著者
津島 昌弘 浜井 浩一 津富 宏 辰野 文理 新 恵里 上田 光明 我藤 諭 古川原 明子 平山 真理
出版者
龍谷大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2015-04-01

EUの女性に対する暴力被害調査を踏襲した本調査は、近畿圏在住の女性を対象に、2016年に実施された。重大な発見は、日本では、加害者が非パートナーの場合、一定程度の女性が被害を警察に通報しているが、加害者がパートナーの場合、警察に通報した女性は皆無であった(EUでは加害者がパートナーと非パートナーとでほとんど差がない)ことである。これは、日本では、DVや親密圏で起こった暴力は表面化しにくいことを示唆している。家族や地域が弱体化するなか、親密圏で起きた当事者間の紛争解決において、公的機関の介入が不可避となっている。近隣の人が異変を見つけたなら、警察や支援団体に相談することが重要である。
著者
新 恵里
出版者
京都産業大学
雑誌
京都産業大学論集. 社会科学系列 (ISSN:02879719)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.187-206, 2009-03

本稿は、犯罪被害者遺族が、事件直後に直面する司法解剖や手続きにおける制度上の問題について、被害者支援の視点からとりあげ、あるべき制度について検討するものである。 司法解剖は、殺人や傷害致死などの死亡事件において、必ず被害者遺族が直面する、司法手続きの一つである。これまで、遺族や法医学者などの指摘があるものの、ケアの必要性や方法について、具体的に議論、検討されることはほとんどなかった。しかしながら、司法解剖は、被害者遺族が未だ事件を受け止められない事件直後に直面し、解剖の終わった遺体と対面する遺族もいるなど、非常に衝撃が大きく、その時の心理的苦痛や精神的ダメージは、長年にわたって続くことが多い。 本稿では、わが国の被害者遺族へのインタビューによる調査および文献、アメリカ、オーストラリア等諸外国の政策状況の調査から、①わが国の法医鑑定制度の整備が、被害者側にとっても期待されること、②遺族が司法解剖に関する一連のプロレスに関わることの重要性、③司法解剖に際して、捜査官、法医学者と遺族を結ぶコーディネーターの存在が必要であること、④解剖後のグリーフケアの必要性について論じた。
著者
新 恵里
出版者
京都産業大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本研究の二年目として、本年度は、法医学の分野において、被害者への支援、特に遺族ケアを行っている諸外国の取り組みについて文献の収集、調査、検討を行った。司法解剖における遺族ケアについては、グリーフ・カウンセリングが主流であり、医療機関での遺族対応の問題も含めて文献、資料収集を行った。また、下記の諸外国において、文献の収集およびインタビューによる調査を行った。1)外傷体験を持ちやすい専門職(警察、消防、検視官など)へのメンタルケアと同時に、遺族ケアも行っているアメリカ合衆国の行政機関からインタビューを行った。2)「犯罪被害者庁」をもち、捜査段階で国選弁護人を被害者につけ、また司法解剖においては遺族に説明義務を持たせているスウェーデンでの取り組みについて調査を行った。3)検死および検死法廷(Coroner's Court)の制度が整っているオーストラリアビクトリア州において、検死事務所所属のカウンセラー、検死法廷での民間支援機関であるCourt Networkの責任者およびスタッフ、ボランティア、長期的な支援を行っている民間支援機関Compassionate Friendsのスタッフからインタビューによる調査を行った。これらの研究結果は、第43日本犯罪学会で報告を行ったほか、第7回国際法医学シンポジウムにおいても、報告を行う予定である。また、日本における犯罪被害者支援政策は、犯罪被害者等基本法において整備されつつあるが、過渡期にある現在、これら研究成果をもとに、今後も本研究を発展的に継続する予定である。