著者
谷口 明子
出版者
山梨大学
雑誌
教育実践学研究 : 山梨大学教育学部附属教育実践研究指導センター研究紀要 (ISSN:13454161)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.193-202, 2010

統計的にはいじめ発生件数が減少しているとはいえ、いじめが看過できない教育上の課題であることは変わらない。いじめ深刻化の背景にはいじめの潜在化があると言われるが、その要因のひとつに中学生のいじめ認識のゆがみがあるのではないかと考えられる。そこで、本研究においては、いじめが最も深刻である中学1、2年生を対象として、どのような行為を「いじめ」と認識しているのか、またそうした認識はいじめ経験の有無と関連があるのかどうかを質問紙調査によって検討した。結果として、衝動的暴力や遊び型のいじめ行為に対しては、それが「いじめである」という認識が低く、さらにそうした遊び型いじめに関しては、被害経験のある生徒でさえ「いじめではない」との認識があることが明らかになった。中学校におけるいじめ防止を考える際に、こうしたいじめへの認識のずれに焦点をあてた対応が望まれる。
著者
谷口 明子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.427-438, 2005-09-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
42

本研究の目的は, ひとつの病院内学級における教育実践を詳細に検討することから, 入院児に対してどのような教育的援助が提供されているのかを明らかにし, 教育実践の特徴カテゴリーを抽出することである。先行研究の少ない分野において有効とされる質的研究法を採用し, 参与観察エピソード及び半構造化面接逐語録をグラウンデッド・セオリー法に則って分析した。分析は概念化からカテゴリー生成, さらに現場教師からのコメントや更なるデータ収集を経て最終的な教育の特徴モデルの生成まで5段階で行われた。結果として, 病院内学級における教育実践が, 通常の教育の枠を超えて, 〈特別支援教育/ 普通校/小規模校/保育/家庭/医療/ソーシャルワーク〉という多様な援助実践の特徴を併せ持っていることが見出された。本研究は, ひとつの病院内学級におけるデータに基づく仮説生成型探索的研究ではあるが, 提示された特徴モデルにより, 従来, 他の特別支援教育と比較してとらえどころがないとされていた病院内学級における教育実践の特徴を捉える新たな視点を提供することができた。
著者
藤田 道郎 大内 詠子 越智 直子 張替 康隆 保田 大治 谷口 明子 長谷川 大輔
出版者
日本獣医がん学会
雑誌
日本獣医がん学会雑誌 (ISSN:18843344)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.13-19, 2012-12-19 (Released:2012-12-19)
参考文献数
6

犬の四肢軟部組織肉腫14症例に対して術後低分割放射線治療を行い、治療成績や放射線障害について回顧的研究を行った。再発率は7.1%、放射線障害は85.7%で何らかの障害が認められたが、現在まで重篤な障害は認められず、再発に対する影響もなかった。一、二および三年生存率はそれぞれ100、92.9および66.7%あった。また一、二および三年腫瘍コントロール率はそれぞれ85.7、71.4、57.1%であった。以上のことから、犬の四肢の軟部組織肉腫に対する術後低分割放射線治療は従来の根治目的の放射線治療スケジュールと比較して治療効果に大きな差はなく、麻酔のリスクや動物への負担、オーナーへの負担を軽減する上で有用な照射方法の1つと考えられた。
著者
谷口 明子
出版者
日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.283-291, 2004-11-30
被引用文献数
2

入院児への学校教育導入の推進に伴い、入院児の心理理解の必要性が高まっている。本研究の目的は、病弱教育における子ども理解の一環として、入院児の不安の構造と類型を明らかにすることである。入院という状況下の不安を測定する42項目から成る質問紙を作成し、小学校4年生から高校3年生までの157名の入院児を対象に調査を施行した。その結果、入院児の不安が「将来への不安」「孤独感」「治療恐怖」「入院生活不適応感」「とり残される焦り」の5つの下位構造を有し、さらに入院児が3つの不安の類型に分かれることが明らかになった。性差、入院回数、入院期間、罹病期間、発達段階の子どもの属性と不安の構造との関連を検討した結果、女子のほうがより強い「不安」と「孤独感」をもち、発達段階が高いほうが「将来への不安」「入院生活不適応感」をより多く抱いていることが示され、指導にあたって留意すべき点も示唆された。