下ラットに栄養チューブより50%ブドウ糖をゆっくりと注入し,ブドウ糖負荷後0,10,30,60,120,180分に大腿静脈カテーテルから採血し,血糖・インスリン・GLP-1を測定した.インスリン感受性はMatsuda indexを用いて評価した.【成績】回腸からのブドウ糖注入では,他の部位に比較し,ブドウ糖負荷後の血糖は低値を示した.ブドウ糖負荷後の血中インスリン・GLP-1は,胃・回腸からの注入に比べ十二指腸・空腸からの注入で高値を示した.インスリン感受性は,十二指腸・空腸からの注入に比べ回腸からの注入で高値を示した.【結論】ブドウ糖負荷後の血糖・インスリン・GLP-1値は,ブドウ糖を注入する消化管の部位により異なった反応を示した.十二指腸・空腸をバイパスし,回腸に直接ブドウ糖を負荷することにより,インスリン感受性が高まり血糖上昇は抑えられた.
著者
清水 智治 三宅 亨 北村 直美 遠藤 善裕 谷 徹 谷 眞至
出版者
一般社団法人 日本エンドトキシン・自然免疫研究会
雑誌
エンドトキシン・自然免疫研究 (ISSN:24341177)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.1-6, 2020 (Released:2020-10-29)
参考文献数
4

Toraymyxin® (Toray Medical Co., Ltd, Tokyo, Japan) has been developed as a direct hemoperfusion column that contains polymyxin B-immobilized fiber to bind endotoxins in the patients’ blood. Toraymyxin was approved by the Japanese National Health Insurance system for the treatment of endotoxemia and septic shock in 1994. We reviewed and analyzed clinical history and evidence of Toraymyxin, and assessed the current status of Toraymyxin use for the treatment of severe sepsis and septic shock. Our review shows that Toraymyxin appeared to be effective in improving hemodynamics and respiratory function in septic shock requiring emergency abdominal surgery. The recent large-scale RCTs could not demonstrate whether prognosis is improved by Toraymyxin. The clinical studies based on large-scale data-base from Japan revealed that Toraymyxin appeared to have a survival benefit in patients with severe condition of septic shock. We also commented on the revised version of health insurance adaptation of Toraymyxin in April, 2020.
著者
坂井 幸子 久保田 良浩 加藤 久尚 森 毅 清水 智治 谷 眞至
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.978-984, 2018

<p>症例は在胎30週4日,812 gで出生した女児.日齢36に壊死性腸炎を発症,日齢44に消化管穿孔に対して開腹術を施行し,壊死小腸を切除して残存小腸は約50 cmとなった.術後11日目に母乳を再開し順調に増量できたが,日齢90頃より下痢便が出現,乳糖不耐症を疑いMA-1<sup>®</sup>へ変更し改善した.日齢123に血便,腹部膨満,CRP上昇を認め,消化管アレルギーを疑いエレメンタルフォーミュラ<sup>®</sup>へ変更したが改善せず,1週間絶食後に経腸栄養を再開したが腸管ガス貯留が持続し,腸内細菌異常増殖症(small intestinal bacterial overgrowth;SIBO)を疑いmetronidazoleの投与を開始した.数日後には腸管ガスの著明な減少を認め,経腸栄養再開後も症状の再燃は認めなかった.本症例では未熟性による腸管蠕動不良,壊死性腸炎,消化管アレルギーなどの要因が加わりSIBOを発症したと考えられた.</p>
著者
山上 裕機 谷 眞至 川井 学
出版者
和歌山県立医科大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2007

本研究は、網羅的DNA1次構造異常解析と網羅的遺伝子発現プロファイリングを統合することで、膵癌特異的遺伝子の同定を試みた。まず膵癌摘出標本における凍結サンプルを薄切した後、マイクロダイセクションにより膵癌細胞のみを回収した。そのDNAとRNAを抽出し、DNAはGeneChip Mapping Array10OKに、RNAはGeneChip Human plus U133arrayにかけ、網羅的遺伝子解析を行った。膵癌1次構造異常解析において、homozygous deletionを認めた領域はch3p24.1-p23, ch9p21.3, chgp22.3, ch9q22.32, ch17p12, ch18q21.1の6カ所であった。このうち2サンプル以上(10%)で認めたのは2カ所で、ch9p21.3が9サンプル(45%)とch18q21.1が5サンプル(25%)であった。この2領域の候補遺伝子は前者がCDKN2A(p16),CDKN2B(p15)およびMTAPで、後者はSMAD4であった。次に膵癌におけるLOH領域の同定を試みた。LOH領域のうち、最も頻度が高い領域はch17p13.3-p11.2で18サンプル(90%)、ch9p23-p22.3, ch18q22.1, ch18q22.3で17サンプル(85%)、ch9p21.3, ch18q12.3-q21.1で16サンプル(80%)であった。そのうちch17p13.3-p11.2の18サンプルのうち1サンプルで一部homozygous deletion領域を認め、ch9p21.3ではLOHの16サンプルに加え3サンプルにhomozygous deletionを認め、ch18q12.3-q21.1では16サンプルのうち5サンプルの一部にhomozygous deletion領域を認めた。3copy以上の増幅を認めた領域はch18q11.1-q11.2で9サンプル(45%)と最も頻度が高く、続いてch1q21.1-q23.1, ch1q23.3-q24.1, ch1q42.2-q44, ch7p, ch8q24.21, ch17q12-q21.32で5サンプル(25%)であった。Homozygous deletion領域における候補遺伝子群のRNA発現量の絶対値はいずれも200未満で、ほとんど発現を認めず、DNA1次構造とその発現に矛盾を認めなかった。Hemizygous deletion領域における候補遺伝子群のうち、CDKN2A, CDKN2B, SMAD4の遺伝子発現プロファイルを検討した。SMAD4における1copyサンプルの発現量は、2copyサンプルと0copyサンプルの平均発現量の間に認め、また最大発現量サンプルと最小発現量サンプルとの比は2.1であった。一方、CDKN2AとCDKN2Bにおける1copyサンプルの発現量には、サンプル間で大きなばらつきを認め、最大発現量と最小発現量の比はそれぞれ5.2と3.0であった。このことは、SMAD4の発現量はcopy数に大きく影響を受けるのに対し、CDKN2AとCDKN2Bの発現量はcopy数のみならず、メチル化などのeventに左右されていることが示唆きれた。