著者
辻 由希
出版者
日本選挙学会
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.90-102, 2013

日本における女性の過少代表性はつとに指摘されてきたが,近年,国会・地方議員に加えて首長にも女性が進出している。そこで本稿では,女性首長の増加の要因を明らかにするため,戦後全女性首長の経歴調査と現役女性市長の事例分析を行う。女性首長の経歴調査からは,女性を周辺化してきた労働市場構造を反映し,二つのキャリアパス(公務員・資格職と,地方議員)を経た女性たちが首長となっていることが明らかになった。とくに市町村では地方議員出身の女性首長が多い。また現役女性市長の事例からは,当選の背景に旧来の地方政治行政への批判があったこと,当選後はケアサービスの供給拡大と財政健全化という今日の地方政府が共通に直面する課題への対応がみられることが分かった。以上から本稿は日本における政治経済レジームの再編,すなわちケアの社会化と地方分権とが女性首長の登場を促していると主張する。
著者
辻 由希
出版者
日本選挙学会
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.90-102, 2013 (Released:2017-12-06)
参考文献数
33

日本における女性の過少代表性はつとに指摘されてきたが,近年,国会・地方議員に加えて首長にも女性が進出している。そこで本稿では,女性首長の増加の要因を明らかにするため,戦後全女性首長の経歴調査と現役女性市長の事例分析を行う。女性首長の経歴調査からは,女性を周辺化してきた労働市場構造を反映し,二つのキャリアパス(公務員・資格職と,地方議員)を経た女性たちが首長となっていることが明らかになった。とくに市町村では地方議員出身の女性首長が多い。また現役女性市長の事例からは,当選の背景に旧来の地方政治行政への批判があったこと,当選後はケアサービスの供給拡大と財政健全化という今日の地方政府が共通に直面する課題への対応がみられることが分かった。以上から本稿は日本における政治経済レジームの再編,すなわちケアの社会化と地方分権とが女性首長の登場を促していると主張する。
著者
辻 由希
出版者
京都大学法学会
雑誌
法学論叢 (ISSN:03872866)
巻号頁・発行日
vol.176, no.5, pp.348-379, 2015-03
著者
武田 宏子 田村 哲樹 辻 由希 大倉 沙江 西山 真司 STEEL GILL
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2020-04-01

本研究計画の主要な研究課題は、1990 年代以降に「男女共同参画」と「女性活躍」の政治が行われてきたにもかかわらず、なぜ日本ではいまだに高い程度のジェンダー不平等が観察されるのか明らかにし、それによりリベラル・フェミニズムが孕む問題を理論的に検討する一方で、日本においてジェンダー平等を実現するための政治過程を構想することを目指す。
著者
辻 由希
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

本研究の目的は、1990年代以降の日本の政治経済改革の文脈の中で政治課題となったケアや家族関連の政策形成過程における議論と、その文脈において注目を浴びた女性の代表/表象実践を、ジェンダーの視点から分析することである。2010年度は、児童虐待防止法の制定および改正過程、ドメスティック・バイオレンス防止法の制定および改正過程、および教育基本法の改正過程に関する資料を収集した。本研究では、これらの資料を言説政治という観点から分析することを通じて、政策過程における対立軸を明らかにし、その中で政治アクターによって提示された家族像を析出することを試みた。本研究の結果、1990年代以降の日本政治の展開に関して以下のような特徴がみられることが分かった。第一に、1990年代以降の日本政治の主要争点の一つとして、ジェンダー平等が存在する。90年代以降の日本では、男女の性別役割分業の改革や「男らしさ」「女らしさ」といったジェンダー規範の変容が政治的課題となり、それらの争点をめぐる政治的対立、すなわち「ジェンダー政治」が展開されてきた。第二に、ケアや家族にかかわる政策過程の横断的分析の結果、いくつかの異なる「家族」像が提示されていることが明らかになった。本研究ではそれを、家族責任の軽減・拡大と性別役割分業の維持・改革という二つの軸に沿って四つに分類し、日本のジェンダー政治における対立軸を明らかにした。第三に、以上のような政治的対立の中で、女性の政治的代表の代表/表象戦略は変容をみせている。女性の衆議院選挙候補者は、1990年代後半には男女共同参画社会の実現という政治課題と結び付けて女性の政治社会参加の必要性を強調する戦略をとることが多かったが、2000年代に入り、「子ども」や少子化対策に重点を置くことが増えてきている。