著者
小澤 悟 堀田 司 岩橋 誠 東口 崇 山上 裕機
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.68, no.12, pp.3126-3129, 2007-12-25 (Released:2008-08-08)
参考文献数
12
被引用文献数
1 1

症例は61歳, 女性. 下腹部痛, 発熱を主訴に当院を受診した. S状結腸憩室炎による腹腔内膿瘍の診断のもとに緊急開腹術を施行した. 手術開始15分後より, 突然血圧およびSO2が低下し, 全身に発赤を認めた. アナフィラキシーショックと診断し, 加療により1時間程度で全身状態は回復した. 術中使用した麻酔薬や抗生物質の薬剤アレルギーを疑い検査を施行したがいずれも陰性であった. 問診より患者は天然ゴム手袋による痒みを自覚したことがあった. また, ラテックスに対する特異抗体価が0.56UA/mlと上昇しており, 結果として術者手袋に含まれるラテックスが原因のアナフィラキシーショックであることが示唆された. 天然ゴム製品を排除して根治術を行ったところ, アナフィラキシーショックは起こらなかった. 詳細な問診によりラテックスアレルギーの既往やハイリスク患者を割り出し, ラテックス除去環境での手術を行う必要があると考えた.
著者
永井 祐吾 勝見 正治 田伏 克惇 田伏 洋治 青山 修 江川 博 野口 博志 小林 康人 森 一成 山上 裕機 中井 健裕
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.28, no.7, pp.1511-1518_1, 1986

当教室ではじめて開発した内視鏡的マイクロ波凝固療法を早期胃癌25例に行い,本法による局所的癌完全消滅の可能性について検討した. 14例は根治手術予定の症例であり,術前内視鏡検査時に病巣の部分または全域凝固を行い切除標本にてマイクロ波凝固の影響を検討した.部分凝固群7例においては,凝固部はulII~IVの潰瘍となり,潰瘍底にはviableな癌細胞は認められなかった.全域凝固群7例中,3例においては,摘出標本の連続切片のいずれの部位にも腫瘍細胞は認められず,本法による局所根治例と考えられた.残りの4例中2例は凝固後の潰瘍底のsm層に,あとの2例では辺縁粘膜に,いずれも微少な癌病巣が残存していた. 内視鏡的治療のみを行った11例のほとんどは高齢や重篤な併存疾患のために手術の適応外となった症例であった.生検にて悪性所見が消失するまでに1~6回の凝固療法を要し,2~50カ月(平均17カ月)の経過観察中2例にのみ再発を認めた.再発例にはさらに凝固を追加し,再び悪性所見は消失した. 以上より局所的癌完全消滅という点においては,本法はsmまでの浸潤胃癌にまで有効であり,現時点においては,手術不適応となった早期胃癌の治療法として期待できると考える.
著者
山上 裕機 谷 眞至 川井 学
出版者
和歌山県立医科大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2007 (Released:2007-04-01)

本研究は、網羅的DNA1次構造異常解析と網羅的遺伝子発現プロファイリングを統合することで、膵癌特異的遺伝子の同定を試みた。まず膵癌摘出標本における凍結サンプルを薄切した後、マイクロダイセクションにより膵癌細胞のみを回収した。そのDNAとRNAを抽出し、DNAはGeneChip Mapping Array10OKに、RNAはGeneChip Human plus U133arrayにかけ、網羅的遺伝子解析を行った。膵癌1次構造異常解析において、homozygous deletionを認めた領域はch3p24.1-p23, ch9p21.3, chgp22.3, ch9q22.32, ch17p12, ch18q21.1の6カ所であった。このうち2サンプル以上(10%)で認めたのは2カ所で、ch9p21.3が9サンプル(45%)とch18q21.1が5サンプル(25%)であった。この2領域の候補遺伝子は前者がCDKN2A(p16),CDKN2B(p15)およびMTAPで、後者はSMAD4であった。次に膵癌におけるLOH領域の同定を試みた。LOH領域のうち、最も頻度が高い領域はch17p13.3-p11.2で18サンプル(90%)、ch9p23-p22.3, ch18q22.1, ch18q22.3で17サンプル(85%)、ch9p21.3, ch18q12.3-q21.1で16サンプル(80%)であった。そのうちch17p13.3-p11.2の18サンプルのうち1サンプルで一部homozygous deletion領域を認め、ch9p21.3ではLOHの16サンプルに加え3サンプルにhomozygous deletionを認め、ch18q12.3-q21.1では16サンプルのうち5サンプルの一部にhomozygous deletion領域を認めた。3copy以上の増幅を認めた領域はch18q11.1-q11.2で9サンプル(45%)と最も頻度が高く、続いてch1q21.1-q23.1, ch1q23.3-q24.1, ch1q42.2-q44, ch7p, ch8q24.21, ch17q12-q21.32で5サンプル(25%)であった。Homozygous deletion領域における候補遺伝子群のRNA発現量の絶対値はいずれも200未満で、ほとんど発現を認めず、DNA1次構造とその発現に矛盾を認めなかった。Hemizygous deletion領域における候補遺伝子群のうち、CDKN2A, CDKN2B, SMAD4の遺伝子発現プロファイルを検討した。SMAD4における1copyサンプルの発現量は、2copyサンプルと0copyサンプルの平均発現量の間に認め、また最大発現量サンプルと最小発現量サンプルとの比は2.1であった。一方、CDKN2AとCDKN2Bにおける1copyサンプルの発現量には、サンプル間で大きなばらつきを認め、最大発現量と最小発現量の比はそれぞれ5.2と3.0であった。このことは、SMAD4の発現量はcopy数に大きく影響を受けるのに対し、CDKN2AとCDKN2Bの発現量はcopy数のみならず、メチル化などのeventに左右されていることが示唆きれた。