著者
津島 昌弘 浜井 浩一 津富 宏 辰野 文理 新 恵里 上田 光明 我藤 諭 古川原 明子 平山 真理
出版者
龍谷大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2015-04-01

EUの女性に対する暴力被害調査を踏襲した本調査は、近畿圏在住の女性を対象に、2016年に実施された。重大な発見は、日本では、加害者が非パートナーの場合、一定程度の女性が被害を警察に通報しているが、加害者がパートナーの場合、警察に通報した女性は皆無であった(EUでは加害者がパートナーと非パートナーとでほとんど差がない)ことである。これは、日本では、DVや親密圏で起こった暴力は表面化しにくいことを示唆している。家族や地域が弱体化するなか、親密圏で起きた当事者間の紛争解決において、公的機関の介入が不可避となっている。近隣の人が異変を見つけたなら、警察や支援団体に相談することが重要である。
著者
浜井 浩一 辰野 文理
出版者
龍谷大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

近時、日本では、凶悪犯罪の増加など治安の悪化が大きな社会問題として取り上げられている。マスコミには、凶悪犯罪が起こるたびに、凶悪犯罪が多発しているといった枕詞に続いて、認知件数や検挙率といった警察統計が頻繁に登場するようになった。多くの国民にとって治安の悪化は疑問の余地のないもののようにとらえられている。しかし、認知件数は、あくまでも警察に事件が届けられ、警察が犯罪として認知したものを計上したもので、警察の対応によって大きく数字が変化するなど、犯罪発生をそのまま反映したものではない。本研究プロジェクトは、こうした警察統計の持つ問題点を克服し、正確な犯罪動向を測定するため、日本版犯罪被害調査を開発することを目的としている。具体的には、日本だけでなく英米などの警察統計等を詳細に分析し、その犯罪指標としての特徴、限界等を明らかにすると共に、英米での犯罪被害調査の実情及び成果について調査研究を実施した。この部分の成果については、2006年1,月に『犯罪統計入門(日本評論社)』として刊行した。そして、その成果を踏まえつつ、2006年度からは、日本の犯罪事情を正確にとらえることのできる犯罪被害調査の開発に取りかかった。また、本研究では、新たに調査票(質問紙)を作るだけでなく、調査の実査方法についても検討した。調査対象者を二つのグループに分け、一つのグループについては、従来から日本の世論調査等でよく用いられている訪問面接方式によって調査を実施し、もう一つのグループについては訪問留置き方式によって調査を実施した。これは、近時、個人情報に対する国民の意識の高まり等によって、世論調査・社会調査の実施環境が著しく悪化し、調査の回答率が低下したことに加えて、調査実施に対する苦情も増大しつつある現実を踏まえてのものである。さらに、回収率の低下が調査の信頼性にどのような影響を与えるのかを検討するため、無回答者に対して、質問項目を絞った簡易質問紙を郵便で送付する追跡(二次)調査を実施し、その結果を訪問調査の結果と比較した。今後は、この成果を踏まえ、個人情報保護下における犯罪被害調査のあり方について検討する。