著者
貴治 康夫 沓掛 俊夫 中野 聰志 西村 貞浩 澤田 一彦 杉井 完治 多賀 優 竹本 健一 天白 俊馬
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.114, no.2, pp.53-69, 2008-02-15 (Released:2009-02-21)
参考文献数
67
被引用文献数
13 7

東西6 km・南北7 km規模の比叡花崗岩体は,琵琶湖周辺の白亜紀末山陽帯花崗岩体のうちで,最も西寄りに位置する.これまで琵琶湖コールドロン形成に関係した琵琶湖南部環状花崗岩体の西端部の岩体と考えられてきた.比叡花崗岩体は,中心相と考えられる中粒斑状黒雲母花崗岩とそれを取り囲むように分布している中粒等粒状黒雲母花崗岩からなる.両者は漸移関係にあり,活動時期は100 Ma頃と推定される.比叡花崗岩は,年代値,岩相,化学的性質において琵琶湖南部の他の花崗岩類とは異なるので,およそ70 Maの琵琶湖コールドロン形成に直接関与した環状岩体を構成するものとしては考えられない.本岩体中には,岩体西縁部で南北方向に貫入している花崗斑岩脈と花崗閃緑斑岩脈のほかに,優白質微花崗岩,流紋岩,玄武岩,ランプロファイアの小岩脈が岩体全体に点在している.そのうちの花崗斑岩と花崗閃緑斑岩の岩脈は,琵琶湖コールドロンの外縁を画する環状岩脈の一部であると考えられる.
著者
楠 利夫 貴治 康夫 三上 禎次 村田 守
出版者
地学団体研究会
雑誌
地球科學 (ISSN:03666611)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.49-61, 2011-03-25
被引用文献数
2 1

大阪府北部,北摂山地の川久保渓谷中流に分布する緑色岩類について,産状,化学組成,年代および地帯境界の再検討を行い次のような結果を得た.ペルム紀新世の超丹波帯高槻層の下位で断層で接し,かつてトリアス紀中・新世本山寺コンプレックスに属するとされた緑色岩類は,その産状から高槻層基底部でペルム紀新世に噴出した現地性のものである.また,この緑色岩とその直下の丹波帯皿型地層群本山寺コンプレックスに含まれるペルム紀中世後期〜新世のチャートに伴う緑色岩の地球化学組成の特徴は,両者とも島弧(火山弧)で形成された玄武岩に類似し,年代と地球科学的判別図による形成場に共通性がある.一方,この両者は海山や海嶺を起源とする丹波帯I型・II型地層群の緑色岩とは,地球化学的判別図による形成場おいて異なっている.これらの結果と調査地域の断層岩と岩相の特徴から,超丹波帯と丹波帯の地帯境界および高槻層を再定義した.