著者
中島 正夫 内山 哲史 足立 淳 内迫 博幸
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.74, no.4, pp.994-997, 2013 (Released:2013-10-25)
参考文献数
14
被引用文献数
2

症例は49歳,女性.直腸癌,多発肝肺転移に対して原発巣切除D3リンパ節郭清術施行後FOLFOXレジメンによる化学療法を開始した.治療効果としてはRESIST評価上PRであったが,19クール施行後に血小板減少により化学療法が継続不能となった.原因検索として各種検査施行し,オキサリプラチン関連脾腫による血小板減少と診断した.肝転移巣が切除可能となったこと,肺転移巣は制御されていること,以降も継続した化学療法が必要であることを考慮し,肝部分切除術,肝ラジオ波焼灼術,脾臓摘出術を施行した.術後血小板数は速やかに上昇を得て,化学療法を再開・継続することができた.オキサリプラチンは肝の類洞内皮細胞障害・閉塞を引き起こし門脈圧亢進,脾腫をきたす.血小板減少が化学療法継続の律速段階となる場合は,原因として脾腫を鑑別に挙げることが重要である.脾摘によって速やかに血小板数は増加し,化学療法を再開・継続できたことから有用な選択肢の一つとなり得ると考えた.
著者
足立 淳
出版者
日本教育方法学会
雑誌
教育方法学研究 (ISSN:03859746)
巻号頁・発行日
vol.35, pp.105-115, 2010-03-31 (Released:2017-04-22)

本研究は,成城小学校における教育方法改革の史的再検討の一環として,同校におけるドルトン・プラン受容をめぐる対立の構造を明らかにすることを目的とする。これまで一般的に,成城小においてドルトン・プランは,同校でそれまで独自に実践されていた自学法と高い親和性をもつ教育法として受容されたと理解されてきた。しかしながら,近年,新たな知見が提出されており,成城小の自学とドルトン・プランとが,同校の人びとが理解したように必ずしも一致するものではなかったことが示唆されている。このことを念頭において成城小におけるドルトン・プラン受容に貢献した主要な人物たちの言説を検討してゆくと,実際には,彼らのなかにドルトン・プランに対する異なる見解が存在したことに気づく。そこで本研究は,まず,沢柳政太郎の自学論の内実を検討し,成城小における自学の背景についてみた。次に,奥野庄太郎と赤井米吉の言説を対比的に分析することで,彼らのドルトン・プランに対する見解が異なるものであったことを論じた。そして,両者の見解の相違が,単なるドルトン・プランの解釈上の違いにとどまるものではなく,教育の目的観の対立構造に根ざすものであったことを明らかにした。
著者
阿部 雄一 足立 淳 朝長 毅
出版者
日本プロテオーム学会
雑誌
日本プロテオーム学会誌 (ISSN:24322776)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.39-49, 2021 (Released:2022-01-08)
参考文献数
32

多数のリン酸化修飾酵素(キナーゼ)は,癌組織で異常な活性化を示しており,分子標的としての研究が進んできた.キナーゼ阻害剤による癌治療を最適化するため,リン酸化プロテオミクスによる癌組織のリン酸化シグナル状態の計測への応用が進んでいる.癌組織では,阻血の影響や癌組織切除後,検体を回収するまでのタイムラグが癌リン酸化シグナル状態の正確な理解の妨げとなるため,我々は,回収後20秒以内の急速凍結が可能である内視鏡生検に着目した.内視鏡検体は2 mm立方程度と微小であり,従来のリン酸化プロテオミクスの手法ではこれまでと同等のリン酸化修飾の同定数を得ることが困難なため,より高感度なプロトコルを開発した.その結果,胃癌内視鏡生検から10,000部位以上のClass 1リン酸化修飾が同定され,癌組織と正常粘膜との比較から,DNA損傷シグナルの癌特異的な活性化などの違いが明らかとなった.今後,様々な疾患におけるキナーゼ活性モニタリングへの応用が期待される.
著者
橋本 宏二郎 足立 淳二 菅沼 惇一 奥埜 博之 河島 則天
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2015, 2016

【はじめに,目的】脳卒中患者では,片側性の運動麻痺による麻痺側の支持性低下などによって,左右非対称な立位姿勢をとるケースが臨床上多くみられる。また,感覚障害を伴う場合には,立位姿勢を維持する上での残存機能が十分であるにも関わらず,患側からの感覚フィードバックを有効に活用できないことが一因となり,健側への過度な依存を示すケースが散見される。本研究では,脳卒中片麻痺患者の立位姿勢時の左右非対称性を改善するための1手段として,重心動揺リアルタイムフィードバック装置を用いて左右方向の重心動揺量を操作的に減弱させ,患側への荷重配分を促す介入的アプローチを行い,その有効性を検証したので報告する。【方法】対象は当院でリハビリテーションを実施している脳卒中片麻痺患者9名(左麻痺3名,右麻痺6名)であった。全症例,手放しで立位保持が可能であり,軽度の感覚障害を呈していた。立位時における患側への荷重配分を促し,立位姿勢の安定性を高めることを目的として,重心動揺リアルタイムフィードバック装置(BASYS,テック技販社製)を用いた介入を実施した。対象者は装置上で足部位置を左右対称に規定した立位姿勢をとり,左右方向の重心移動を行うよう指示を与えた。この時,足圧中心(Center of Pressure:COP)の左右方向の変位に応じて,COPと同方向(in-phase)に床面を動作させることで動揺量を減弱させるフィードバック操作を与えた。設定を段階的にCOP動揺量の約5%,10%,15%と増加させることで左右方向の動揺量の拡大と,健患側への均等な荷重配分を企図した調整的介入を行った。介入効果の評価として,30秒間の静止立位および随意的な左右動揺時のCOP計測をサンプリング周波数1000Hzにて実施した。評価項目は,COPの95%楕円信頼面積,総軌跡長,COP動揺の前後左右の平均位値,及び最大範囲とした。介入前後の平均値の差の検定には対応のあるt検定を用い,有意水準は5%とした。【結果】in-phase条件(5%,10%,15%)での介入により,介入前後の静止立位時においてCOP左右方向の平均位置が有意に変化した(p<0.05)。全症例の内訳を見ると,9名中7名(うち3名は介入前より麻痺側への荷重優位)においてCOPの患側方向へのシフトを認めた。また,統計的有意差はないも95%楕円信頼面積で9名中5名,総軌跡長で6名が減少を示した。随意的な左右動揺時の左右最大値では介入前後で6名が麻痺側へのCOP増大を示した。【結論】脳卒中片麻痺患者では,片側性の運動感覚麻痺の影響から左右非対称の立位姿勢を呈し,本来的な左右対称的な姿勢調節を行うことに困難を伴うことが想定される。本研究で実施した重心動揺リアルタイムフィードバックは,本人の明確な意図を伴うことなく左右方向の重心移動量を拡大し,残存機能を活用した患側への荷重配分を実現しようとするもので,より適切な立位姿勢戦略を実現する上での調整的介入の手段となる可能性が示唆された。